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さなコン3に応募した


第3回日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト、通称さなコン3に先月応募した。pixivで開催している書き出し文固定のコンテストである。
今回の指定書き出し文はこちら。

「チャンスは残り三回です」どこか楽しげに声は告げた。


応募自作まとめ

一作目について

・可愛い人外を書きたい、出来ればロボ×少女が書きたい…という願望
・5000字以上書くのが目標

というわけで書いたのがこちら

【書き出し文の処理】
デスゲーム含む闇のゲーム的の途中を予感させる文章であり、おそらく多くの人がそれを初期に思いつくだろう。皆が思いつくからこそ乗っかってみるという逆の逆を行ってみた。よくありそうな闇のゲーム案を採用した上で残り全部趣味に走れば趣味の方が強調されてくれるんじゃないか、という打算もあった。

闇のゲームという比較的陳腐なアイディアを更にバカバカしくするため&一回失敗ごとに代償があった方が映えるという理由で脱衣ゲームにしてみた。
(初期案ではアキネイターモチーフの人物当てクイズゲームだったかな)
百着服を着ていて百回負けたら全裸になり、百一回目に完敗。チャンスが残り三回になった物語開始時点では上下の下着姿になっている。…って状況、キリが良くない?
残り三回中最初二回は負けるのは分かりきっているし、一発で勝負がつくジャンケンと脱衣ゲームお馴染みの麻雀の二つが思いついたから採用。麻雀の方はルールも知らないからAIに全任せして任せたこと自体をギャグにしてみた(つもりではある)

【その他】
ロボ×少女が趣味だし、丁寧語のキャラ指定があったらそれを喜んでロボにしたいし、AIのどこかずれた感覚を書くの楽しいし、丁寧語キャラの一人称書くの好きだし、上位存在の敵が負けてみっともなく狼狽えるのも趣味だし、愛すべき莫迦がハッピーエンド迎えてほしさもあるし、ロボの内部機構晒して恥ずかしがらせたいし、立場が反転する締めも好きだし、エロ展開に見せかけて完膚なきまでにただのラブコメに落っことしたのも爽快だし、本文にもタイトルにも記号入れて莫迦っぽくしたかった。

ちなみにタイトルの本来「……」のところを中黒五つにするのは新井素子の作品から。
(『・・・・・絶句』で敵の上位存在の『異質なもの』が青い猫の姿になって『いーさん』って親しげに呼ばれて『なんなんですかあなたたちは!』ってぶち切れてるシーンが最高に好き)
他、中黒五つを伏せ字とみなして「脱衣ゲーム」を入れてもいいし、101回目の〜で連想される『101回目のプロポーズ』そのままに「プロポーズ」を当てはめても良い。

【反省点】
予想では闇のゲーム展開が多数応募されてその中でギャグ路線にして目立つつもりだったんだけどストレートな闇のゲーム作品あんまり無いね?
むしろ捻った闇のゲームの方が多いのでこの戦略は失敗かも。
内容についてはストーリーは好きなんだけどMr.ランプの一人称にしたせいで矛盾や誤魔化しがでかいのと、技量があればもっと書き込めたかなーと思うところがあるのがちょっと残念。

二作目について

・意識分散のため複数作出したい
・一作目で使わなかったさなコン記念表紙をやっぱり使っときたい
・趣味以外で挑むとどうなるか実験したい

…という理由で書いた二作目。
本命は一作目の方なのでそれよりは文字数も内容もコンパクトにしようと思った。

【書き出し文の処理】
というわけで別に三回こなさなくても納得してもらえるくらいにチャンスのウエイトを軽くしてみた。
チャンス三回はSNSの投稿回数制限。
毎日毎日三回が皆に付与されてリセットされるのなら軽いチャンスだし、全三回でも「残り三回」って言っても良いし、一回分しか書かなくてもいい。
「チャンスは残り三回です」はソシャゲの無料ガチャとか期間限定セールみたいな、ユーザーの意欲を向上させるためのただの煽り文句に過ぎない。

【その他】
ネタは文系の自分がほへーと思った科学ニュースが発想元。
一作目が一人称「わたくし」の丁寧語だったからそれに対抗するために一人称「漏れ」のネット語バリバリにしたところもある。
流行は繰り返すというのと、盆栽演歌は老人の趣味じゃなくて今のお年寄りが若い時に流行ったからという話を総合すると、50年後の老人語がネット語である可能性がワンチャンあるよね。
五十年後ががっつり現代と地続きの、解決したことも変わらないこともある、楽しげな近未来であってほしいという願望もある。

【反省点】
飯テロ描写が上手ければもっと良かったかもな。
あと投稿制限三回が何故なのかがあるともっと良いという感想を頂いたからそこを反映させとけば良かった…。
「仏の顔は三度まで」「放っとけ」の連想からSNS名「ほっとけぇき」になってるから炎上対策で三回の投稿制限になったとかいうイメージがたぶん当初の脳内にあったので。

三作目について

応募期間が残り三日になったところで公式の人が「短い作品も待ってます」というアナウンスがあったので三作目行こうと思った。チャンス三回にあやかりたかったし

【書き出し文の処理】
「チャンス」を別の意味にした。昔「チャンリンシャン」というキャッチフレーズのシャンプーCMがあったからそれに乗っかってシャンプー。

【その他】
短い文でチャンス残り三回も終わらせ楽しそうである理由も全部説明しきった、やったね!
ただの残量告知!
それだけで終わったという起承転結も何もない文章。ま、まあ100字少しのツイノベサイズに出来たからそれだけで良いや。
なお他の人の投稿に100字以下があるので最短ではない。

まとめ

一作目…みんなが思いつく闇のゲームネタを突き詰めて自分の好きな方向に捻じ曲げよう♡
二作目…チャンスの存在を小さくして別に作中で全部使わなくても成り立つようにした。
三作目…チャンスをただの名称にした。

一作目が趣味大爆発の本命なので一次通ってくれたら、もしくは一次惜しかったで賞でコメント付いて欲しいな〜と思う。
もし二作目だけが一次通ったら複雑な情緒になりそう! 評価してもらった数は二作目が一番高いし客観的には二作目の方が出来良い気がする…。
三作目が通ったらチャンスの商品化が望まれてるんだなって思うことにする。
(7/17追記、一作目と二作目が一次通過したよ。わーい!)

さなコン3というコンテストについて

pixivという会場について

pixiv、イラストや二次創作作品も投稿できるサイトというのが他の小説投稿サイトとは一線を企しているよな〜と思っている。
SFというジャンルはイラストと親和性があるし、共通書き出し文からスタートする、というコンテストの縛りはある種二次創作的な趣もあって、pixivに合うコンテストだと思う。

さなコン投稿数の減少について

さなコン3の投稿数はさなコン2より減ったようだ。
まあ世間一般を見るとさなコン1の時はコロナ禍の大幅自粛期間だったから投稿数が多かったのだろうし、2の時もゴールデンウィークは外出控えてただろうけど今回はそこまでじゃないからかな。

それと、コロナ禍で公募の応募が増えまくった→公募自体も増えたんだと思っている。
さなコン3と募集期間が被っててバッティングしそうなコンテストが結構あった。

・カクヨムのデスゲームコンテスト(さなコン3で思ったほどデスゲームものが来なかった理由はこれがあったからか?)
・カクヨムの読書タイムコンテスト(さなコン3と締め切り日が同じ、昨年は募集テーマが探偵or秘密の恋で被らなかったが今回は異世界転移or溺愛だったので若干被るような?)
・noteの創作大賞(今回が第二回で、前回は年末年始に開催していた)
・pixivの1000字ボトルメールコンテスト(時間内に投稿すればコメントが貰えるってメリットがさなコンより強いかも…)
他、今年初めて見るショートショートの公募情報なども見かけた。
体感だが他のコンテスト(つまりさなコンのライバル)は去年より多くなっているのかも。

書き出し文について

個人的にはさなコン2よりさなコン3の方が書きやすかったのだが、苦手に感じた人もいるようだ。
枠組みがはっきりしているからな。
漫画を描こうと思ったら、
登場人物っぽいぼんやりしてるけどニヤニヤしてるのは分かるキャラクターの下書きと、その下書きが喋ってる吹き出しと「チャンスは残り三回です」と固定のセリフは印字してあって、三コマ分の枠が先に描いてあるようなものだ。
(逆にいうと漫画の構成に使いやすいのでさなコン漫画版の方を既に見据えての書き出し文なのかも?)

さなコン2の『そうして人類は永遠の眠りについた。』という書き出し(or書き終わり)文は難しくもあるのだが、人類滅亡オチやポストアポカリプスものだと当てはめやすい。
一旦完成した既存作や温めていたアイディアを元々持っている人がさなコン2用には転用しやすかったが、さなコン3の書き出し文では転用がしづらく、新しく最初から設定を構築する必要があった……というのはあるかも。

一次発表の予想

さなコン2→応募総数885作、一次通過は235作品で全体の26%、

さなコン→応募総数1076作、一次通過は295作品で全体の27%

ということを考えると682作が応募された今回も例年通り25〜28%程度だとすると、170〜190作品が一次通過するのかな?と予想している。
世の公募は一次通るのが一割程度だったりするので、比較的優しい。
でも他のコンテストに比べてカテゴリーエラーっぽい作品が少なく他の人が普通にうまいので、どうなるか分からないな〜。

ライバルである他の人の応募作を読み過ぎるのも落ち込むので、最近はさなコン主宰でもある「日本SF作家クラブ」編集の「AIとSF」を読んでいる。
AIをテーマにしたアンソロジーで、さなコンの審査員でもある作家が何人も参加している。これを読んで、もしかしたらこの作品を書いた作家さんにさなコン応募作を読まれるかも…?と妄想するのも楽しい。

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