源氏物語とフラワーエッセンス〜葵の上
姫君たちに渡すエッセンスを考えることについて
源氏物語に登場する姫君たちにもしフラワーエッセンスを渡すとしたら・・について当初書き始めた時は、とにかく楽しく気が済むまで書こうと思っていたのですが、登場するメインの姫君たちについて全員書いていこうという心境に変化してきました。
その理由の1つに、”源氏のまわりに現れてくる女性たちが、すべて作者、紫式部の分身である”という『源氏物語と日本人』の中での河合隼雄先生の分析・見解があります。
わたし自身、姫君たちに渡すフラワーエッセンスを考えることは、それぞれの姫君を鏡に自分を、自分の心を見つめていた部分があったように思います。
わたしは物語を紡ぐ代わりに、引き続き紫式部が彼女自身の分身として描いていった姫君たちに渡したいフラワーエッセンスを選んでいくことで、その姫君たちに重ねた自分の分身に向き合いたいと思います。
今回は、光源氏の最初の正妻である葵の上に渡すエッセンスについて考えてみます。
葵の上はどんな女性?
葵の上がどのような姫君だったのかについての詳しい説明は以下リンクの外部サイトを頼らせていただきます。
葵の上が16歳だった時、当時12歳だった元服したての光源氏と結婚します。ゆくゆくは東宮(将来の帝)に入内をと左大臣家の深窓の姫君として育てられた気位の高い葵の上は、自分が年上という引け目も相まって、自分より若く美しい光源氏に心を開くことができず、一方の光源氏も、政治的理由で葵の上と結婚させられただけで、心は藤壺の宮にある。
そんな素直になれない姫君と、継母への叶わぬ恋ゆえの自身の心の穴を埋めることしか考えられない幼稚な光源氏の関係はなかなか上手くいきません。
それでも葵の上が光源氏の子供を産み、やっと心が通い始めたその矢先に、六条御息所という光源氏の恋人の1人の『物の怪』の仕業により、葵の上は亡くなってしまいます。
もう少し葵の上が素直になれていたら、もう少し光源氏に葵の上のツンとした態度の下にある、可愛い女心を見抜けるだけの度量があれば・・・
まぁそうなっていたら物語は続かなかったのでしょうがないのですが、切ないところです。
葵の上に手渡したいフラワーエッセンス
そんな彼女に手渡したいフラワーエッセンスは「ミムラス、ビーチ、ウォーターヴァイオレット」です。
ミムラス
そもそも紫式部が書いた源氏物語には、葵の上についても詳しく彼女の心情が描かれてはおらず、いかようにも解釈の余地があり、葵の上は最後まで光源氏を嫌っていたという解釈さえ存在するようですが、わたしは葵の上は光源氏のことを本当はとても愛していた、そして愛し合いたいと切に願っていたと思っています。
その中で、「あなたのことがとても好き、だから本当は別の女性のところに行かずに、本当はずっとわたしと一緒にいてほしい、わたしだけを見ていて欲しい」という素直な想いを光源氏に伝えられなかったのは、結局「傷つくのが怖い」という彼女の繊細な乙女心という理由に集約されると思うのです。
『ミムラス』はそんな彼女の『傷つく恐れ』にそっと寄り添ってくれるのではないかと思い選びました。
このエッセンスについてバッチ博士は以下のように述べています。
葵の上であれば、最愛の男性との関係の間で自分の繊細な心が傷つく恐怖でしょう。そして気位の高い彼女は、そんな自分の恐怖を自分でも認められず、周りに自分にかしずくたくさんの人がいながらも、誰にも話すこともできず、まさに黙って密かに耐えていたのだと思います。
出産に際しての、それこそ生死に関わる恐怖、自分の体調が優れないことの不安、そういったことさえ彼女は誰にも話せず1人で耐えていたのではないかと思います。
『ミムラス』は何かに怯えている人が勇気を出して恐怖から解放され、人生を楽しみながら、他人に対して愛や思いやりを持つことができるようになるのを助けてくれエッセンスです。
素直な想いを表現することで傷つくことに怯えている葵の上が、その恐れを乗り越え、光源氏の深い寂しさにも心を寄せることができるようになり、心通う夫婦関係を築く人生を楽しむ。
葵の上は息子(後の夕霧)を出産してこの世を去るまでの束の間、この境地に近づいていたのではとわたしは感じていますし、束の間でもそんな瞬間があって良かったと、思いたいです。
ウォーターヴァイオレット
気位が高い、プライドが高いといったキーワードからまず最初に頭に思い浮かぶのは、このウォーターヴァイオレットのエッセンスです。 バッチ博士は、このエッセンスを「孤独さ」のレメディとして分類しています。まさにウォーターヴァイオレットのネガティブに偏った状態はあからさまにプライドが高く、人を寄せ付けず自分は他の人とは違うと周りを冷ややかな目で見ており、存在自体に温かみがない。まさに光源氏が葵の上に感じていた感覚そのもののように思います。
美しい水の中でしか生息できない、というのも気高い彼女のイメージにぴったりです。
でも彼女が幸せに生きるには、その持ち前の美しさや気高さ、その自立心を持ちながらも、自分を覆っているガラスケースを打ち破って他者との関わりの中で、自分の役割を果たしていくことが必要でした。
ウォーターバイオレットは、彼女にそんなガラスケースを打ち破り、光源氏の胸に飛び込む勇気を与えてくれたかもしれません。
Healing Herbs のテキストのウォーターヴァイオレットの説明の一文を最後に引用させていただきます。
ビーチ
ビーチのエッセンスのネガティヴなキーワードについては不寛容、批判的などを思い浮かべますし、本来のバランスのとれた姿のキーワードとしては高い美意識、寛容といった言葉を思い浮かべます。
かなり高い身分の姫君として生まれた葵の上は幼い頃から将来の春宮妃として立ち振る舞いなども厳しく育てられたのではないかと思います。
いつも完璧な『高貴な姫』としての立ち振る舞いを求められて、本人もそうしてきた。
でもその完璧さはビーチの木があまり深く根を張らないよう、表面的なものです。
自分のそんな表面的な完璧な姫君としての振る舞いの深い下にある、光源氏を想うガラスのような繊細な気持ちに対して彼女自身が誰よりも批判的になっていたのではないでしょうか。
そんな自分の『完璧ではない弱さ』を深く受け入れ許す。そしてだからこそ、同じようにどんなに美しく身分が高くとも、心に弱さを抱えた光源氏のことも受け入れ許していくことをビーチのエッセンスはサポートしてくれたのではないでしょうか。
最後に
彼女が生きて光源氏を見つめた最後の描写がとても印象的です。
葵の上はいつもとはちがって、思いのこもったお目をじっとそそいでお見送りしながら、うち臥していらっしゃいます。
無事出産を終え、光源氏に労られながら少し話した後、彼が出かけるのを見送る葵の上の様子です。
彼女はこのひととき、人生で最も深い安堵感に満ちた幸福の中にいたのではないかと思います。
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