渋紙のこ

小説を中心に書評、料理エッセイなどを発信します。

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マガジン

  • 連作短編小説「奇特な病院」

    ニッチで風変りな、もしかしたらどこかにあるかもしれない病院の話です。

  • 「空想シリーズ」

    本にまつわるこんなだったらいいなを空想しながら、小説にしました。

  • 短編小説「なんなんちゃっちゃお」

    4話完結の短編小説です。

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中編SF小説「WEDX2号」

あらすじ かつて目玉商品であったロボットが、古くなり、働き口を奪われ、今は野菜売り場で接客ロボットとして働いている。 開発者である点検さんだけは、野菜売り場で働くことになっても大切にしてくれる。 点検さんとの関係を深めながら、さまざまな出来事に変化を求められるロボット。 そして、ある事件が起こる。中編SF小説。 本文(中編SF小説。完結してます)  あたし、昔、最新型のロボットだったの。自動運転の車に搭載されている人工知能、家電を動かす人工知能、医療機器を動かす人工知能

    • 「奇特な病院」平和を求める科

      ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第33外来:平和を求める科(担当医 村上亮)  世界の平和、家庭の平和、多くの人が平和であれと願っている。  では、実際どうなのか。  願うだけではそうそう現実はうまくいかないようだ。  平和には、小さな平和と大きな平和があることに、この科を担当して気づいた。  小さな平和とは、自分の家庭や自分の周りの人との生活の中にある。  誰かの機嫌が直ったとか、周りの誰かに優しくされたとか、自分の手の届く範囲だけの平和を重視しているのが、

      • 「奇特な病院」こんな目にばかり科

        ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第32外来:こんな目にばかり科(担当医 宮城達郎) 「不幸の言い訳をする気はないと、強がりを言ってきましたが、次々に降りかかる不幸に、ふと前を向くのがつらくなったのです。つらいと思わないようにしてきたんですよ。こんな目にばかりと思ってしまったら、やりきれないから。頑張っても、頑張っても、報われない苦労の中で生きていく希望を見つけられなくて。ひどく自分が、惨めであると。気づいたんです。すべては優しさから始まったと。祖母の介護、さら

        • 「奇特な病院」本音が言えない科

          ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第31外来:本音が言えない科(担当医 松山きい) 「ほんとは、ずっとトマトが嫌いだった」  と、もし長年、夕飯にトマトを出し続けていて、死ぬ間際に、大切な人にそう言われたらと思うと、ぞっとしてしまう。 「なんで今まで言わなかったの?」  という、とてつもない疑問を残したままにその人は、息絶える。 「なんで言ってくれなかったの?」  そう言われたことはないだろうか。  なぜずっと本音は言えなかったのだろうか。 「好きなものはき

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        中編SF小説「WEDX2号」

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        • 連作短編小説「奇特な病院」
          33本
        • 「空想シリーズ」
          4本
        • 短編小説「なんなんちゃっちゃお」
          4本

        記事

          「奇特な病院」あったまる科

          ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第30外来:あったまる科(担当医 星沢新平)  ちょっとした僕の思い込みだけど、あたたかみを演出するために、少し太めの女性の看護師さんを意識的に採用させていただいている。  偏見だと言われようとも。  なんとなくいつでもぎゅっと抱きしめてくれそうな人とこの科で働きたかった。 「今日も大きいおにぎり食べた?」  と患者さんに僕が指示しなくても、自主的に話しかけてくれている。僕だけでは、手が回らないから、とても助かっている。そんな看

          「奇特な病院」あったまる科

          「奇特な病院」わがまま言っちゃっていい科

          ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第29外来:わがまま言っちゃっていい科(担当医 平家定一郎) 「あれが欲しい」  そう言えない人がいる。  何かを欲しがるわがままを言うことをためらう人がいる。  その一方で、 「今まで欲しいものはすべて手に入れてきた」  という人がいる。  人生というのは、不公平なものなのかとも思う。  なぜ欲しいものを欲しいと言うことができないのか。  遠慮か?恥だと思うのか?  俺は、この科を担当するようになって感じていたことがある。 「

          「奇特な病院」わがまま言っちゃっていい科

          「奇特な病院」褒めたい科

          ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第28外来:褒めたい科(担当医 富士薫子)  私は、あなたをただ褒めたい。 「身体を壊しながらも、働いて、家では食事の用意をして、家族は当然という顔をして、食べるんです」  そんなひとは、一人や二人じゃない。褒めたい科をやっていると、本当に苦労している人に出会う。  褒める言葉は、案外選ぶのに苦労する。 「頑張ってますね」  だと上から目線に聞こえたり、 「よくやってますよ」  だと、偉そうに聞こえたり。  シチュエーションを考

          「奇特な病院」褒めたい科

          「奇特な病院」暇科

          ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第27外来:暇科(担当医 日野誠)  暇と名乗っているから、暇科は、暇だと思われがちだ。  しかし、多くの人の期待を裏切って忙しい。  いかに暇を持て余し、その時間をどう過ごしたらいいかわからないという人が多いことに驚く。  院長に、 「暇で困っているひとたちがいるから、暇科を作りましょう」  と提案されたとき、俺は、正直、暇になるだろうと思っていた。  ちょうど書きたい論文もあったし、自分のペースで仕事と論文が同時にできるなら

          「奇特な病院」暇科

          気まぐれ無料公開のお知らせ

           今日は、ちょっといいことがあったので、有料にしておりました 「WEDX2号」を気まぐれに無料公開しております。 大体読むのに早い方で1時間半ぐらいかと思われます。 ご興味のある方はこの機会に是非最後までお読みいただければ幸いです。 なお、「王様とまっすぐのぐぅ」「あおくなり」につきましては、 今のところ無料は予定しておりません。 また気まぐれに「WEDX2号」も有料にするかもしれません。 ご了承ください。 よろしくお願いします。

          気まぐれ無料公開のお知らせ

          「奇特な病院」わざと科

          ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第26外来:わざと科(担当医 浜口清)  わざと伝えなければならなかったことを伝えなかった。わざとそうしなかった、あるいは、わざとそうした。  わざと何かをする人は、頭の良いとされる人が多いような気がする。  学歴の高い人の方が、先に何かを思いつき、わざと自分の損得に任せて何かを行うということが多いように私には見える。  僕は、この科を受け持っていて、心がどうもすっきりしない。なぜか。うんざりするからだ。人を陥れようとする人があ

          「奇特な病院」わざと科

          「奇特な病院」ぐっとこらえる科

          ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第25外来:ぐっとこらえる科(担当医 野口めい) 「なんでそんなこともできないの」 「いつも同じことをなぜ繰り返すの」  そんな風に責められても、反撃を口にすることもなく、ぐっとこらえる。  言いたいことを全部相手に伝えられている人は、どのくらいいるのだろう。  生きている以上、どこかでぐっとこらえながら、生きてるものなんじゃないかと私は思うの。  だから、患者さんの口に出せない苦しみを少しでも軽くなるように、私は耳を傾ける。

          「奇特な病院」ぐっとこらえる科

          「奇特な病院」話が通じるっていいな科

          ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第24外来:話が通じるっていいな科(担当医 猫田智彦。補佐あり)  どうもこちらの話が通じてないと感じるひとは、多いらしい。  老人ばかりに囲まれて、石原裕次郎の話ばかりされても、いまいちピンとこないだろう。  石原裕次郎が生きていた時代に、俺は生まれてない。  生まれていない時代の話をされて、困惑している人の助けになることがこの科の役割だ。  この科の俺の仕事は、話の通じる人をつなぐ仲介役になること。  若くたって、石原裕次郎

          「奇特な病院」話が通じるっていいな科

          「奇特な病院」人の顔色を読んでしまう科

          ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第23外来:人の顔色を読んでしまう科(担当医 額田久美)  私は、母親の顔色を見ながら、生きてきた。 「あのおもちゃを買って欲しい」  と言って、母の顔色が変わり、眉間にしわを寄せられると、私はすぐに、 「ほんとは、欲しくなかった」  と下を向く。  その代わりに母親が、 「これ欲しかったでしょ」  と他のおもちゃを渡される。  私は、特に欲しいおもちゃじゃないのに、 「こっちが欲しかった」  と嬉しいふりをしてきた。  その方

          「奇特な病院」人の顔色を読んでしまう科

          作品の創作裏話。

          ゆるく投稿した作品の裏話をお送ります。 まず「なんなんちゃっちゃお」。 これは昼寝してたら、頭の中で物語が初めから結末まで 夢の中でできちゃって書いた物語です。 「奇特な病院」。 構想は、もう何年も前からあったのだけれども、 他の作品が書きたくて、なかなか手をつけられなかった作品。 noteを始めてみて、超短編をと思ったときに思い出し、 フォーマットが決まって、一つの流れがあって、 毎日一編を書いていく方法と合ってると思ったので、 やっと着手した。 「WEDX2号」。

          作品の創作裏話。

          「奇特な病院」他人のせいにしたい科

          ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第22外来:他人のせいにしたい科(担当医 新山伸介)  うまくいかない人生の理由を。  失敗した理由を。  失恋した理由を。  今、つまずいた理由を。  胃もたれする理由を。  全部、自分ではなく、他人のせいにしたい!  あぁ、それでいいさ。  それで気持ちがすっとするのならば。  でも、ずっとそのまま他人のせいにして生きていくと、いらいらは、避けられないかもしれませんとお伝えする。  それでも、お金のない理由を他人のせいだと続

          「奇特な病院」他人のせいにしたい科

          「奇特な病院」ここから突き進む科

          ※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第21外来:ここから突き進む科(担当医 仲井摩耶)  この科の仕事は、実にシンプルだ。  患者さんの応援隊。  私の頭には、常に「必勝」のはちまきとお祭りの法被。もちろん看護師さんたちにも協力を求めて、看護師さんたちのはちまきには「GO!GO!GO!」の文字。それと法被。  ここの科だけちょっと他の科とは、雰囲気が違っている。  だって患者さんたちの相談も気合も他の科とは違っている。  とにかく突き進むことをテーマにやってくるの

          「奇特な病院」ここから突き進む科