渋紙のこ
ニッチで風変りな、もしかしたらどこかにあるかもしれない病院の話です。
書評です。
中編小説をまとめました。
本にまつわるこんなだったらいいなを空想しながら、小説にしました。
4話完結の短編小説です。
あらすじ 地震が多発し、津波、火災、戦争、窃盗など社会不安が増す中、人々はそのつらい現実から逃げるように、生活すべてでデザインが重視される社会になっていた近未来。突如、彗星のように頭脳集団「N」が現れ、次々に予言を的中させ、社会に熱狂的に受け入れられる。そんな中、主人公の祖母が、津波で命を落とす。主人公は、自分を見失い、恋人である「あなた」も主人公の元から姿を消す。「あなた」から主人公の大好きなフクロウのクリスタルの置物が送られてきて以来、一切の連絡が取れなくなる。それか
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第8外来:どこまでが私事科(患者 楠田民代) 「どこまでがわたくしごと科と言います。他人のことと自分のことの区別がつけにくい人をターゲットに、私が考えた科です。どうか少しでも、他人事を抱え込みそうになった。自分のことをすべて知られるのが嫌だなどの悩みをお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非、ご予約を。」(担当医 工藤なみ)と書かれた広告を目にした。 私には関係ないかと一瞬、思ったけども、他人事を抱え込みそうになったという一文に
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第7外来:すぐ慌てる科(患者 木部京子) ああ、今日も鍵をちゃんと閉めたか心配になってきたわ。 家を出るときに、慌てて出たから。 慌てることがわかってるなら、早く起きればいいと思うでしょ? ふふふ、そこは慌て慣れているから、変えようとはしないものよ。 そうね、自分が至らないのに、威張るなよと思うでしょうね。 慌てる人が、慌てないために努力するとどうなるのか。 なぜかもうとても心配になるものなの。 だから、すぐ慌て
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第6外来:沈黙科(患者 加藤啓二) 俺は、先生に会うなり言った。 「しゃべります」 「どうぞ」 「俺、普段は無口なんです」 「はぁ」 これからせっかくしゃべろうとしてるのに、先生そりゃないぜ。 「俺は、しゃべっても無駄だと思うことが多いんです」 「そうですか」 つれない返事だぜ。先生よ。 「誰かの話をひたすらに聞いている時間が長かったんです」 「そうなんですね」 そりゃそうだ。ほんの5分前に会ったこの先生に、俺がしゃべる
「ロックで独立する方法」忌野清志郎著 忌野清志郎の印象は、自転車が見つかった人ぐらいのものだった。音楽は、好きな方だと思う。好きなアーティストがカバーしたりして、積極的には好きでもないけど、嫌いじゃないぐらいだった。この本も大ファンだから購入したというより、古本屋で、ふと目にして、買った。古本にしては、400円で高いかなと思った。でも、よくよく値段を見ると、普通に買っても、630円(税抜)だから、内容が濃いのかなと思った。 読み始めて、めちゃくちゃおもしろかった。どんな
書評「文庫版 地獄の楽しみ方」 京極夏彦著 本好きな人なら、名前は知ってるであろう京極夏彦。私の認識では、なんか文庫本のコーナーに、ずでーんと幅を取っている小説家。ひたすらに分厚い本を書いている人という認識だった。なんとなくイメージで、怖い話を書いている人なのかなと。あくまでもイメージです。だけど、YouTubeのインタビューを目にする機会があって、見てみると、なんかおもしろそうな人だなと思った。つまり、興味を持った。それで、分厚い物語には、挑戦する余裕も時間もないが、な
書評「ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件」楠木建著 この本をどこで見つけたのかは、忘れてしまったのだけど、ehonで注文して、1冊だけでも高いのに、数を間違って、2冊買ってしまったことが強く印象に残っている。余程読んでみたかったのだろう。 と書いたが、思い出したが、前の日の夜に高いけど、買っちゃおと注文して、次の日にもやっぱり欲しくて、注文したことを忘れて、また注文して、2冊になったのだった。 なぜ買ったかは覚えている。小説に「ぴょんぽん堂」という架空の企業
今まで生きてきて、気づかなかったけれども。私は、もやもやしている状態が、とても苦手なのだと思う。 「白黒はっきり」 というのも違う。と、思いたいけど。 わからないことをしっかり知りたいと思う。 「あの人の行動にはどういう原因があるのだろう」 「どうしてあんなことをあの人は言うのだろう」 だから、私が興味を持つひとは、常識的なことを言うより、ちょっと変なひとだ。 なんか変わってるって思われていそうな人の方に興味がある。 「結局性格悪いだけだな」 と相手に思うこともあ
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第5外来:非推し活科(患者 大野美咲) 推し活って言われても、ピンとこなかった。 アイドルに今までハマったことなどない。 そもそも私は、他人に興味がないのかもしれない。それが問題だ。 「大野さんは、誰が好きなんですか?」 職場で誰かのことは推しているだろうと当然のことのように聞かれる。 適当に、嘘をつけばいいのかもしれない。 流行っているとテレビで取り上げられている人の名を言えばいいのかもしれない。 でも、私はそう
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第4外来:失敗したくない科(患者 江川七海) 俺は、名前から失敗してると思ってる。 七海。 女性と間違われるじゃないか。 女性か男性かなんて俺にはどうでもいい問題だ。 だけど、どうでもいい問題を「男です」といちいち繰り返さなくてはいけない。 その面倒くささの伝わらなさが。 相手にとって名前と性別なんて大して気にならないのかもしれない。 俺は、相手の真意を取り間違える。つまり失敗だ。 そして必ず、 「男ですけど」
本文(後編) 「秋次、怖い。早く来て」 「トメさんどうした?今どこだ?」 「怖い。あのお客さんが外で待ち伏せているの」 「すぐ行く」 俺は、自転車に乗って、一目散にトメさんの家に向かった。 俺は、途中で死んだ。 高齢者が運転する車の信号無視で、自転車もろとも吹っ飛んで俺の命は尽きた。 こんなにあっさり人って死ぬんだな。 人生って何があるかわかんないよな。 急いでいたけど、俺は、ちゃんと信号を守っていたよ。 あっという間の出来事に俺の魂は、こ
あらすじ トメさんと秋次は、居酒屋のバイト先で出会う。トメさんは大きな鼻のあざをとても気にしている。秋次は、それを全く気にしない。秋次は、人の気持ちを深読みもしない。気にしないどころか、トメさんの鼻のあざを笑い飛ばす。その後、秋次は、ある姿になり、それでもトメさんを見守り続ける。卑屈なトメさんを見守り続ける秋次の運命とは。他人にとって自分のコンプレックスとは、どう捉えられているのか。痛快ファンタジー。 本文(前編) トメさんには、生まれたときから、鼻に大きなあざがあっ
なぜ本屋は廃れないといいのか。 私はなぜ本屋がつぶれないといいと思うのか。 それは、好きな本を安くたくさん手に入れたいからである。 知識欲とかそんな簡単なことではない。 本を読み終えた達成感だけでもなく。 なぜ本がこんなに好きなのだろう。 きっとてんこ盛りの理由がある。 最近本を探していて思うのは、読みたいなと思う本が高い。 ああ、この本読みたいなと思うと、3,000円を超えているものもある。 それに、部屋にはそんなにスペースはない。お金もない。 そ
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第3外来:踏ん張りたいとき科(患者 鵜飼喜朗) 「がんばれ」 最近、言われてないことに気づいた。 何気なく、開いた新聞で、この奇特な病院の「踏ん張りたいとき科」が取り上げられていて、俺にその言葉が響いた。仕事を辞めて、転職することにして、これから頑張るぞってときに、子供も生まれることになって、さらに頑張るぞって思った。 だけど、転職先では、仕事に慣れるのに苦労している。相談しようにも、妻も初めて子供を授かって、自分のことで
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。 第2外来:いらいら科(患者 石川ひろみ) ああ、もうなんでこの科こんなに混んでるのよ。 私のいらいらを治しに来てるのに、さらにいらつかせてどうしようっていうの。 それとも、私に忍耐力がないということをわからせるためにやってるの? ほら、他の患者さんたちもいらいらしてて、あの席に座ってる人なんか4回も自分の順番は、いつ来るんだと看護師さんに言いに行ってるように見えるわ。 あの人は、私より前からいたのだから、私はまだまだっ
あらすじ お尻の大きさで優劣が判断されるチョイスマスターの世界で、アチは現在見習いの身である。チョイスマスターは、死んだ人間を天国の「松」「竹」「梅」へと仕分ける専門職である。チョイスマスターは、人間界を卒業し、三年間、チョイスマスター界での空気に慣れるために魂のまま天国と人間界のはざまで浮遊して過ごし、その後、蟻に似たフォルムの肉体を与えられる。完全なチョイスマスターになると、花以外を食べることを禁止されるなどそこには独特なルールがある。様々な人間を観察し、アチは、天国