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「奇特な病院2」失敗したくない科

※連作短編小説ですが、1話でも完結します。

第4外来:失敗したくない科(患者 江川七海)

 俺は、名前から失敗してると思ってる。
 七海。
 女性と間違われるじゃないか。
 女性か男性かなんて俺にはどうでもいい問題だ。
 だけど、どうでもいい問題を「男です」といちいち繰り返さなくてはいけない。
 その面倒くささの伝わらなさが。
 相手にとって名前と性別なんて大して気にならないのかもしれない。
 俺は、相手の真意を取り間違える。つまり失敗だ。
 そして必ず、
「男ですけど」
 と怒りが含まれてしまい、さらに失敗する。
 第一印象が、良くないらしい。
 この時代、何に時間を割くのかは重要な問題だ。
 すぐに仲良くなれないと、なかなか関係も良くならない。
 名前をつけたのは、親の失敗だ。俺の責任ではない。
 俺は、いつも間違える。降りる駅さえ、ぼーっとしていて、間違えたことがある。自分では、この失敗人生から抜け出したい。
 失敗だと感じる人生から抜け出したいんだ。
「ああ、また失敗だ」
 というのが、口癖の俺に親が言った。
「失敗したくない科っていうのがあるらしいのよ」
 俺は、そのときは、
「ふ~ん」
 と答えたと思う。
 だけど、仕事で、報連相がうまくいかずに、失敗して、気づいたら、失敗したくない科の予約を取っていた。
 しばらく待たされた後に、診察室に通されると、女性の先生が、こちらを向き、
「どうぞ」
 と席に座るようにうながされた。
「男性ですよね?」
 俺は、少し先生が美人でラッキーだと思ったが、すぐに来たことを後悔した。
「話をとことん聞きます。人生、エラー&トライです」
 俺は、さらに来たことを後悔した。
 俺は、親の言うことを真に受けて、おずおずとここに来たこと自体が失敗だったんだ。自分で解決していかないとな。俺は、人の言うことを気にしすぎるんだ。それに気づけただけ良かったのかもな。
 最後に、先生は言った。

「お大事に」

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