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[読書感想文] 国産RPGクロニクル

狙ったわけではないが、自分のお気に入りボードゲーム(ではないと思うけどジャンルがわからない)「さんぽ神」を作ったドロッセルマイヤーズの中の人が書いた本だった。

というかこの「渡辺範明」さん、元はスクエニという普通にゲーム畑の人で、そっちで10年、ボードゲームに移動して10年というデジタル・アナログ派のゲームプロだった。
そんな人による、JRPG二大巨頭であるドラクエ、FFの功績に関する検証本。

自分はそれぞれの3くらいから入ったし、シリーズはほぼすべて遊んできているので功績と言われてもピンと来ないが、まあ、この2つがなかったゲーム業界は想像できないから、改めてそれらがどうすごかったのかを説明してくれて非常におもしろく読めた。というか、そういう説明の本を見かけてしまったら買う以外ないよね…

ゲーム遊んだんだから何でも知ってるぜ!と思いきや、ゲームの中身以外の話もたっぷり載っている。

例えばFF13が実は「ファブラノヴァクリスタリス」という超巨大プロジェクトの一つであり、アギトXIIIはFF零式に、ヴェルサスXIIIがFF15になったというのは初めて知った。ファブラノヴァクリスタリスという謎単語は聞き覚えがあるといえばあるが… ってか零式は遊んだことないし、FF13はクリアしたはずだけど、13-2とかはもうやったかどうかも定かじゃないな…

シリーズはほぼすべて遊んできていると言ったな。あれを言い直させてもらおう。「ナンバリングシリーズはほぼすべて遊んできている」でした。

・構成

流れとしてはもちろんドラクエとFFの1から入り、DQ11とFF15まで一つずつしっかりと検証していってくれる。

そんなことよりFF15が2016、DQ11が2017リリースというのに鳥肌が立った。あれ、ホラー小説かな?

2023年6月30日発行ということでFF16に関しては触りの説明くらいだけだった。しかし、初期の頃は毎年リリースされていたのに、今ではFF15から16まで8年… 時間がかかり過ぎというのはあるが、それよりもかかる金額がもうなんか別次元だよなー。ゲームの値段は大して変わってないし、何かがおかしいような気もする。

・DQ1〜11、FF1〜15

まず、ドラクエ1というゲームを受け入れさせるためにRPGプレイヤーを育てるという、土壌を育てるアクションが非常に面白かった。
今ではRPGと書いて読めない人はいないが、ファミコン時代は日本では特にロールプレイングゲームなんて知名度がほぼなかったため、RPG(ロールプレイングゲーム)と毎回書く必要があったレベルとのこと。

ポートピア連続殺人事件が、ドラクエを作るための布石だったことや、その頃の重要開発陣たちがどうやって選ばれてきたかという話が語られ非常に興味深い。

そして、ジャンプで特集をしてRPGの遊び方を一つずつ説明していくことで遊ぶ下地を作り、発売を待つという丁寧極まりないキャンペーンを行ったらしい。「主人公はキミ自身だ!」みたいな。確かにマリオはマリオであってプレイヤー自身ではないから、ゲームの中に自分を投影するという新しい考え方を浸透させる必要があったということかー。

この、伝説の始まりパートがさすがに一番おもしろかったな。

そしてスーファミ時代に入ると一気に増えるRPG。RPGは基本的にシステムは同じで、ストーリーが異なるだけだから、ある意味作りやすい、という説明があったが、そう言われれば確かに。だからRPGツクールというのもあったわけだし(本の中でも言及されていた)。
だが今の時代ではさすがにもうただのRPGだと懐かしさ以外の訴求力がないという切ないジャンルになってしまった。

他にも、今はもう普通だが確かに当時は衝撃的だったスクエニ誕生についてももちろん触れられている。
というか、まさにスクウェアとエニックスの合併タイミングである2002/11にエニックス社員だった著者、当時の生々しいエピソードを語ってくれる。

当時エニックスの社長だった本田圭司さんが前に立ち、こういったのです。「エニックスは、株式会社スクウェアと合併します」それを聞いた僕ら社員からは、「ドッ」という笑い声が起きました。

p170

笑ったあとにシーンとなって「え…マジで?」ってなるやつだったんだろうな。いやー、こういう高解像度エピソード、大好物です。

・まさゆきの地図

ドラクエ9の章で、自分もお世話になった「まさゆきの地図」について2ページかけて説明しており、とても良い。
ドラクエ9のストーリーは全く覚えていないが、メタルキングを狩りまくった記憶は確かにある。それ以外にも、ヨドバシかどっかにDSを持っていって地図をひたすらにすれ違いしまくった記憶もある。やっぱりあれはかなりの重要な歴史だったよなー。ストーリーは覚えてないけど。

このドラクエ9のストーリーのシンプルさに関しても検証しており、そのためにもDQ9を1から遊びなおしたらしい。偉いなー。

というか、ファルシのルシがコクーンでパージでストーリーがわけわからないFF13と、携帯機でナンバリングを出したDQ9が同じ年に出たって、今思うとすごいな… 合併していなかったらともかく、合併してこれだもんな。それぞれ突き抜けすぎだ。

検証が終わったあとには、ジャンプ元編集長である鳥嶋さんとの対談が50pくらいもあり、今でも全然通用する考え方ばかりでタメになる。

「プレイヤーとキャラクターが連動する」という奇跡をちゃんと考えてゲームを作ってほしいな。それがゲームの面白さのそもそもだよね。

p320

・まとめ

ゲームが好きであればドラクエなりFFのどれかは遊んだことがあるだろうし、検証も想像やトンデモなものはなく、面白く読めると思うのでオススメ。

・おまけ:注釈がいい本は名著

文章下の注釈が地味に面白い。普通の注釈なら二行目は書かれなさそうなものが多い。

MOTHER
1989年発売、糸井重里が企画・シナリオ・プロデュースすべてを手がけたRPG。
ドラクエに感動した糸井が任天堂に企画書を持ち込んだことから開発が始まった。

p88

他にも植松伸夫の説明で実はグラブル声優をしてたとか、ドラクエ初代Pの千田さんが吉田戦車の親類だとか。

伝説のオウガバトルで単にシミュレーションRPGとせず、「民衆の支持度を表す「カオスフレーム」の維持がキモ。都市解放用のクリーンな部隊と汚れ役の部隊を分けるのがコツ。」という濃い説明があったり。

映画のファイナルファンタジーは大コケしはしたが、日本の3DCGクリエイター育成に多大な貢献をしたとか。

FF13で神話をベースにしたストーリーというところでHADESが話題に出て、しかもちゃんと「神々の好感度を上げていく恋愛ゲーム的な側面あり」、という追加説明まで。

マカロニほうれん荘が3DOでゲーム化されたことは知らなかったわ…

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