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仕事と作業

仕事は作業の積み重ねではありません。仕事には意義と理解と価値観の進歩が必要であり、それを与えず作業を仕事だと与えるのは尊重していないのです。作業とは材料と手順が与えられてそれを完成させることです。作業を材料も手順も与えずに完成させようとするのは研究であり作業ではありません。

仕事は単なる作業の積み重ねではありません。
仕事には以下の要素が必要不可欠です。

  • 意義: なぜその仕事をするのか、何のためにその仕事が存在するのかという目的意識

  • 理解: 仕事の内容や目的を深く理解し、自分の役割を認識すること

  • 価値観の進歩: 仕事を通じて自己成長し、価値観を向上させること

これらの要素が欠如したまま、単なる作業を「仕事」として与えることは、働く人を尊重していないと言えます。

作業 とは、あらかじめ定められた材料と手順に従って、特定の成果物を完成させることです。一方、研究 とは、明確な材料や手順が与えられていない状況で、新しい知識や技術を生み出すための活動です。

仕事には、作業的な側面と研究的な側面の両方が含まれることがあります。しかし、どちらの側面においても、意義、理解、価値観の進歩といった要素が重要であることを忘れてはなりません。

働く人がこれらの要素を感じながら仕事に取り組めるように、企業や組織は、仕事の内容や目的を明確に伝え、働く人の成長を支援する環境を整える必要があります。

これから先は物語です。

X社は、創業社長の息子であるY氏が縁故採用で入社して以来、急成長を遂げました。Y氏は持ち前の商才を発揮し、他社を次々と吸収合併し、顧客数を増やしていきました。

しかし、その一方で、合併された企業の社員たちは、X社のやり方に馴染めず、次々と退社していきました。

Y氏は、自分のやり方が正しいと信じて疑わず、新規採用された社員を育てることにも関心を示しませんでした。結果として、X社はY氏の一人舞台となり、他の社員は彼の指示に従うだけの存在になっていきました。

そんな中、X社は業界大手のZ社に吸収合併されることになりました。Z社は、X社の顧客基盤とY氏の能力に目をつけ、合併を提案したのでした。Y氏は、Z社でのさらなる飛躍を夢見て、合併に同意しました。

しかし、Z社でのY氏の立場は、X社でのそれとは大きく異なっていました。Z社には、Y氏よりも優秀な人材が数多く存在し、Y氏のやり方は通用しなかったのです。Y氏は次第に孤立し、Z社での居場所を失っていきました。

そして、ついにY氏はZ社から解雇されたのです。X社での成功体験に縛られ、仕事と作業の違いを理解できなかったY氏は、Z社という新たな環境に適応できず、その能力を発揮することができなかったのです。

一方、X社に残った社員たちは、Z社での新たなスタートを切りました。Z社は、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出すための研修制度や評価制度を導入し、社員が成長できる環境を整えました。

X社の社員たちは、Z社での経験を通して、仕事とは何か、働くとはどういうことかを改めて考えさせられました。そして、Y氏のような縁故採用ではなく、実力主義で評価されるZ社での働き方にやりがいを感じ、新たなキャリアを築いていきました。

しかし、X社にも別の問題も抱えていたのです。X社には、メインバンクであるA銀行から出向してきたW氏がいました。W氏は、温厚な性格で誰とでも分け隔てなく接し、社内でもすぐに人気者となったのです。A銀行での10年以上の経験で培った幅広い人脈を活かし、X社の営業部に新しい風を吹き込みました。

W氏は、毎日のように新規顧客とのアポイントメントを取り付け、接待やゴルフを通じて良好な関係を築いていきました。その結果、X社の取引先は飛躍的に増加し、売上高も右肩上がりとなたのです。

しかし、W氏が獲得した取引先は、そのほとんどが薄利多売のビジネスモデルであったのです。W氏は、原価計算や利益率といった概念には疎く、とにかく多くの顧客を獲得することだけを目標としていました。

例えば、ある大手企業との取引では、W氏は競合他社よりも大幅に低い価格を提示し、契約を勝ち取りました。しかし、その価格はX社の原価を下回るものであり、受注すればするほど赤字が膨らむという悪循環に陥っていたのです。

X社のベテラン社員たちは、W氏のやり方に危機感を抱いていました。彼らは、W氏に原価計算の重要性や長期的な利益確保の必要性を訴えましたが、W氏は聞く耳を持ちませんでした。

「私はA銀行から出向してきた身であり、X社の将来よりもA銀行との関係を重視しなければならない」

W氏は、自身の立場を利用し、社員たちの意見を封じ込めました。

結果として、X社は短期的には売上高を伸ばすことができましたが、長期的には利益を圧迫し、財務状況は悪化の一途を辿ったのでした。

W氏の行動は、まさに「作業」に偏ったものであり、「仕事」の本質を見失っていたと言えます。彼は、目先の成果を上げるために、X社の将来を犠牲にしていたのでした。

W氏の問題は、彼個人だけの責任ではなかったのです。X社は、W氏のような銀行からの出向社員に過度に依存し、自社の社員を育成することを怠っていたのです。

W氏の問題は、X社にとって大きな教訓となった。X社は、その後、短期的な利益ではなく、長期的な成長を重視する経営方針へと転換しました。

社員一人ひとりが「仕事」の本質を理解し、責任感を持って業務に取り組む企業文化を醸成するために、社内研修や勉強会を積極的に開催し、社員の意識改革を促しました。

また、X社は、銀行からの出向社員に依存する体質から脱却するために、自社の社員を積極的に採用し、育成することに力を入れました。新卒採用だけでなく、中途採用にも積極的に取り組み、多様な人材を確保することで、組織の活性化を図ったのです。

これらの取り組みの結果、X社は徐々に業績を回復し、持続的な成長を遂げることができました。X社は、W氏の問題を教訓として、真の「仕事」とは何かを問い直し、社員一人ひとりが成長できる企業へと生まれ変わったのです。

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