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「人生」に触れさせてくれるもの:あなたには何度か見返したい本や映画はありますか?

あなたには、何度か見返したい本や映画や動画などはあるだろうか?

楽しくてお気に入りで何度も観るという意味ではなく、人生の節目に読み返してきたとか、自分にとって大切なことを取り戻すために観たくなるとか、そういった類のもの。聞いておいて何なのだけれど、私自身はそこまで仰々しいものはパッと思いつかない。でも、本は放っておくとどんどん増えていくから、もういいかなと思えばあっさり手放すようにはしているつもりの中、十数年もずっと一緒に引っ越しを繰りかえしている本や映画のDVDがある。それは中身を見返さななくても、背表紙を眺めるだけで教えてくれるもの、伝えてくれるものがあるように思う。

今回ふと、そんな中のひとつだな、と思ったのがこの動画。

なにかの拍子で田坂広志さんの名前が出てきて、あぁ久しぶりにこの動画を見返そうと思った。2018年の動画なのでそんなに古いわけではないし、去年か一昨年あたりにメンターに勧めてもらった動画なこともあり、頻繁に見直しているわけではないけれど、いつでも取り出せるリストに入っている。久しぶりに聴いてやっぱり感じるものがあった。

内容としては、正直すごく特別なお話かと言うとそうではないし、言われていることはある程度生きていたらどこかでは聞いたことがあることだと思う。この言葉が…このフレーズが…と取り立てて書き留めるものはなかったりする。また、聴衆はリーダー層だから「リーダーとして」などと言われると、果たして私はリーダーだろうか?この方のおっしゃるリーダーには当てはまらないかな、という気持ちが沸き起こらなくはない。さらにタイトルの「 逆境を越え、人生を拓く五つの覚悟」というのも正直ズバッとくるものはない。自分自身の人生を振り返って逆境というほどの逆境があったのかというと、ものすごく良く言えば順風満帆、いや、単に平凡な人生だと思うので、逆境に立ち向かうと言われても、立ち向かうほどのものはまだ経験していないように思う。(願わくば、今後も逆境はなくていい)

でも、そうなんだけど、この動画を聴き返すと、大切なこと、何度も呼び起こしたい原点のようなものに触れられていると感じる。フレーズとか言葉とかそういうことじゃなくて、大事なメッセージを届けてくれる。ちなみに、この動画の中でも話されているけれど、この場の聴衆に対しては冒頭に「メモをとるな」と言われていたらしい。メモとかそういうことじゃなく、受け取って欲しいものがあったんだろうと思う。回を重ねるごとにその意味が分かる。

本当は今週のnoteは遠藤周作『深い河 ディープ・リバー』を読んだまとめを書こうと思っていた。でも、ちょうど先月その本をもとに考えを深めている本が出版されていて、それを読んだらますます面白くてどんどん深みにハマってしまった。その本にはこんな記述があった。

この作品だけでなく、遠藤は「生活」と「人生」という表現によって、私たちの生における異なる次元を表現しようとしています。遠藤にとって「生活」は、いわゆる社会的生活です。人々のなかにある生活です。しかし、「人生」は、一人、「大きな命」とつながる道にほかなりません。遠藤にとって信仰とは、自らを「人生」へと向き直させるはたらきでもありました。
(中略。筆者注:遠藤周作が教会でミサに参加する日記)
教会におけるミサという聖なる空間にいるときだけが「人生」だというのではないのです。「神(キリスト)」と向き合う場が、遠藤にとっての「人生」です。また、遠藤にとって「人生」は、母や兄といった亡き者たちとのつながりを感じる時空でもありました。
(中略)
「人生」とは、私たちの生、すなわち存在そのものが深化する現場です。ある人は、何かに没頭するときに、また、ある人は家族に料理を作っているときにそれを経験することがあるかもしれません。
また、「人生」において私たちは自己の深みを知るだけではないのです。そこで「神」と他者—亡き者を含む—に向かって開かれてもいく。自己と深くつながり、他者と神に向かって開かれていく、そこに「人生」がある、そう遠藤は感じています。
(中略)
「生活」だけの「生」もなければ、「人生」だけの「生」もありません。しかし、「生活」を忘れて生きることはほとんどありませんし、むしろ「生活」でいっぱいになることは珍しくない。しかし、「人生」が見えなくなることはあります。「生活」に埋もれそうになる「人生」を見逃さないこと、そうした営みにおいてかけがえのないものは何か。それが『深い河』の主題ではないかと思います。(『日本人にとってキリスト教とは何か』NHK出版新書48ページ)


田坂さんの動画は特に印象的なフレーズがあるわけでもない(何度も繰り返すと大変失礼だけれど)にも関わらず何度も観たいと思うのは、この「人生」に触れているからだと思う。言葉とか細かいことではなく、話されている姿勢が、田坂さんがご自身の人生に向き合われている姿勢が「生活」ではない「人生」にふと目を向けさせてくれるからだろう。何度も聴いていると特に、一言一句漏らさずにと真面目に机に向かって聴くのではなく、リラックスして話全体に身を委ねるのがよいように思う。

最初は「人生」の視点を持って「生活」をするのだけれど、気づけば近視眼的に「生活」にいっぱいいっぱいになったり、「生活」を繰り返すことや「生活」を丁寧にすることに夢中になってしまうことがある。すると「生活」の中に疑問が生まれたりする。「このままでいいんだっけ?」「なんかうまくいっていない気がする」といった具合に。そんなとき「人生」の次元に触れること、「人生」の次元で眺めること。そうすることでそれらの疑問がふと解けるときがある。そんな「人生」のエネルギーに触れさせてくれるものとして、この動画はオススメだ。

あなたにとって、そんな本や映画、動画はありますか?

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