王道を行く師の愛した夏草よ
大学時代の恩師が亡くなったことを知ったのは、
ゼミOB会の世話役からの同報メールでした。
労働運動史の研究に一生を捧げた恩師T先生は、
弱い立場の人たちが虐げられる社会の仕組みに対して
異議申し立てを貫いた人でした。
だからといって学問的な誠実さを心情に妥協させたこともなく
歴史的事実に対する探究心にあふれ、
静かな情熱を研究と教育に注いでいました。
先生を慕って集まったゼミ生は学内でも優秀で、
その多くが研究者の道を選ぶか、
将来有望なビジネスパーソンとして巣立って行きました。
そのような中、
突然変異的に出来の悪い、
ぐうたらなゼミ生であった私などにも
愛情を注いでくださり、
私の妹たちが学校の夏休みを利用して遊びに来た際に
ご自宅に招いて奥様手作りのご馳走をふるまってくださったことを
忘れません。
反権威、反権力の思想家たるを曲げなかった先生でしたが、
あくまでも公正で清廉な人格と、
何より家族を愛し、学生を愛し、学問を愛したその生き方とで、
まさに王道を歩んだ生涯だったのだと思います。
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