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記事一覧

鳥待月に桜咲き
鳥来月に桜舞う
めじろ鳴く鳴く

柴犬ちょこんと
膝上に前足おき
おやつをひと口

いつもの鞄と靴
黄茶色の本皮の
皺と目尻の皺と

かわしあう愛と
それぞれの開幕
祝う公園の椅子

2022

白ごはん

白ごはん

白ごはんを食べたとき瞬時に
この味が好きだ大好きだ
なんどでも食べたいくらい好きだ

と脳内が好きで溢れて
でもそれは口から出てこなくて
からだで味わった
声にならない美味しいを
顔で表現していた
年の瀬に思う

言葉にならないくらい好きで
言葉にならないくらい夢中になれて
考えなくてもまたと思えるような

そんな恋ができましょうか
そんな恋が冷めても
別の味わいを楽しめるような
冷めてからが美味

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やわらかな羊の毛の

やわらかな羊の毛の

あちらこちらに建っているビルも、木の位置も、歩道も、ぐんと伸びた橋も。殆どが変わらない。

変わってしまうのは、常に、生きているもの。
葉や、草花や、皮膚、命があるもの。
眼、脳、心臓、そして心。

つかみどころがないのは、生きているもの。

植物が陽のほうに伸びてゆく素直さやしなやかさをこうだと決めつけてしまうのなら、あの木々に励まされることは、ないのでしょう。葉や蔦が、めいめいにのびている。毎

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虫

スマートフォンの光めがけて
飛ぶ

夜の虫のよう
そこに集まる
ひとびと

しるひともしらぬひとも
みんなそこにいる

すっぱだかかもしれない
泣いているかもしれない
笑っていないかもしれない

みんなそれぞれの
眠れない理由をもちよって
その理由については語らずして

日中でもいいことを
夜のせいにして
つぶやく

耳を澄ませてみたい
沈黙の向こうに
あなたの鼓動に
わたしの心臓に

ほんとうは

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夜の電車 ゆるりと横にゆれ

夜の海 大海原の小舟の話を読んでいたころ
なんとなしに昨日ぬったものとシンクロして
ゆらゆらして 小魚をみたきがした

少年マガジンをもった大鯨みたいなおじさんが
となりに座っていて 電車は青かった

とっても海だった

瞳のなかの一等星

瞳のなかの一等星

お刺身を手渡すときの 魚屋さん
お会計した本を渡すときの 古書店のお兄さん
茶葉のことを教えてくれた 中国茶屋のお姉さん
台湾のジューススタンドの おばあさん

物静かに働くみなさんの手がとまり
こちらをむき顔があがり
目があうとき

瞳が輝いてた 
キラキラだった

一等星くらい
一等星よりもあたたかく
彗星よりもゆるやかに

輝いていた

魚がすきなんだなぁ
本がすきなんなぁなぁ
お茶がすきな

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ハリネズミ

初めて会った日からずっと
支えてくれていたことに
会議室で気づいた

エマージェンシーコールを
あなたに向けて
大人げなく
叫んだ

もう休みな
やっておくから
ほんと大変だったね

初日のトゲトゲしい態度は
不器用な優しさだったのだと
会議室で泣きながら気づいた

その時には休むことが決まってしまって
送別会まであなたに会うことはできなくて
伝えるべきことを伝え漏れたようなきがして
ずっと暮らし

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