横山貴士 |人的資本経営

専門は人的資本経営の推進・開示コンサルティング。銀行系HR会社、有名出版社のHRビジネ…

横山貴士 |人的資本経営

専門は人的資本経営の推進・開示コンサルティング。銀行系HR会社、有名出版社のHRビジネス立ち上げ支援、HRベンチャー顧問など。18年より大手メディアのHRグループに参画。ISO30414アセッサー、中小企業診断士。 https://www.tokyo-c-style.com

最近の記事

その人的資本開示、開示になっていません

人的資本経営のコンサルティングをしていると、各社の開示情報からいろいろなことが見えてきます。最近とくに感じるのは、開示といいながら実は何も開示していないことに気づいていない企業が多いことです。 そもそも、「わが社にとって人材こそが宝」とか「わが社は人づくりに力を入れています」といった言葉は人的資本の開示が制度化される前からよく聞きました。 その「力を入れています」のプロセスや結果を開示することが、今般の人的資本の開示なのですが、多くの企業では従来通り言葉による開示しかして

    • リーダーの仕事は…

      マイナ保険証への移行は予定通り進むようです。 安心しました。当然です。 新しいことをはじめるときは、賛否両論でてきます。リーダーは反対意見だけでなく少数派の意見もしっかり聞くことが大切です。 しかし、ここで注意すべきことは、リーダーの仕事は、全員を説得したり、話を聞いたりすることではありません。 正しいと信じていることを進めていくことです。 誰でも人から嫌われるのは避けたいですから、はじめは様子見の立場の人が多くなります。しかし、5~10%の人はリーダーについていきます。

      • 発揮されない能力は、無いに等しい

        タイトルの名言はパフォーマンス学の佐藤綾子先生のお言葉です。昨今話題になっている「人的資本の開示」のニュースを聞くとこの言葉がしみてきます。 「人的資本の開示」では、その名の通りこれまでブラックボックスになっていた自社の非財務情報(人的資本含む)の開示が求められてきます。もちろんこれは法人レベルの開示ですから、個人レベルでは開示されません。 それでは、個人としては気にしなくてよいかというとそうでもありません。 例えば、ISO 30414(人的資本の開示に関する国際

        • 「自律型人材」を育てるにはどうすればよいのか?

          人材育成の仕事をしていると、クライアント先の人事部から「自律型人材を育てたい」「社員に自律的になってほしい」という相談をよく受けます。 20年近く前(まだ私が駆け出しの若手だったころ)は、人事部にキャリア研修の提案をしにいくとよく煙たがられたものです。 「社員は会社の指示に従えばよい」 「自律的になったら優秀な社員ほど辞めてしまう」 など、今では笑い話のような本音が透けてみえました。 その後日本は東日本大震災を経験し、大切な家族や友人、故郷を突然失うという経験をしまし

        その人的資本開示、開示になっていません

          人的資本の開示は流行なのか?

          人事まわりでは「流行りもの」があります。最近では、「ジョブ型」「リスキリング」あたりでしょうか。そしてもうひとつ、「人的資本の開示」が挙げられます。 「これも流行りものでしょ。どうせそのうち忘れられるよ」 なんて言葉が聞こえてきそうですが、必ずしもそうではないかもしれません。 なぜ、人的資本の開示が求められるのか? 先が読めない混沌とした社会情勢の中、投資家が企業価値を向上させるための手段として人的資本に注目しはじめたのがきっかけです。 それを追いかけるように、202

          人的資本の開示は流行なのか?

          残業はなぜ減らないのか?

          この時期になると、半期の決算が見えてきて、人事面では「部下評価」を行っている企業も多いでしょう。そこで、議論のひとつとしてよくあがるのが時間外労働(残業)です。 昨今、ワークライフバランスの拡充とあわせて生産性の向上を経営課題にあげている企業は多いです。働き方改革ですね。 とくに、在宅勤務が増えてからは、生産性の向上に加え、業務の見える化あたりも話題になります。 ジョブスクリプションという言い方をする企業もあります。 さて、生産性の向上を旗印に、皆さんがお勤めの会社で

          残業はなぜ減らないのか?

          そのダイバーシティ、ちょっと足りません

          ダイバーシティという言葉は、だいぶ市民権を得たように感じます。といいつつ、いまだに女性の活躍推進に留まっているという会社が多い気もしますが…。 ダイバーシティを把握・推進するうえで、従業員の年齢層ごとの把握というものがあります。多くの企業では、次のような指標を把握しているのではないでしょうか。 18歳~29歳 800人 30歳~39歳 1,000人 40歳~49歳 1,400人 50歳~59歳 1,500人 つまり、コアな労働力です。 しかし、ダイバーシティを公開

          そのダイバーシティ、ちょっと足りません

          初任給42万円は、うちより高い?低い?

          最近、このように新卒など新規採用者に対して高額報酬を支払う企業が増えてきているようです。しかし、これを受けて一喜一憂するのは尚早です。企業には報酬以外にも比較する面がたくさんあるからです。 例えば、学歴や性別、年齢に依らない平等な機会提供と評価、特許技術などの専門性など。最近はSDGsへの取り組みも比較材料になります。仮に自社との報酬差を比較する際は、給与以外の各種手当なども加味した方がよいでしょう。 企業は給与以外にも様々な手当を支給します。残業手当、賞与、家族手当

          初任給42万円は、うちより高い?低い?

          結局、リモートワークとオフィスワークはどちらが良いのか?

          コロナ禍になってから、何度となく議論されてきたテーマです。NTTグループさんのように「原則リモートワーク」を打ち出す企業もあれば、著名経営者・米テスラ社のイーロン・マスク氏は「オフィスワーク原則」を掲げています。その中間である「ハイブリッド式」を掲げる企業も多くあります。 この手の研究論文を読んでみた個人的な感想は、「まだ結論はでていない」という結論です。 というのも、「リモートワークが可能な従業員については、生産性とウェルビーイングが向上したいくつかの証拠がある」と

          結局、リモートワークとオフィスワークはどちらが良いのか?

          1on1ほど誤解されているスキルはない

          ここ数年、1on1ミーティング(1on1)が大分浸透してきたように思います。しかし、これほど誤解されているスキルも珍しいのではないでしょうか。その最大の誤解とは、今までの上司と部下の一対一の面談を1on1と言い換えているだけという誤解です。 従来型の一対一の面談は、上司が聞きたいことを聞く場です。 例えば、四半期に一度、または半年に一度、ボーナスの前の査定として行う場合です。上司は、目標達成率とその理由やうまくいったこと、いかなかったことなどを聞きます。これは上司が聞きた

          1on1ほど誤解されているスキルはない

          副業という手段の多様化

          陽の当たる窓側のリビングルームでnoteを書くのが好きなのですが、暑くてカーテンしめています(~_~;) さて、社員の副業をめぐるニュースが大々的に取り上げられるようになってきました。 #日経COMEMO #NIKKEI 副業の目的は大きく2つあります。 ひとつは視野を広げ社外の知見を学ぶこと(①)。 もうひとつは社員のキャリア意識の醸成(②)です。 どちらも納得できますが、見誤ってはいけないのは、どちらも目的ではなく手段ということです。 前に挙げた目的を達成す

          副業という手段の多様化

          パワハラ?でもその前に…

          「目ぇ覚ませもっとお前ら!いつまで甘えてやってんのや!その気でやらんかアホッ!!」 このセリフだけ切り取って文字化すると、強烈ですよね(苦笑) 6月12日のプロ野球の試合で、負けているチームのコーチが試合中に選手を集めて喝を入れていました。その様子がTwitterで拡散され「トレンド入り」しました。https://twitter.com/jackschannel_ch/status/1535874971020718080?s=21&t=bBAWOiIiu9RfdnyqBR

          パワハラ?でもその前に…

          選択肢があるという豊かさ

          およそ6年ぶりに社会人大学院時代のゼミ総会がありました。個別にはちょくちょく会っていましたが、みんな(というか3分の1くらい)で会うのは久しぶりです。 私たちのゼミの特徴は、ゼミ生の6~7割くらいが起業しているということ。 世の中大多数のビジネスパーソンが会社員としてビジネス人生を終えるのに対し、会社員以外の選択肢を世に示しているのは、それなりに価値があると思います。こういう会社員以外の働き方という選択肢がもっと広まるといいですね。 ちなみに、会社員が良くないというこ

          選択肢があるという豊かさ

          結果だけでなく、決意とプロセスの公開も

          『男女の賃金、公開できますか?』(2022年5月23日 日本経済新聞)は、興味深い内容でした。 日本では、2023年度にも「人的資本への投資状況」を有価証券報告書に記載することを義務付ける予定です。そこに、男女の賃金差という項目があります。公開を義務付けることにより緊張感が生まれ、改善を期待できます。 男女の賃金差以外にも、「重要ポストの内部登用率」「離職率」「苦情の件数」など、今まで見えなかった部分が明らかになっていく方向です。そして、これらの情報は「ルールだから公開

          結果だけでなく、決意とプロセスの公開も

          How our work changes?

          エンゲージメントについて勉強をしていたところ、参考になる資料をみつけたので共有します。 働き方の今とこれからを比較した「How our work changes」というタイトルです。 全項目興味深いのですが、この資料が作られたのが2011年というところが驚きです。今、日本で行われている議論にまさに当てはまります。日本は10年以上遅れていそうです。 個人的には、「Job crafting」「Horizontal networks」「Boundarylessness」あたりは

          若手がやめていくという悩み。そもそも…

          「押すなよ、押すなよ、早く押せよ!」というネタが大好きでした。あのネタがもう聞けないとは…。残念で仕方ありません。 さて、5月の連休を過ぎたころになると、「4月に採用した若手が転職を悩んでいる」なんていう悩みを聞くようになります。そうすると、人材育成や研修企画を担当している人に「なんかいい研修ない?」みたいな要望が届きます。 でもちょっと待ってください。確かに何か研修を行えば「とりあえず」の効果はあるかもしれません。しかし重要なのは「なぜ」の部分です。「なぜ、転職した

          若手がやめていくという悩み。そもそも…