"長編小説 『じゃんだらりんの国から』 第3話 「和解のすき焼き」"

不幸中の幸いではあったが、しばらくすると、子どもたちと父が遭遇した。

皆子は父に見つかりヤバいと思ったが、父は思いの外、落ち着いた姿で子どもたちを見つめていた。

また、殴られたはずの武も父と一緒に居た。

父は、子どもたち一人ひとりの瞳をじっと見つめると今度は、先程、泣き上戸になって取り乱していたことを子どもたち一人ひとりに謝罪するかのように、瞳に涙をこらえながら大きな声で言った。

「お前たち、本当にすまないことをした。特に武。力任せに頭を殴ってしまい、本当に済まないことをした。みんな、どうかお父さんを許してくれ。仕事で嫌なことがあって、少しイライラしていたんだ。こんな弱いことをしてしまったお父さんを、お前たち、どうか許してもらえないか?皆子には本当に苦労をかけた。すまんな。お前たち…。」

父は涙ぐみながら土下座して子どもたちに深々と謝った。

「もういいよ。お父ちゃん。頭上げなよ。誰だってイライラする時はあるよ。ワシの頭は鋼鉄の強度だから、カルピス瓶なんてへっちゃらさ!ワッハッハ!」

と武は父を全く憎むことなく、けろっとした表情で話かけた。

父は武と皆子を抱きしめた。

「済まない…。本当に済まない…。こんなお父さんを許してくれるなんて、お前たちはなんて優しいんだ。父ちゃんが悪かった。よし。明日の夜はみんなの大好物のすき焼きにするぞ!お父さんお酒はもう飲まないから安心してな?」

明日の晩ごはんがすき焼きということを知って、子どもたちはたいそう喜んだ。

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