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マッチングアプリであった子と年末深夜に散歩したこと

12月30日に出逢ったあの子の話。

クリスマスに高熱を出し体調を崩したので、今年は冬らしいことを全くせずにただ毎日布団に潜り見たくもないYouTubeを何時間も眺めていた。
やっと普通の生活ができるほど回復したのは12月30日、街中が毎日働いた分を取り返そうと吞めや食えやで騒ぎに騒いだあとで、もう若干静かになったころである。

昼から外へ出てみても人は少なく、店は閉まっていて、あまりにも人の声が聞こえないので自分だけ年末感を味合わずぬるっと年を越すことが怖くなって人生で初めてマッチングアプリをいれた。

そう簡単にマッチしないものだな、と気になった子にイイネしながら風呂に使っていると1件マッチの通知が届き急いでメッセージをチェックした。

「家近いですね!今から会いませんか?」

ガーン、めちゃくちゃ騙されそう。

ただ暇すぎる私はそうも言ってられず会わないことを軽く伝えながらもメッセージを続ける。
深夜1時。大晦日のことだった。
もうベッドに入り何度かメッセージをやり取りしたところでふと「これ会ったら結構話題として面白いんじゃない?」と思いたち、

「1時間だけ外の散歩ならいいですよ」

とメッセージを送ったところ15分後に近くの警察署の前で会うことになった。向かえばそこには警察官がいて「こんなことはやめなさい、逮捕だ」とか言われるのでは?とワクワクしながら支度をし玄関を出た。
警察署の前が見えそこに一人の女性が立っていることが確認でき、ちょっと緊張したが声をかけると意外と普通に「お、きた」とぷらぷら散歩を始める。

しばらくして彼女は、

「朝実は財布なくしちゃって」

と話しはじめ、それを聞いた俺は「あ~金くれ系か」と察したがどうやらそんな素振りもなく「誰かに話し聞いてほしかっただけなんだ」と、ただどこでなくしたのかや、警察に電話したこと、友だちの反応、その心境を話してくれた。

それから行き先を決めてないことに気づき「どこいく?」と聞くと「実は明日実家の山形に帰らなきゃいけなくて、その前にこの街の川が見たい」というので一緒に隅田川へ向かった。彼女は地元の川はどれだけ綺麗か、そこに向かうまでにすごい階段のある神社があるんだよ、蕎麦を食べさせてあげたいなんて話をしてくれたが突然「走ろう」と近くの階段をゴールにして走った。深夜風呂上り寝る前外出散歩後ダッシュは体に負担だったようで息を切らし、自販機でココアを買って、さっきよりゆっくり歩き始めた。

「川も見たことだし帰ろうか、1時間だ」

俺も1時間経ちそうなのには気づいていた。ただその非日常が楽しくて、気づけばずっと話していたいと思っていた。そこで、

「お財布なくしたんだし、神社に最後詣して見つかるようお願いしよう」

と神社へ行って少しでも時間稼ぎしないか提案したところ、彼女は満面の笑みで「うん!」と言い近くの神社へまた歩き始めた。
神社につく少し前彼女は「実家に帰ったあと留学に行くの、イギリス」と言い「だから財布なくしたのが不安だったの」と言う。
神社について俺は目いっぱい願いを込めて財布が見つかるようにお願いした。

しばらく話して握手をし、さよならして向こうへ歩き始めたので呼び止め、ポケットに入っていたキーホルダーを渡し今度会うときに返してと約束をした。彼女は私もなにか渡すよ、とポケットをごそごそしキャラクターの描いてあるライターをくれた。

翌日、財布が見つかった連絡がきた。
よかったと思いながらあの日湯冷めで若干また風邪気味の俺は2度寝をはじめた。

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