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振られた次の日、ぼくは朝マックを食べ大塚のエッチな店へ足を運んだんだ

 「新年会しよ~」久々にそう言われて嬉しかった。昔からすごくモテていた友人だ。来たるその日まで毎日筋トレ、温泉、美容、食事に気を遣い最強にかっこいい状態で向かった。彼女が用意してくれていた1軒目では、誕生日プレゼントも貰い2万5千円もした夕食代も全て払ってくれていた。
 ああなんて幸せなんだ「2軒目いこうよ、終電近いし一杯しか飲めないけど!」そう言われて1杯ならと近くのHUBに行くことに。

 事件が起きたのは2軒目だった。


 「なに飲む?」と聞くと「この飲み比べいいじゃん!」とウイスキー飲み比べセットを指さすもんだから、それがまた可愛くて楽しくて、じゃあここは払わせてと言いレジに向かった。はじめは愛想の悪かった店員さんも飲み比べの種類を相談しているうちに打ち解け「楽しんできてくださいね!」なんて声を背中に受けながら6種の飲み比べセットを両手に席に戻る。その時だった。


 「ごめん終電きたから帰るね~」




 え???????????????????????????





 え???????????????????????????



 ある程度変な子だな~と思っていたが、顔でカバーされていた部分がすべて化けの皮が剥がれ落ち「常識がない子」に成り代わった。店員さんの「え?」という目も見れず、みっともない、情けない私はその場で全種類味わう気はさらさらなく一気飲みし、といっても4杯目で限界きて口に含んだがグラスにぴゅーと戻し店をでた。
 あまりにも情けなくて、ムカつきすぎて、店を出て友人に電話をかけ3時間も付き合ってくれた。

 夜中3時に死んだように眠りについたが、翌朝6時に目が覚め、まだ怒りの感情が残っていたので朝マックを食べることに。情けなすぎて、悔しくて、とにかく誰かに包んでほしいと思い、ネットで見つけた大塚にあるデブ専門エッチな店を予約し、シャワーを浴びた後朝一で向かった。つくと指名を聞かれたので私は「一番早い子でお願いします。」と言い待ち時間の短い子を指名する。25分待ちですね~と言われたがまあ仕方ない。10分前には戻るようにと言われたのでとりあえず街に出てぶらぶらし、充電を借りたりしながら時間をつぶしていたら予約時間の11分前になっていた。

 手書きの予約券を握る右手。ちょっと小走りの俺。軽く息を切らしながらついて待っていると写真の6割くらいかわいい子が付いてくれた。

 「できれば抜かなくていいので、抱きしめてくれませんか」

 女性は優しかった。黙って抱きしめてくれ、頭をポンポンしてくれた。そんな時間を過ごしていると心が落ち着き、「アッ、ヤッパリチョットヌイテクダサイ」というと優しく丁寧に時に激しく扱ってくれた。病んでいるのか、してもらいながら涙を流す俺。

 名刺をもらい店を出ると、されながら涙流したのとどっかで帳尻合わせないととの思いからスタバでカプチーノを買う。店員さんがメニューを読み上げてくれたとき、お釣りをくれたとき、カプチーノをくれたとき、すべてにお礼を言ったときの俺は最高に真摯で余裕のある男でしかない。
 帰り路、駅前に花屋があったので立ち寄り、いまの季節の花を店員さんに聞きながらミモザの甘い香りにつられ、ミモザとその隣にあった職人の手作りだという花瓶を買って家に帰った。俺はタートルネックを着ていた。

 花も花瓶も電車の中ですこし見えるように持った。その場にいた全員が「休日朝からスタバ片手に花を買う、なんて心に余裕がある人なんだろう」と思ったことだろう。30分前には小走りでエッチな店に向かっていたとはつゆしらず。

 ああ素敵な休日。

 がんばれニッポン。

 すごいぞニッポン。

 立ち上がれいまだニッポン。


 情けねえ

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