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ルービック
2022年3月19日 03:10
私は喫茶店の隅の席でアイスラテと共に休息していた。ここで心も体も休めることが、最近のマイブームだ。入口についているベルがちりんちりん、と鳴る。そしてその音に負けないくらいやかましく入ってくる男の姿があった。彼はこの店の常連だ。たぶん。確信がないのは、いつから通ってるか、という話をしたことがないからだ。ここに初めて訪れたときに相席したのが彼だった。おしゃべりな彼は初対面の私にも気さくに話し
2022年3月12日 00:05
窓の外は雨が降っている。傘を差すほどではないが、差さなければそこそこ濡れるくらいの雨。この雨量が一番腹立たしい。「びしょびしょだよ、とは言えないのが癪だな」男はステッキを手に、店に入るやいなや、私の向かいの席に最短距離で座った。頭や肩のみならず、腕、胸、脚もじんわりと湿っている。「傘持ってくればよかったのに」見せびらかすようにテーブルに掛けたビニール傘の柄を掴み、こんこん、と床をたたいた。
2022年3月5日 02:30
「勉強中かい?」男は私のイヤホンを外し、耳に吹き込むように尋ねてきた。「見たらわかるでしょ。邪魔しないでくださいよ」私は机の上に広げた教科書やノートを指し示した。しかし、男は悪びれることなく、見て分かるほど勉強していなかったから聞いているんだよ、と言った。「店に入ってからずっと君を見ていたけど、携帯に釘付けだったじゃないか。調べ物なら分かるが、机の上には電子辞書がある。テスト範囲の確認にし