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2022年10月 - 今月のスナップとエッセイ

時候の挨拶

 クローゼットの中は、季節が混在していた。

 とにかく、衣替えが面倒だった。10分で終わりそうなその行為でさえ、たいへんに億劫だった。何かと理由をつけては、スマホを見ながら寝転ぶ日々。やる気が起きない。

 端的に言えば、ただの横着者である。

 そんなわたしは、着古した半袖に、引っ張り出した長袖のカーディガンを着ていた。これで、10月を乗り切ろうとしていた。片付かない半袖たちと、新しく押し込まれる長袖たち。混ざりあう季節。洋服たちは、ひそひそとわたしを笑っているだろう。

「寒いのは朝晩だけよね」
 そう言いながら、わたしは、風吹くなか、背中を丸めた。

 夏は過去であり、秋は深まり、やがて冬が来る。
 迎えた10月下旬。

「普通に寒いわ」
 寒くて目が覚めた日。有無を言わず、半袖を仕舞った。そして、あらゆる長袖と交換した。もう耐えられない。別に、我慢大会していたわけじゃないのよ?

 季節は巡る。気がつけば10月も終わる。

寝台列車に揺られて島根旅

 生きているうちに、やりたいこと。
 そう言われ、あなたは、何を思い浮かべるだろうか?

 夫は「出雲大社に行きたい!」と言った。小学生の頃からの夢だと言う。そして「サンライズ出雲に乗りたい!」と言った。サンライズ出雲は、今の世では希少な、寝台特急だ。

 それなら、行こう!!
 わたしが、連れて行ったる。

 そして、ついに連休をいただいた。この時すでに、わたしの中では、旅の構想が出来上がっていた。パズルを組み立てるように、旅程を組み立てる。旅の計画は、物を書く時と似ている。わくわくが止まらない。

 往復は寝台特急、出雲市に2泊する旅。

 その記録の一部を書き留めておこう。
 いずれは、旅行記にしたい。

 寝台特急の旅は、非日常だ。行きは、雑魚寝のノビノビ座席。帰りは、シングルツインを2人乗りで予約した。

 列車に揺られ、眠りにつく。旅への期待から、気持ちが高ぶり、夜中に何度か目が覚める。すると、小窓から輝く月が見えた。その光は、優しく車内を照らしている。ガタンゴトン。規則正しく響く音をBGMに、わたしは、ふたたび目を閉じた。

 初日は、稲佐の浜と出雲大社へ。
 出雲大社へ足を踏み入れると、辺りの空気が変わるのを感じた。心がすっと軽くなる。旅のご縁に感謝し、お参りした。

稲佐の浜

  2日目は、島根県立しまね海洋館アクアスへ。この水族館の見どころは、シロイルカである。シロイルカの器用な口先から生み出されるバブルリングは、しあわせのバブルリングと呼ばれている。

バブルリング
カメラ目線いただきました

 最終日は、再度出雲大社へお参りをして、この旅へ感謝の気持ちを伝えた。
 そして、一畑電車に乗り、松江へ向かう。

 松江市は、初めての訪問だった。住みやすそう、それが第一印象であった。綺麗な街並みで、落ち着いた雰囲気。良い街だった。
 調べてみると、経済産業省が、「暮らしやすさ」を貨幣価値に置き換えて比較した結果、全国1,741市区町村の中で松江市が総合1位となったようだ。

出雲の朝日
朝はゆっくり
松江の街並み
松江城
宍道湖

 旅は、終盤である。
 天気にも恵まれ、夕日が、駅のホームを黄金色に染めていた。とても素敵な旅だった。

 夫が行きたいと言った出雲。偶然にも、わたしが以前ひとり旅したとき、時間の都合で、泣く泣く通過した場所であった。あの旅で、わたしは山陰が好きになった。出来れば、また来たいと思った。
 夫の願いが叶ったと同時に、わたしの願いも叶ったのである。

 帰りの寝台特急では、ご当地ビールを飲み、早めに眠りについた。
 部屋の電気を消すと、満天の星空がわたしたちを見守っていた。

 午前4時40分。静岡に着くと、金木犀の香りが漂っていた。ほんの数日で、すっかり秋が深まっていた。

 白んでいく東の空を眺めながら、わたしたちは日常へ戻っていく。


 わたしには、生き急いでいる時期があった。ちょうど、働き始めて間もない頃。自分のやりたいことをやり、行きたいところに行き、会いたい人に会った。なにかに憑りつかれたように、行動した。

 “今しかない”
 その強い想いが、わたしを支配していた。

 時が過ぎ、夫と過ごすうちに、それも落ち着いた。しかし、「今しかない」との想いは、漠然とこの心に残っている。

 いつか、わたしの旅にも終わりがくる。その時、やりたいことをやりきったなと思えるように、この旅路を歩んでいきたいものである。

23421枚の思い

 この1年間、Panasonic様より、ミラーレス一眼カメラLUMIX G100を機材提供していただいた。LUMIX G100で写真を撮り、それをもとに各SNSへ投稿するという企画に、参加していた。

 今月末で、わたしの期間は終了。
 さきほど、機材返却の手続きを行った。

 昨晩、お借りしたカメラと4本のレンズをひとつずつ丁寧に拭いて、箱にしまった。とても、愛しかった。可愛いカメラだった。

 わたしは、機材に愛着が湧くタイプの人間だ。今まで手にしてきた機材はどれも売れなくて、全て手元にある。そういう写真生活を送ってきた。ゆえに、機材との別れは初体験だな、と思った。

 この1年、LUMIX G100でどれほどの写真を撮ったか、計算した。その数、23421枚。ああ、それだけ撮れば愛着も湧くなあ。

 最後の撮影は、静岡スナップ。スナップで始まり、スナップで終わる。わたしとG100の歩みは、とても楽しい時間であった。

ありがとね、G100。

今年もあと2ヶ月

 早いもので、今年もあと2ヶ月である。
 加速していく日々の中で、わたしが出来ることは何かを考えている。

 月末にこうしてnoteを書くと、1ヶ月の振り返りになるとともに、自分の行動や感情を整理できる。何となく生きているつもりでも、ちゃんと生きてきたなと思える。

 来月は、何を思い何を撮り何を書くのだろう。
 しっかりと、自分を見つめて生きていきたい。

 それでは、良い写真生活を。

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