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尾瀬銀座

と呼ばれていた一時代がある。

尾瀬見晴地区は6軒の山小屋が密集する全国的にも大変珍しい場所です。見晴地区の標高は1420m。東京タワーにして4つ分弱、スカイツリーにして2つ分弱に匹敵する高さ。前所の展望台に登った事がある人ならどれだけ高い場所にあるかお分かり頂けることでしょう。そんな場所で熱々なご飯が食べる事が出来、入浴も可能で、個室の暖かな布団で寝られるのだから、銀座とまでは言わないが、見晴の山小屋は旅館に近い宿泊環境と言っていい。

とは言いつつ、ここは山岳地帯。電気は発電機、電波も機種によっては入らない。片道3時間かけて歩いてのみ行ける山小屋だ。観光地の旅館とは似て非なるもの。

先代の話では、定員制度がない時代200人の山小屋に600人を宿泊させていた時代があったなんて言うわけだ。2畳5人、4畳10人の雑魚寝時代。空前の登山ブームの90年代は寝られるだけ有難い。ご飯も食べられるだけ有難い時代。想像しただけで凄まじい尾瀬だった事を推察する。山小屋側がお客様よりも立場が強かった事が伺え、悪く言えばお客様を選べる時代だったのだろう。

今は新型コロナウイルスの影響もあり、個室対応の需要が大半で相部屋でのご案内はごく稀なケースになりつつある。登山者数も昔に比べれば激減し、山小屋はお客様に足を運んでもらえるような仕掛けや工夫が必要な状況だし、前述した頃を考えれば時代は逆転した形だ。

見晴の山小屋は6軒それぞれに特徴や魅力がある。
是非とも、尾瀬に来る時は泊まる山小屋を変えてみたりして楽しんでくれたら嬉しい。

桧枝岐小屋(ひのえまたごや)さん
和食を中心とした定食提供やオーナーの語らいが魅力
弥四郎小屋(やしろうごや)さん
尾瀬ヶ原一望の客室とカフェスペースが人気
第二長蔵小屋さん
尾瀬開拓の父 平野長蔵さんの歴史が詰まった山小屋
原の小屋さん
激安ゲストハウス完備
燧小屋(ひうちごや)さん
キャンプ場の受付や檜枝岐村の郷土料理が味わえる
尾瀬小屋
至仏山を見ながら味わう山小屋グルメ

こうして、建ち並ぶ山小屋は古き時代から、
切磋琢磨しながら厳しい冬を何度も乗り越え令和に文化を紡いでいる。尾瀬小屋は今年で66年目の営業を迎えました。私はまずは100年という歴史を目指している。

見晴地区は山小屋だけでけでなく、
キャンプ場も隣接しており、清潔な公衆トイレも設備され、どの山小屋にも水洗トイレにお風呂が完備されている。これらがいかに贅沢な環境か、他の山域の山小屋に泊まった事がある経験者ならお分かりになるだろう。

初めて山小屋に泊まる方も、テント泊デビューする方も、尾瀬の見晴地区は自信を持って推奨したい。

見晴キャンプ場
見晴休憩所
公衆トイレ
トイレ内

どうだろうか。
見晴地区の充実具合に心踊らされはしないだろうか。
是非とも尾瀬に遊びにいらして下さい。

話は変わり、この7月15日からの三連休、今シーズン最大の忙しさだった。三日間で宿泊とレストラン、売店を訪れたお客様の数は1500人程度はいたでしょう。

レストランメニューはラインナップを制限し、一時的にフード提供を止めなければ宿泊のお客様に迷惑がかかる可能性がある状況に陥った。100%の受け入れ状況は作れず売り切れ商品が出たり、提供に時間を要したり、山小屋グルメを楽しみに来て下さったお客様には申し訳ない事をした。

SNSの投稿にも『席数が足りない』『提供時間が遅い』など、反省しなければならない投稿が見受けられた。

それでもスタッフ一同、微塵も手は抜かなかったし、
朝4時から夜9時まで長丁場を共に戦ってくれました。
これらの頑張りは手厚くスタッフに還元したいと思う。

今日は午前中の営業は取り止めレストランは閉鎖させ、
スタッフの休養に充てる事とした。寝坊しようが、元気がなかろうが、叱るどころか褒め称えてあげたい。
とにかくゆっくり身体を休めて欲しい。
三日間本当にお疲れさま。

終わりは必ず来る

私の願いは、タイトルどおり尾瀬銀座の再生だ。
それには沢山の理解や協力がいるだろう。

せっかく関わった尾瀬をもっともっと沢山の人に魅力を伝え、昔のような賑わいを取り戻したい。そしてそれぞれの山小屋の良さを体験してもらう。それは尾瀬に関わり出してからの私の夢でもある。

それには山小屋の自助努力だけでなく、植物の再生、木道の修復、トイレの復活など管理する環境省などの協力も必要不可欠だ。

目指す未来は、誰にも想像し得ない努力が必要で、
人から見えないところでどれだけ忍耐強く頑張る事が出来るかに掛かっている。認められなくとも、褒められなくとも、目立たなくとも、見晴に訪れた人達が『尾瀬って良いところだね』『また来たいな』と思ってくれたらそれでいい。

それは私が想う『山への恩返し』そのものだから。

尾瀬小屋
工藤友弘

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