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尾瀬小屋への帰り道

鳩待峠に着く前に、
群馬県片品村にある倉庫に立ち寄った。

そこの倉庫には、数軒分の山小屋の荷物が保管されており、小屋に上げて欲しい荷物を歩荷さんに伝達し、優先順位を判断して歩荷さんが荷物をピックアップし運んでくれるシステムになっている。

尾瀬小屋は木曜日と日曜日に歩荷さんが荷物を運んでくれます。今までは、そのやり方で何とか大丈夫でした。
しかし、尾瀬小屋の物量が多く、現状は歩荷さんのサイクルと荷物が欲しいスピードと合っていない。

二週間以上も前に倉庫に届いている荷物が、小屋に届かない。かといって、何でもかんでもヘリコプターで物上げしては、歩荷さんの仕事が減ってしまう。私の考えは、極力歩荷さんに荷物を運んでもらえるようにと考えている。しかし、欲しい荷物が二週間以上届かないというのは、求めているお客様にも残念な想いをさせてしまうし、5ヶ月しかない商戦の中では大きなマイナス影響を与える事になります。山小屋グルメも売り切れ商品が多発してしまっている。頭の中では、尾瀬小屋に専属の歩荷さをんがいたらな~とか、運搬曜日を見直してくれたらな~とか、ヘリコプターに切り替えてしまおうかな~。なんて事を思い浮かべるのだが、尾瀬の歩荷文化を支えると決めていた私がぶれてはいけないと、35kgの荷物を無理矢理ザックにくくりつけ尾瀬小屋まで辿り着いた。

パンパンに詰め込んだザック

話しは変わり、昨日から尾瀬小屋テラス工事が始まった。去年の今頃に、玄関付近のテラス工事を行い、今年は既存テラスをリニューアルする。第二期目の工事だ。
国立公園内の工事は手続きが複雑で、環境省と度重なる事前相談が必要となる。建築資材の種類、防腐剤の種類、景観色など自然に影響のないものを使用しなければならない。こうした作業も一年前から計画し、檜枝岐村の大工さんや建築士さんに現地調査や図面作成していただいたり、不備なき申請書類を準備していく必要があり一年がかりで行っていたものが小屋に到着したのだから、それだけでも感慨深い。そして、建築物の費用だが、木材の相場高騰で資材価格自体が高いのだが、それ以上に高いのが輸送費用だ。今回は資材運搬と大工さんの人送費用だけで、100万円以上の輸送費用がかかっている。それでも、お客様には至仏山を前にテラスで味わう山小屋グルメを堪能してもらいたいと考え予算を投資している。だからこそ、前述した【物が届かない】という現状へのジレンマは大きい。すぐには解決出来ないかもしれないが、必ず良い方法を模索したい。

ヘリ作業とテラス工事と営業を手分けして対応

朝から夕方までヘリ対応に追われた1日。
今日は皆も疲れた事でしょう。ありがとう。
作業が終われば酒の席もあり、村長や先代達と未来の尾瀬について語らう。酔っぱらいのように思われる時間も、実は物凄く重要な交渉をしていたり、これからの取り組みのきっかけを作っていたり、頭の中はお酒ではないものがグルグルしている。年に数回しかない、こうした機会から全ての物事は生まれてきた。
テラス工事もだし、フロンターレもだし、清掃協議会への募金やクラファンもそうだし農協さんの協力も全て。大切にしなければならないものを維持して守るには、それなりのエネルギーやカロリーは消費する。だけど、絶対に良い結果として跳ね返って来るわけだから、そうした時間は笑顔で共に酒を交わすのだ。

2023.6.20
2023.6.20
2023.6.20
2023.6.20

季節はぐんぐん進み初夏の植物が湿原に彩りをもたせていました。写真を撮りながら、やっぱり尾瀬の植物少ないなと感じるわけです。ミツガシワなんて、鹿の食害を直撃している植物の一つでしょう。【花の尾瀬】なんて言われていたのはもう昔のこと。リアルなハイカーのリアクションは『全然写真と違う』『全然お花ないじゃん』これが現実。ないことはないんだけど、昔のお花畑写真を使いまくっている旅行パンフレットなどが大きな解離を生んでいるのでしょう。でも『今は見れない』を『どうやったら見れるようになるか』こういう視点で尾瀬は植物を見ていかなければ、この先お花を見たい人は尾瀬ではないどこかへ行くことになります。人が来なくなるという事は、山小屋も歩荷も自然保護も全てが行き届かない世界になってしまう事を意味します。
そんな事を檜枝岐村村長と話していたら、同じ事を考えてくれていた。本当に頼もしいリーダーだ。誰かが声をあげて立ち上がり、面倒臭いことに着手する。尾瀬にはこれが必要だと、良くなる未来を想像しながら、ギュッと握手を交わした。

一歩ずつ前に。

尾瀬小屋
工藤友弘

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