不便と便利は紙一重
記事を書いては寝落ちしてしまう日が続く。
食事をとって、部屋に戻ったらお風呂にも入らず寝てしまう。そんな3日目が過ぎました。
今日は今シーズン最も忙しい1日だった。
スタッフ全員が体力を使い果たしただろう。
良く頑張ってくれたと心から感謝しています。
本当に良く頑張った。
毎日本当にありがとう。
記事の内容は前後しますが、先日、小屋の水質検査を行いました。
飲食物を提供する山小屋は旅館業許可及び飲食店営業許可が必要となります。尾瀬小屋はそれにあたります。
主にシーズン中に必要となる検査にはこのようなものがあります。
↓
◾消防設備点検
◾消防訓練
◾通信点検
◾水質検査
◾建物設備点検
◾食品衛星検査
◾ガス点検
◾浄化槽点検
◾保健所立入検査
少し列挙してもこれくらいはあるのです。
ここは山岳地帯。都会のように車でブーンとは来れませんので検査機関の方々も、我々と同じように歩いて来るしか手段はありません。検査や作業に必要な道具も背負いながら、山のウェアを身にまとって来ますから、山小屋が営業出来ている裏側にこうした方々の協力があるという事も忘れてはいけない。
不定期ではあるが、郵便屋さんも来ます。
一週間か二週間に一度、福島県檜枝岐村の郵便局員さんが徒歩で郵便物を届けて下さったり、受け取って下さったりする。都会のようにバイクに乗った郵便屋さんはいない。
つまりは山では普通が普通じゃない事が沢山ある。
都会との圧倒的違いは時間と労力。
最寄りのコンビニ、スーパー、病院、3時間。
会社は5時間、家族に会おうと思えば8時間だ。
とにかく時間が本当にかかる。
この時間を私は【ロスタイム】と呼んでいる。
山にいる間に発生した大きなロスタイムを埋める為には、下山している間の時間を調整するしかない。
山小屋を手掛けて3年目ですが、一年の中でも山小屋経営は非常に時間を裂かれ大きなウェイトを占めます。
自分が往復6時間掛けて歩いている間に、世の中の人は6時間分歩く以外の時間に充てられている。
勉強なのか、仕事なのか、デートなのか、家族との時間なのか。それを半年間で考えると、何日分も人よりロスタイムがあることになる。単純に私はそれを大きなビハインドだと思っている。
昨年下山してから、今日まで仕事を休んだ日が5日程度しかない。これは偉いとか凄いとかの話ではなく、その様な考えで過ごさなければこのロスタイムは埋まらないくらい重要な時間であり、頑張らなくてはならない時間だと私は考えているからです。
時間は誰にでも平等で、1日24時間と決まっている。どう過ごすか、何をし、その日に何を得るかは非常に重要なこと。いつもと同じ流れ作業をしているだけでは間違いなく人間としての機能は停滞します。
皆がそういう事をすべきとは思わないし、
自分の時間の使い方が正しいとも思わないが、不便な環境を知っているからこそ、都会での過ごし方や時間の使い方をとても大事にしている。性格もあってか、常に何かをし続けていなければ落ち着かない。
不便をこれだけ味わいながら過ごしていると、便利な環境に身を置いた時に、ますます何でも出来る自信がわいてくるのだ。山小屋の不便さは人を成長させる。
どんなに忙しくても、お客様との会話を物凄く大切にしています。スタッフが休憩している間も、食事をとっている間も、お客様と話せる時間を優先しています。スタッフからしたら、早く戻ってこいと思われているかもしれないが、私はこの僅かな時間に全てをかけていると言っても過言じゃない。何故なら、この会話が来年も再来年も継続して尾瀬小屋に来る理由になるからだ。この三年で、どれだけのお客様と心を通わせたか分からない。何か特別な事をした訳じゃないけど、話した感覚みたいなもので、来年も来てくださるなと直感で感じたお客様はいまのところ100%再訪問してくださっている。これからもこのスタイルは変わらないだろう。
尾瀬小屋には登山者だけでなく、近隣の山小屋スタッフやビジターセンター職員、環境省、尾瀬林業職員など、多くの関係者が訪れます。ランチやカフェ利用など、顔馴染みの方が沢山いらっしゃいます。
美味しいものというのは、お客様だけでなく近隣の方々のエネルギーにもなってくれていると思うと私達はとても励みになります。
決して便利な事だけが贅沢ではなく、
こうして不便の中に少しの楽しみや息抜きを見つける事で、ネガティブはポジティブになる。
そう思わせてくれる、関係者たちにも感謝だ。
さぁ、不便を楽しもう。
尾瀬小屋
工藤友弘
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?