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【旅レポ】英国道中膝栗毛 ロンドン・ロンドン・ロンドン その⑦

前回 ↓

前回までのあらすじ;膀胱が爆発寸前だったお湯とマツジュンだったが、コーラを購入することで災難を逃れることが出来た。

その8「おいしい・新鮮な・寿司といえばギョーザ事件」

 旅程4日目の12月30日夕方。シティ・オブ・ロンドンに到着した僕たちはロンドン経済の中心地を散策していました。遠目に見える巨大タワーであるザ・シャードの大きさにおののきながら、僕は「なんだか雰囲気がNYのウォール街に似ているなあ」と思っていました。

 そこにロンドン現地の日本食屋であるWasabiというお店があり、ちょっと覗いてみることにしました。

 そこには、「おいしい・新鮮な・寿司」が陳列していました。

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 なるほど、たしかに寿司…じゃねーよこれ!!

(その8「おいしい・新鮮な・寿司といえばギョーザ事件」終わり)

その9「お湯の向かう先、絶対に工事中事件」

 ひと通り金融街を堪能した僕たちはレドンホール・マーケットに向かいます。シティ・オブ・ロンドンにある、ハリーポッターのロケ地にも使用されたオシャレな市場です。

 マツジュンは過払いして購入した魔法の杖を持って、ハリーポッター的な記念撮影が出来るとウキウキしていました。

 レドンホール・マーケットに到着すると、銀色の足場が市場中に組み上げられていました。僕は目を疑いました。工事中だったのです。

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 これまでの観光履歴において、

 ・バターシー発電所 ←工事中

 ・MI6本部 ←工事中

 ・ビッグ・ベン ←工事中

 ・レドンホール・マーケット ←工事中【NEW!!!】

 行く先行く先、あまりに工事している箇所が多いではありませんか。僕は、これまでの人生で訪れた旅行を思い出します。

 ・大学の見学のついでに寄った銀閣寺 ←工事中

 ・普通に見学に立ち寄った清水寺 ←工事中

 ・北海道で立ち寄った時計台 ←工事中 

 もちろん、好き好んで工事中の観光名所を巡っているわけではありません。しかし、どういうわけか僕の行く先々で工事が行われているのです。まるで乗った飛行機がたいがい墜落するジョセフ・ジョースターの気分です。

 ビッグ・ベンにいたっては100年に一度の改修工事です。果たして、偶然そんな時期に旅行をしてしまうなんてことがあるのでしょうか。

 もはや何者かに運命を操作されているとしか思えません。

 本来のレドンホール・マーケットの姿を見たかったですが、工事をしているのだから仕方ありません。足場の組まれた市場で記念撮影をし、僕たちはその場を後にしました。

 僕たちはその時、まだ知る由もありませんでした。後日訪れる場所もまた、工事中であるということに…。

(その9「お湯の向かう先、絶対に工事中事件」to be continued…)

その10「1日平均3万歩は歩くぞ事件」

 その後、再びテムズ川流域に向かって歩きました。そしてロンドン塔、遠目にロンドン市庁舎を見物し、ロンドン橋を渡り、当日チケットが取れるかわかりませんでしたがヨーロッパで最も入場料が高く、かつ展望高度の高い展望台ザ・シャードへ向かいます。

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 案の定、ザ・シャードは当日は登ることが出来ませんでしたが、行列整理のおじいちゃんから整理券? 的なチケットをもらい、「これを係員に見せれば安く登れるよ」と教えてもらい、また後日訪れることにして、その場を後にしました。

 もうすっかり日も暮れてしまったので、僕たちはホテルの移動を行うことにしました。電車を乗り継いでキングス・クロス駅を再び経由し、ラッセルスクエアに戻ってきました。

 ホステルで預けていた荷物を探すのに手間取ってしまいましたが、冷徹な眼差しのお姉さんは、このときばかりはなぜか少し笑顔で応対してくれて、僕はホッとしていました。

 そして再び地下鉄に乗り、アールズコートへ向かいました。

 アールズコート駅からしばらく歩くと、目的のホテルアイビス・アールズコートです。「映画けいおん!」で唯ちゃんたちが宿泊したホテルのモデルになった場所です。

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↑ 親の顔より見たホテル

 こちらもこちらでぶっきらぼうな受付のお兄さんの洗礼を受け(もう慣れました)、一日中移動した疲れを抱えて、僕たちは部屋に入りました。

 さて、ここでロンドンの土地勘のある方ならなんとなくわかってもらえると思うのですが、僕たちは観光名所を巡るために、相当な距離を徒歩で移動していることになります。

 その晩、iPhoneの万歩計を確認すると、なんと3万歩以上歩いている計算になりました。

 これには理由がありました。前の部で告白した通り、僕は観光名所に極めて興味のない男だったので、旅程はほとんどマツジュンが決めてくれていることになります。

 ここで問題になるのが、マツジュンという男は「人一倍活動的な男であった」ということです。問題と言うと語弊があるのですが、彼はとにかく予定を入れないと気がすまない男で、休日でも何かしら予定を入れては出かけたがる男でした。

 今回の旅行でもその活発性が遺憾なく発揮され、彼の計画した旅程はロンドンにある観光名所巡りで、ホステルで極小のゴミ箱にぶち込まれたスキーウェアのごとく、ギチギチになっていました。

 「このままでは1日平均3万歩も歩かされてしまう」

 と僕は戦慄しましたが、せっかくロンドンに来ているのだから効率的に観光名所を巡ることが出来るのはむしろいい側面もあるのではないか、と考えたこと、そして何より観光スポットをまったく把握していなかったので旅程に口出しできないという状況から、僕は今後の行程についてもほぼ口を挟むことはありませんでした。

 結果、ただひたすら歩きに歩いて移動をする旅路を、彼と過ごすことになるのです。

 そして、このひたすら歩いて移動したという記憶から、この旅レポのタイトルを英国道中膝栗毛(「膝栗毛」=「徒歩で旅行すること」)と銘打つことにしたのです。やっと、タイトルの伏線回収が出来ました。

(その10「1日平均3万歩は歩くぞ事件」終わり)

その11「お湯の体重、爆増事件」

 その夜はホテルにあったパブでフィッシュアンドチップスとローストポークなどをいただきました。たいへん美味しかったです。

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 そして旅程5日目の12月31日。いよいよ2019年も終わりの日に差し掛かりました。

 アールズコートのファーマシーでパウンドケーキとコカ・コーラバニラ(日本ではもう販売されていないが、お湯はコカ・コーラバニラが大好きで、海外で見かけると必ず飲むようにしている)とスニッカーズが飲料形式になったスニッカーズ・ドリンクという悪魔のような飲み物を購入し、ホテルで朝食を済ましました。

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 僕は旅の目的を「食と写真」に絞っているので、旅行中は好きなものを遠慮せずに食べるというのをモットーとしています。そして、これらの食生活からわかるとおり、帰国後に体重計に乗った結果、阿鼻叫喚の数値を叩き出す現実を突きつけられることになるのでした。

(その11「お湯の体重、爆増事件」終わり) 

その12「映画って楽しーねカバの転職先、発見事件」

 アールズコートのファーマシーで朝食を探しに出歩いている時に、MOVIXで一時期流れていた「映画って楽しいね〜」という曲を歌っていたカバが無機物と化して、遠く離れたロンドンの地で頑張って働いているのを発見しました。

↓ MOVIXのカバ 今回は青いカバが主人公となる

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↓ ロンドンで椅子として働いていたカバ

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(その12「映画って楽しーねカバの転職先、発見事件」終わり)

その13「お湯、グリニッジで置き去り事件」

 その日はマツジュンの導きで「映画けいおん!」の聖地を巡ったり、近くのワールドエンドの逆回転時計を見物したり、トラファルガー広場付近のSuperDry(極度乾燥しなさい)でショッピングを楽しんだりしました。

 午後からはマツジュンの「2019年最後の日という節目にどうしても世界標準時刻の場所で過ごしたい」というたっての希望で、電車を乗り継いでグリニッジに天文台に向かいました。

 天気はあいにくの曇りで、夕刻を迎える前にはもう薄暗くなっていました。電車に乗って移動中の16時ごろ、Twitterを見ていると「新年あけましておめでとう!!」というツイートがTLを占めました。時差があるのでロンドンでは夕方ですが、日本ではもう年明けを迎えたのです。

 なんだか置き去りにされた感覚を覚えながら、僕たちは片田舎のグリニッジに到着しました。

 マツジュンは焦っていました。年末時間で、グリニッジの博物館や展示の閉まる時間が早まっており、どこも閉まりかけていたからです。グリニッジ天文台もいつまで開いているかわかりません。

 マツジュンは持ち前の行動力を全開にして、先に先にと歩いていきます。僕は昨日3万歩も歩いた疲れと、うつで寝たきりになっていた体力の低下から、彼の歩くスピードに着いていくだけでやっとでした。汗を垂らしながらふぅふぅ息を切らして歩きました。

 いくつか展示が閉まっていることを確認すると、僕たちは最終目的地であるグリニッジ天文台へ急ぎました。

 しかし、グリニッジ天文台は天文台と名乗るだけのことはあって、小高い丘の上にありました。平地ではマツジュンのスピードについていけましたが、坂になると途端に僕の歩く速度は落ちました。懸命に右足、左足、と交互に踏み出すのですが、一向に進まないのです。

 もう無理だ、と思った僕は「先に行って開いてるかどうか確認してきてくれ、僕は後から行くから」とマツジュンを先行させることにしました。マツジュンは「わかった、じゃあ入り口で待っている」と言い、昨日と今日合わせて5万歩は歩いたであろうとは思えない快足で坂をずんずん登っていきました。

 僕はその場に置き去りにされるかたちで、自分のペースで坂を登ることになりました。

 僕はかたつむりが地面を這うような歩みでのろのろ時間をかけて坂を登りきり、なんとか頂上に到達することが出来ました。冬場用の厚着が汗ばんで、たいそう不快でした。

 随分マツジュンを待たせてしまったな、悪かったな、と思いながら、グリニッジ天文台見学コースの入口を発見しました。

 そこに待っているマツジュンの姿を発見…するはずでした。しかし、どこにも彼の姿はありませんでした。僕は動揺し、「あれ、待ち合わせ場所を間違えたかな」と、疲れた足を引きずって他の場所をしばらくうろうろしました。でも、他には該当の入り口的な場所を見つけることができませんでした。

 「どうしよう、いまだにマツジュンはどこか他の場所で僕を待っているかもしれない」

 「もしかして、待ちきれずに先に入ってしまったのだろうか」

 などの思いが頭をよぎります。

 しかしいずれにしても彼と出会えなければ連絡の取りようもありません(彼がWi-Fiを持っていたため)。僕は仕方なく、元の入口付近をうろうろすることにしました。すると、しばらくして下道からマツジュンが平気な顔をして姿を現し、「やあ、会えてよかった」などと言いながら近づいてきました。後から来た僕よりも遅れて来るとは、不可解でした。

 「待ち合わせ場所はここでよかったんだよね」

 「うん、そうだよ」

 「どこに行っていたんだ」

 「君が来るまでに先にお土産コーナーを見ていた」

 マツジュンは行動力のある男でした。しかし、その行動力にかまけて、倫理観を逸脱した行動を取ることのある男でもありました。

 「入り口で待っていると言ったじゃないか、土産コーナーなんて後でも行けるだろう」と僕は説教しました。

 そして、ただでさえ体力が低下して歩くスピードにもついていけないような病人で、おまけにネットが使えず連絡の取れない状態の男を放っぽりだして、約束した場所にいないというのは流石にどうかしている、どれほど僕が心配したか想像してみろ、と説教しました。

 マツジュンは想像力の乏しい男だったので、わかったんだかわかってないんだか、よくわかりませんでしたが、一応謝罪してくれましたし、僕もいつまでも怒っていても仕方がないので、とりあえず再開できた偶然に感謝し、二人で仲良くグリニッジ天文台を見学しました。

 考えや特性の違う二人が何日も一緒に行動するので、そのバイオリズムの違いから行き違いがあるのは当然のことです。ここをわかっているかわかっていないかで、誰かと旅することも快適性というのが、かなり変わってくるのではないか、と思った一件でした。

 それにしても、まさか日本の年明けに置き去りにされるだけでなく、ロンドンでも物理的に置き去りにされるとは思ってもいなかったので、びっくりしちゃいました。

(その13「お湯、グリニッジで置き去り事件」終わり)

 グリニッジを去った僕たちはインド料理屋でディナーを済まし、ロンドンアイの真ん前で行われるニューイヤー・ファイアワーク(新年に花火を打ち上げて大騒ぎするやつ)に備え、ホテルに戻りました。僕はもうヘトヘトで一刻も早く眠りたかったですが、そういうわけにもいきません。

 残る体力を振り絞って、夜のロンドンへと繰り出しました。次回、「マツジュン、お祭り会場で突如としてWake up , Girlsの楽曲を聴き込み出す事件」「旅行客、お湯たちの目の前で殴り合いのケンカをおっぱじめる事件」、「お湯、ジョジョ第三部のDio様になる事件」など。お楽しみに。

次回 ↓
https://note.com/oyulog08/n/nfb76ccbd521f




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