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ショートショート12『事故紹介・第2話』

第1話





ここは死者が集まる学校。

死後の世界には天国と地獄だけではなく、未練を残した死者が通う学校が存在する。学校には2種類あり、事故死者が集まる学校と事件死者が集まる学校がある。

事故と事件以外の死因の場合は学校を経由せず裁判にかけられる。だが、極稀に、事故と事件以外の死因でも未練が大きい場合は学校に通えるようになるケースがあるらしい。



「櫻木、次の教室にいくぞ」

川中だ。この学校に来てから一番仲が良くなったクラスメイトである。年齢は自分が40、彼が30であるが、生まれ年がお互い1980年だったこともあり、タメで話す仲となっている。

この学校は本来、生前の未練を晴らす為の学校であるが、行っていることは学校そのもの。国語や算数、理科や社会、図工に音楽など、小学生の頃におこなっていた授業をやる。

これで未練を晴らせるのかと入学当初は疑問に思っていたが、案外楽しい。授業を楽しみながら、次の授業を楽しみにしているのが当たり前だし、他の人もそうだろう。

だからなのか、この死後学校には放課後がない。1限や2限という枠組みも無ければ、時間割も存在しない。50分授業をおこない、10分休み時間、そして次の授業へ。これが繰り返されるだけである。


「それでは、図工の授業を始めたいと思います」

授業はすべて、小野先生がおこなう。国語や算数は勿論、体育や図工、音楽なども行っている。というか、死後の学校の管理自体を任されている為、校長や学年主任などの役割も兼任している。


「川中、ペアになろう」

今回の図工の授業は2人一組になって互いの顔を描くものだった。年齢や生年がバラバラだったが、各々がペアを組み、みんな楽しそうに授業を受けている。

30分ぐらいの時間が経ち、お互い絵を見せあった。

「もっとカッコよく描けよ」

「お前も、鼻の位置がおかしすぎる」

笑いながら、お互いの絵を批判し合った。まるで小学生の頃にタイムリープしたようなそんな気分になった。楽しい。


「キーンコーンカーンコーン」

授業終了のチャイムがなり、図工の時間が終わった。元の教室へ移動し、自分の席につく。

10分の休み時間では、話したり、読書したり、走り回ったりと20を超えた成人が多いハズなのに、空気は小学生色に染まっていた。


10分経ち、予鈴がなった。それと同時に小野先生が教室に入ってきた。その後ろには高校生らしき人が立っていたのがわかった。

「それでは、自己紹介を」

「はじめまして....や..や....山本です。死因は......自殺です。よ..よろしくお願いします」


クラスの誰もが彼を見つめた。事故死した人しか集まらない学校、クラスに、自殺した人が来たのだ。

山本君がこのクラスに加わってから、少しずつ学校生活が変わっていった。





〜続〜


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