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小説「光の物語」第8話 〜婚礼 4〜

アルメリーアは寝室の窓のそばに佇んでいた。
金色の長い髪を腰までたらし、やわらかな白い夜着に身をつつんだ姿にディアルは胸を高鳴らせた。
ドアを開けた彼に彼女は笑顔を見せたが、その顔には少なからず緊張の色も見てとれた。

彼女に歩み寄り、並んで窓のそばに立つ。空には春の星が瞬いていた。
「長い一日でしたね。疲れたでしょう」
「いいえ、それほどでも・・・ディアル様こそ」
「あなたの近くで疲れなど感じませんよ」
彼の体から発する熱は彼女にも届き、二人は無言で見つめあう。
慣れ親しんだすべてから離れ、星明かりに照らされている彼女を見て、彼は己の心に従うことを決めた。

「アルメリーア・・・」ディアルは彼女の両手を取った。「私たちの結婚は国同士のものではあるが、私はそれだけにはしたくない。私はあなたを愛したい。王子としてではなく一人の男として」目を見開いた彼女に彼は続けた。「過ぎた望みだろうか」

あまりにまっすぐな言葉に彼女はしばし逡巡していたが、やがて彼の手をそっと握りかえした。
「国のために嫁ぐのが役割と知りつつ、私は思っておりました。できることなら夫になる方を心からお慕いしたいと・・・あなたとなら、その願いは叶いそうですわ」

姫の言葉を聞いたディアルは微笑み、彼女の両手に口付けた。
それからアルメリーアの背中に腕を回して優しく抱き寄せると、彼女の額にそっとキスをする。
「アルメリーア・・・」彼女の額に額をつけ、低い声で囁く。「ずっとあなたを抱きしめたかった」

彼女ははじめのうち身をかたくしていたが、やがておずおずと彼の背に華奢な腕を回した。互いの体温が溶け合い、早い鼓動がどちらのものかわからなくなる。二人は無言のままやさしく抱き合い、ため息をついた。

「とても・・・素敵だわ」ささやいた彼女に彼は優しく唇を重ねた。彼は彼女の体から力が抜け、彼の抱擁に身を預けるようになるまで、優しいキスを繰り返した。

やがて顔をあげ、彼女を抱き上げて寝台へと運んだ。横たえた彼女に覆いかぶさり、うっすらと上気した顔を見つめる。赤く濡れた彼女の唇に、彼はそっと指を這わせた。「多分、とっくに知っていると思うが・・・」
「なにを・・・?」夢見心地のまま彼女はこたえる。燭台にともった蝋燭が彼の顔に陰影を作り出し、彼女を見つめる瞳にやわらかな光を投げかけていた。
「初めて会った時からあなたに夢中だ」そうして、それまでよりいっそう長く深いキスをするのだった。


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春 1につづく

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