村上春樹『ノルウェイの森』における死と性
『ノルウェイの森』は、村上春樹作品には珍しく、テーマが明言されていて、しかも非常にうまくストーリーを収斂させている。
「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」
序盤と終盤の2度、この「教訓」を記している。
その言葉を例証するがごとく、登場人物の多くが、整然と死を受け入れる(自殺する)。キズキは車のワイパーに領収書を挟んで死に、直子は洋服の始末についての短いメモを残して森に消え、ハツミさんは「ふと思いついたように」生命を絶った。
キズキと直子の死の理由について