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ぼくの本棚

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心震わせられた一文から。読書の足跡。
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#夏目漱石

【読書】 二百十日 夏目漱石

【読書】 二百十日 夏目漱石

 読書にも色々と種類があると思う。その中には、読めば読めほど、作者の輪郭がぼやけ、違った扉の前に立たされるような作品と作者がある。

 「二百十日」は社会の一遍を切り取った作品だ。樋口一葉が「にごりえ」で、尾崎紅葉が「金色夜叉」で……。その他、同時代を生きた作家たちが、万華鏡のように様々な景色を見せてくれる。

 ただ、小説がぼかして書いた世界をああでもない、こうでもないと読み取るより、物語を物語

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【読書】 硝子戸の中 夏目漱石

【読書】 硝子戸の中 夏目漱石

彼女はその美しいものを宝石の如く大事に永久彼女の胸の奥に抱きしめていたがった。不幸にして、その美しいものは取も直さず彼女を死以上に苦しめる手傷その物であった。二つの物は紙の裏表の如く到底引き離せないのである。

 一人の人の中に在るもの。こころ。それをどこまでも突き詰めていったらどうなるのか。文学者として、また一人間として、向き合った漱石の考えが詰まった一冊です。生きとし生けるものが必ず人生のどこ

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