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『雇用就農という選択』〜チーム農業で稼ぐ道!〜

都内の農園で正社員として雇用就農してから3年目、アルバイトを含めれば6年目になる。近頃、東京での新規就農者が増加傾向にあり、さらに後を追うように新規就農を志す人も増えている。

しかし、私などが言うまでもなく今後の東京での新規就農は生計を立てていくことのハードルが極めて高い。この辺りの話は本題ではない為、別の記事でまとめようと思うが、今回は東京で雇用就農したからこそ話せる、雇用就農のメリットを簡単にまとめていきたい。

メリットは山程あるが、今回は大きく分けて5つ。これらはあくまでも東京の場合、ということを念頭に読んでいただきたい。

①安定的な給料
通常、野菜の価格は全国の市場の需要供給に左右され、既存農家でも売上を目標通りに出すことは難しい。例え美味しく、見た目も美しい野菜を栽培できたとしても需要供給のバランスによって売上は左右され大きな影響を受ける。高騰が続く資材費など必要経費にも影響される。結果的に手元に残ったものが年収となるが、雇用就農は就農時から毎月給料を貰いながら勤務できる。ちなみに具体的な金額は差し控えるが、私は一般企業の同世代と変わらない給料を貰いながら働いており、その点精神的な負担は小さく、モチベーションは大きく働けていると感じる。企業と同じように売上によってのボーナスの変動もある。

②休みが取れる
 地域や季節によって全国的に休み方に差は大きいが、東京農業界の経営者は休みが年中ほぼないと言ってもいい。労働時間は肌感覚として10時間〜12時間、毎日働く。それでも仕事が全て綺麗に片付くタイミングは来ない。酷暑の夏も、寒波の冬も。
 一方、私が所属する農園は完全週休2日制、夏休み冬休みをそれぞれ1週間程度取りみんな旅行へ出かける。有給休暇もある。休みをみんなでずらしながら年間の仕事をみんなで繋いでいく感覚だ。勿論、仕事柄天候を見ながら業務に当たるため野菜の生育状況によってや雨が続いたり台風が来れば予定は乱れるが、基本的にはシフト制を採用しておりプライベートの時間が農業にしては非常に取りやすい。働く時間を決めない働き方より、終わる時間が決められているシフト制は時間の意識を持ち続けるため作業効率が高く、個人的には時代に合っていると思う。

③考えることが少ない
新規就農者は考えること、やることがが多い。これは畑の上だけの話ではない。分かりやすい部分で言えば土地の管理、栽培計画、調整管理、出荷管理、生産管理、経理、車や機械メンテナンス、書類提出、買い出し、その他まだまだ沢山ある。これを1つの頭と体で順序よく、納期までに。
一方、私たち雇用就農者が関与するのは主に畑での栽培管理、収穫、調整、出荷、せいぜいその辺り。しかもそれをさらに役割分担するので一人当たりにおいては考えることはもっと少なくて済むので今まさに必要な目の前の仕事に全力で向き合える。

④得意な作業を分担できる
これは③から繋がる話だが、私達は仕事をチームの中で役割分担してそれぞれが得意な作業を進めている。たとえば細かい作業が得意な人は作業場で調整を、パワーのある人は畑で力仕事をするという流れだ。ひとりで場所を移動しながら全ての作業を少しずつ進めるより、その場所に留まり得意な作業だけを一気に進めたほうが効率は良い。同じ作業の繰り返しの中でスピードはどんどん速くなるし、見つけられた新しい工夫や考え方をすぐに他のスタッフに共有できるメリットもある。

⑤人のカバーに入れる 
 誰かの体調不良や機械故障などで急に忙しくなるタイミングがある。これは誰にでもあることだが、野菜の成長は待ってくれない。発注が決まっていれば納期も待ってくれない。体調を崩して仕事ができず、復帰したあとも溜め込んだ畑仕事に追われるということを耳にすることがある。野菜は工業製品的な在庫ではないため、畑の上で価値がなくなればもうそれがお金になることはない。
 雇用就農は急なトラブルでも互いに空いた穴をカバーしながら仕事を進めるので最悪の事態になる、というのは回避しやすい。実際、昨年度はみんなして体調不良リレーのような時期があったが仕事は互いの協力で回すことができた。こういった精神的な圧もひとり農業とチーム農業では全然違ってくる。

以上5点を紹介した。


 これからの東京で、農業という仕事をより簡潔に、より楽に、より稼ぐには、私は雇用就農も勧めていきたい。個人ではなく東京農業全体の金銭的、技術的な利益の向上にも雇用就農は良い方向に向くと思う。
 新規就農を志す人の中に何か迷いや不安があれば、ぜひ雇用就農という選択肢もあり、それは今の生活や未来の理想とする暮らしに負担の少ない道であることを伝えていきたいと思う。




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