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文法学習:悩むか、後で修正するか

文法学習のお話です。持田のnoteでは何度かお話ししていることですが、文法の学習方法に万人の共通のものはありません。ほぼ理屈抜きに覚えて使いこなせる人もいます。こういう人は人から教わらなくても、なかば無意識的に背後にある理屈を感じとることができる人です。逆に過剰なくらいに細かいところが気になって仕方がなく、ひとつひとつ納得しないと覚えられないという人もいます。実際にはこれらの両極のあいだのどこかに多くの学習者が当てはまります。

母語話者が使っている文法知識はふたつの層で成り立っています。ひとつは生まれてから周囲の環境と関わっていくうちに自然に身につけた知識の層、もう一つが主に書きことばのために学校で教わる知識の層です。外国語学習者が難しいと感じるのは前者です。こうした文法知識を「わかりやすく」解説している学習書もあります。わかりやすいのはありがたいと思う人が多いでしょうが、この「わかりやすさ」には注意が必要です。たとえば英文法を学んでいる場合、その解説がその時学んでいる文法現象のすべてに当てはまるのかどうか、という問題があります。もちろん頻度が極端に低く現代英語で滅多に使わないものは除外してもよいでしょう。ところが比較的頻度の高い現象を取りこぼしている解説も実際には少なくありません。

ぱっとわかる式の英文法は、英文法を学ぶときに多くの学習者が直面する「躓き」や「悩み」をいったん先送りにする効果があります。これ自体は悪いことではありません。とりあえず仮に覚えた文法知識を実際に使う経験をすることが学習が前進することも無視できないからです。しかし、頭の良い学習者はそうした本の記述の矛盾に気づいてしまいますし、逆に基礎が覚束ない自覚がある学習者の場合は、本の筆者が「ぱっとわかる」つもりで書いたことがそもそも理解できないこともよくあります。持田が20年以上前に、この手の「わかりやすい」英文法を参考に教えていたときに、もっと手前の基礎を解かなければいけない生徒もいるのだな、と実感したのを今でも覚えています。それであれば、事実を直接並べて、今すぐ悩みながら理解していくのも、悪くないのではないかと思うのです。

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