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改めて、文法学習の目的について

前回は言語規範についてお話ししましたが、今回は文法を学ぶ目的についてさらに掘り下げていきます。

ひとことで言えば、文法とは方略です。方略とは、自分の言いたいことを正確に、かつ効果的に伝えるため、あるいは相手の言っていることを正確に、かつ効果的に読み取るための、意識的あるいは無意識的な技術(やりくり)です。

片言のことばでのやりとりは、「伝わればいいな」という願望と、「伝えたい」という熱意と、「聞きとりたい」という誠意で成り立っています。しかしながら、そうした思いがあっても伝わらないこともあります。コミュニケーションは誤解が必然だとも言われます。普通にやっていれば多かれ少なかれ誤解が生じるものです。しかし、社会生活の中でことばを使っていくには誤解を極力避けなければなりません。そこで必要なのは方略としての文法なのです。

外国語学習ではもちろん文法学習が必要ですが、母語もまた、文法によってその能力を高めていくべきです。日常会話はことばの断片によるやりとりで行われます。親しい人と会話であればあるほど、ことばは断片化します。このことは「文」に拘りすぎると日常会話に支障が出るという外国語学習への示唆になると同時に、母語においては「文」のレベルでのコミュニケーションができないと社会生活に支障が出るという示唆も得られます。

日本語を母語とする人は、日本語の文というものを意識することが必要です。そして、その文構造が英語の文構造と比べて、どこが同じでどこが違うのかを考えることで、英文法学習の基盤も築かれていきます。そしてこうした意識を(知識も)もってコミュニケーションを実践することで、文法は方略として機能するようになるのです。

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