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言語知識を学ぶ時の注意点

学び手の注意点

今回は言語知識を学ぶ時の注意点、というか、要注意の学習者タイプについてのお話です。

以前から持田のnoteで何度もお話ししてきたことですが、学習者には文法などの言語知識を片っ端から丸暗記しているにもかかわらず、その丸暗記の過程で直感的にことばのしくみに気づき、ことばをうまく使いこなせるタイプの学習者と、何でも一つ一つ理屈で理解しなければ頭に入らないタイプの学習者が両極にいます。後者のタイプの学習者は極端な場合、原理を「完璧に」理解するまで、言語知識を覚えようとしない、あるいは使おうとしない人もいます。これは残念ながらことばを学んで使いこなすには不利であると言わざるを得ません。

ことばのしくみの完全理解ができたら、世界中の言語学者が失業します。言語研究を生業にしているのでない一般の学習者がそこにこだわるのには無理があります。一方でことばを使うにはことばを記憶に定着させなければなりません。丸暗記だろうが分析的な方法をとろうがそれらはすべてことばを記憶に定着させる手段に過ぎません。ことばを分析的に捉えること自体は程度の差こそあれ多くの学習者に必要なことです。しかし同時に「とりあえず丸暗記」を容認することも大切なことです。とりあえず覚えて、とりあえず使っていくうちに、それまで気づかなかったことに気づくこともあります。その過程でその学習者の「もやもや」が解説していくこともあるでしょう。

教え手の注意点

教師の役割としては、研究者の間でも明らかでないことについては、時にそのことを率直に学習者に伝え、丸暗記するよりほかないということをはっきり言うことが必要です。あるいは「とりあえず、このように捉えておけば、使うぶんには困らない」のような言い方をすることも必要でしょう。もちろん、教師の不勉強を隠蔽するために「これは決まりだ、覚えろ」と言うのでは上記のタイプの学習者は途方に暮れ、その教師への不信感、あるいは失望感を抱くことになるでしょう。教師がある程度の知識を身につけ、説明不能な事実や、説明には多くの手数を必要とする事実を見極め、適切に対応していくことが求められます

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