題名読書感想文:30 題名から見る一流エリート
本の題名だけを読んで読書感想文を書くという暴挙こそが「題名読書感想文」でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
今回のテーマは「一流のエリート」です。
世の中にはビジネス書というジャンルがございます。ビジネス、つまり仕事をする人が読んで役立てられる知識が詰まった本でございまして、多くの社会人の利益に直結しやすいためか、本の中では有数の人気ジャンルとなっています。
そんな本の題名を見ていると、ある傾向が見えてきます。それは「読んだ人が一流のエリートに近づけるような本ですよ」と訴えている点です。「なぜ一流の人は〇〇なのか」みたいに「一流はこうしている」「エリートはこうしている」と題名から主張しているわけです。
人間、仕事をするからにはうまくやっていきたい。そのうまくやっていった先の、分かりやすい終着点が「一流のエリート」なのかもしれません。とにかく、そういう題名の本が多いなあと常々感じていたんです。
しかし、ここで疑問が浮かびます。「一流のエリート」とはどんな人を指すのでしょうか。よくよく考えれば「一流」も「エリート」もそこまで定義がハッキリしていません。一流かどうか、エリートかどうかの明確な境界線がありそうで実はないんです。少なくとも私にはそう見えました。
そこで思ったんです。先ほど書いた、「なぜ一流の人は〇〇なのか」みたいな題名をかき集めれば、一流エリートの輪郭が少しはハッキリしてくるのではないかと。というわけで、その手の題名の本を軽く80弱集めまして、一流エリートがどういうものなのかを空振り覚悟で調べてみました。
集めた一流エリート本は主に4つのジャンル「性質・特徴」「行動・習慣」「外見・健康」「学問・芸術」に分けられましたので、順番に見ていくことで、一流エリートがどんな人なのか迫ってみたいと思います。
1.性質・特徴
ここでは一流エリートの性質について触れている題名を紹介します。まず言えるのは、一流エリートはとにかくタフということです。
「なぜ超一流の人は打たれ強いのか」
「ハーバードのエリートは、なぜプレッシャーに強いのか?」
「なぜ一流の人はストレスが溜まらないのか」
「なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?」
「なぜ、一流の人は『疲れ』を翌日に持ち越さないのか」
「なぜ、一流の人は『集中力』が1日中続くのか?」
「なぜ、一流の人はここ一番で脳が冴えるのか?」
打たれ強くてプレッシャーにも強い。ストレスは溜まらないし、ハードワークでも心は疲れない。だから疲れを翌日に持ち越さない。それでいて1日中集中力が続くし、ここ一番で脳が冴える。すごいです。タフの中のタフです。
これなら一流エリートになりますね、とは思いますけれども、そういう人だから一流エリートになったんじゃないかという気もします。因果関係が逆なわけですね。
精神面で具体的な言及をしている題名もあります。
「なぜ、一流になる人は『根拠なき自信』を持っているのか?」
「なぜ、一流の人は『ポジティブ思考』をしないのか?」
根拠なき自信を持っているかと思えば、ポジティブ思考をしない。一見すると矛盾しているようにも見える、禅問答を彷彿とさせる2冊です。ひょっとすると根拠なき自信はポジティブではないのかもしれませんね。理由はよく分かりませんけれども、それが一流エリートなのでしょう。
これだけでも優秀さが嫌というほど分かります。私でさえ分かるんだから、一流エリートの同僚となればもっと分かるに違いありません。当然の帰結として、やっかみが出てくる。
「一流の人は、なぜ『傲慢』なのか?」
「嫌われる男こそ一流」
出来る人は出来るゆえに、傲慢に見えることがあれば、嫌われる時もある。一流エリートともなれば特にそうでしょう。でも、そんなものは上等だと言えるようにならなければ一流エリート街道は邁進できないのでしょう。
2.行動・習慣
一流エリートは行動や習慣にも一流エリート感が出ているのでしょう。その手の題名もまた結構な数出てきます。
「一流の人はなぜそこまで、習慣にこだわるのか?」
「世界を動かすエリートはなぜ、この『フレームワーク』を使うのか?」
「なぜ一流は『その時間』を作り出せるのか」
当然、一流エリートは習慣にこだわるわけです。そこで活用するのがフレームワークのようです。フレームワークとは物事を考える上での枠組みとのことで、一流エリートともなれば、その中でも効果的なものを選ぶのでしょう。その結果として、忙しい中でも時間を作り出すという、時空を操るような芸当も出来てしまう。そういうことなんだと思います。
一流エリートは習慣にこだわるわけですから、話し方もこだわりの範囲内なわけです。
「一流の人はなぜモノの言い方にこだわるのか?」
「一流の人はなぜそこまで、雑談にこだわるのか?」
「一流は、なぜシンプルな英単語で話すのか」
「なぜ一流の人は謝るのがうまいのか」
言い方にこだわるから雑談だって手を抜きませんし、英会話ではシンプルな英単語を積極的に選び抜きます。謝る時だって「アイムソーリー」くらいのシンプル英単語で場を収められるに違いありません。
話し方だけでなく声もちゃんとするのが一流エリートなんです。
「一流の人は、なぜ話し方よりも『声』を大切にするのか」
「年収の9割は声で決まる! なぜ、『一流の人』は、みんな『いい声』をしているのか?」
年収の9割が決まってしまうというから油断できません。そういうところまで気を配ってこその一流エリートなわけなんです。
メモの類だってこだわります。
「超一流の手帳はなぜ空白が多いのか?」
「一流の人はなぜ、A3ノートを使うのか?:すべてを“紙1枚”にまとめる仕事術」
A3ノートを使ってるから手帳に空白が多いのでしょうか。それともA3ノートを使い、すべてを紙1枚にまとめたにもかかわらず、まだ空白が多いという驚異の圧縮術を使いこなしているのでしょうか。謎が多いですが、こういうのは中を確認すれば万事解決するはずです。気になった方はどうぞ。
待ち合わせだって手を抜きません。
「できる人はなぜ、本屋で待ち合わせをするのか?」
「成功する人は、なぜリッツ・カールトンで打ち合わせするのか?~あなたを超一流にする40の絶対ルール~」
本屋で待ち合わせして、リッツ・カールトンで打ち合わせをする。これが一流エリートの黄金ルールのようです。つまり、リッツ・カールトン近くの本屋は一流エリートが集まるスポットということになります。
移動にも並々ならぬこだわりを見せるのが一流エリートのようです。
「なぜ、一流になる男は軽自動車を買わないのか」
「なぜ、一流は歩きながら仕事をするのか?」
「世界のエリートはなぜ歩きながら本を読むのか?」
「一流になりたければ2駅前で降りなさい」
軽自動車に乗るくらいなら歩く。そうすれば移動中に仕事ができるし、本も読める。それが一流エリートの発想のようです。
何なら、2駅前からそれをやるのが一流エリート。新幹線で東京から新大阪に行きたい場合は米原で降りる必要があるわけです。「まさかそれはやらないだろう」とも思うんですが、不可能を可能にするのが一流エリート、仕事と読書を同時並行しながら、琵琶湖沿岸を歩き続け、京都を通過して大阪まで踏破しているのかもしれません。
もちろん、整理整頓にもこだわります。
「超一流は、なぜ、デスクがキレイなのか?」
「なぜ、一流の人のデスクはキレイなのか? 片づけが9割」
デスクは綺麗であるべき。これが一流エリートの考え方です。
やっぱりと言うべきか、ゴルフもたしなんでおくのが一流エリートのようです。
「一流の営業マンはなぜお客様から何度もゴルフに誘われるのか」
「ゴルフがビジネスの成功につながる理由 または成功した経営者はなぜゴルフを愛するのか」
「なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?」
「仕事する時間あるのか?」というのは二流凡人の発想なんでしょう。一流エリートにとってゴルフは仕事同然、新たなビジネスが生まれる場でもあるわけです。
サウナにも行く。それが一流エリートです。
「医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?」
「人生を変えるサウナ術 なぜ、一流の経営者はサウナに行くのか?」
仕事の合間にサウナへ行く。それによってタフな身体を維持する。一流エリートの習慣に隙はありません。
もはや常識ですが、スピリチュアルな方面にもこだわってこそ一流エリートなんです。
「世界のエリートはなぜ次々とチャンスをつかむのか?」
「これからのビジネスエリートは「見えない力」を味方にする」
「世界のエリートはなぜ瞑想をするのか」
「なぜ、一流の人はご先祖さまを大切にするのか?」
一流エリートが次々とチャンスを掴む理由が分かるかのようです。何しろ見えない力を味方につけているわけで、そのためならば瞑想にも勤しみますし、ご先祖様だって大切にするわけです。バックにご先祖様はもちろん、何だか分からない超自然的なパワーも持ち合わせている。
一流エリートは様々な習慣をこわだりまくった結果、様々な力を手中に収めているわけです。
3.外見・健康
外見や健康は仕事バリバリの一流エリートとは少し距離があると思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、意外にも書籍数としては最も多いジャンルとなっています。
「外見で人を判断するなんて」と言いながらも、外見は人を判断する重要なポイントとなりえるのは事実です。ナイフを持って暴れている人からはみんな一目散に逃げるところからも、それがうかがえます。一流エリートもまた、それはよく心得ているようです。
「男の年収は『見た目』で決まる――なぜ、一流の人は『顔色』が良いのか?」
「一流の人はなぜそこまで、見た目にこだわるのか?」
見た目をこだわるのは一流エリートにとっては常識なのでしょう。そのこだわりは細部にまで及びます。
「なぜ一流の男の腹は出ていないのか?」
「超図解!なぜ一流の男の腹は凹んでいるのか?」
「一流の人はなぜ姿勢が美しいのか―日本人が八〇〇年伝え継いだ本物の礼法」
「なぜ、ビジネスエリートには、猫背の人がいないのか?」
「なぜ、一流の男は肌を整えるのか?」
「一流の男はなぜ爪を手入れするのか?」
お腹が平らなのは当たり前、姿勢もちゃんとしていなければなりませんし、綺麗な肌は常に維持、爪も清潔に保っておくのが一流エリートでございます。バリバリ仕事をこなした上でこれなんです。
一流エリートが特に重視されているところかふたつあります。ひとつは歯です。
「『歯』を整えるだけで人生は変わる 世界のビジネスエリートが成功するために必ずやっていること」
「東京医科歯科大学を首席卒業した名医が教える 世界の一流はなぜ歯に気をつかうのか 科学的に正しい歯のケア方法」
「一流の人の歯は、なぜ白いのか?」
もうひとつはにおいです。
「なぜ一流の男は匂いまでマネジメントするのか?」
「香り×脳科学で仕事はうまくいく! 一流ビジネスマンはなぜ、くさくないのか?」
「なぜ一流の男は匂いまでマネジメントするのか?」
歯は笑った時に一番目立つところですし、においは場合によっては外見よりも幻滅される危険性があります。どちらも仕事に大きく影響する可能性がある。そんなところは一流エリートならば事前にケアしておくのが戦略の一環となっているんです。相手の顔が映るほどの白い歯と、バラの香りと間違えるほどの体臭を携えてこその一流エリートなんです。
服飾にも神経をとがらせるのが一流エリートでございます。
「なぜ一流の人はみな「着こなし」にこだわるのか?」
「一流の男はなぜハンカチを2枚持つのか」
特にこだわっているのが靴です。靴の大切さを一流エリートは誰よりも知っているんです。
「一流はなぜ『シューズ』にこだわるのか」
「一流の人はなぜそこまで、靴にこだわるのか?」
「超一流は、なぜ、靴磨きを欠かさないのか?」
「なぜ一流の経営者は靴をそろえるのか?」
確かに、靴がボロボロだと「この人、大丈夫かな」感が出る気はします。トップスやボトムスに比べて目立ちにくいからこそ、手を抜いてる印象が強く出てしまうのかもしれません。
健康に気をつけるなんて、一流エリートにとっては常識以前の話です。
「一流の人はなぜそこまで、コンディションにこだわるのか?」
「一流の人はなぜ風邪をひかないのか?」
「馬鹿は風邪をひかない」なんて時代遅れもいいとこです。今はもう風邪をひかないのは一流エリートと相場が決まっています。
健康に気をつける上で気を配るところと言えば食事です。
「超一流は、なぜ、食事にこだわるのか?」
「なぜ、一流は飲み物にこだわるのか?」
睡眠だって重要視するのが一流エリートです。
「なぜ一流の人はみな『眠り』にこだわるのか?」
「一流の人は、なぜ眠りが深いのか?」
そうやって、常に身体のことを考えた結果でしょうか。タフな上に精力も強いようなんです、一流エリートは。
「なぜ一流の男は精力が強いのか? 男性ホルモン力を上げれば人生が変わる」
身体に気を遣った結果が、男性は精力という形で現れるのならば、女性はどのような形で現れるのでしょうか。該当するような題名の本が発見できなかったので、今回は残念ながら謎のままです。
4.学問・芸術
一流エリートは仕事のことだけ把握していればいいわけではないようです。広い知識や深い教養を常に仕入れておく必要がある。それによってビジネスのアイデアに繋がったり、知性溢れる会話で相手の信用を勝ち取ったりするようなんです。
では何を学ぶのか、というところなんです。
「なぜ一流ほど歴史を学ぶのか」
「世界のエリートはなぜ哲学を学ぶのか」
なぜか今回の調査では人文科学系に偏ってしまいましたけれども、もっと本腰を入れて調べれば、自然科学系の教養もキッチリ仕入れる一流エリートの一面を垣間見れるんだと思います。
芸術方面なんてもう学んで当たり前の状態のようです。
「世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること」
「なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?」
「世界のビジネスエリートが知っている 教養としての茶道」
「世界のビジネスエリートを唸らせる 教養としての書道」
洋の東西を問わず芸術には触れておく。それが一流エリートのスタイルなのでしょう。
中でも重視されているのが落語やコメディの類です。
「ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語」
「ビジネスエリートは、なぜ落語を聴くのか?」
「一流の人はなぜ落語を聞くのか」
「なぜ一流の経営者は即興コメディを学ぶのか?」
この落語の重視っぷりは何なんでしょうか。「時そば」または「時うどん」でそんな有利にビジネスを進められるものなんでしょうか。「頭山」みたいな訳の分からない噺から生まれたビジネスがどういうものか、個人的にはものすごく気になります。
5.まとめ・番外編
以上の題名から、一流エリートの姿がおぼろげながら現れてきました。
まずとにかくタフです。ストレスやプレッシャーに強く、疲れを持ち越さない。しかも、集中力が常にバッキバキで、更にここ一番で脳が冴えわたる。ポジティブ思考には頼らないけど、根拠なき自信は持っている。傲慢で嫌われもするけど、それを良しとして頑張っている。
そして、習慣にこだわります。いい考えを用いて、忙しい中でも時間を作り出す。話し方は雑談から謝罪まで手を抜きませんし、英単語だって短いものを選ぶ。声にも気を遣っています。手帳には空白が多く、A3ノートを使い、本屋で待ち合わせてリッツ・カールトンで打ち合わせをする。軽自動車は買わず、歩きながら仕事も読書もする。そのためなら2駅前で降りる。デスクはとにかく綺麗ですし、ゴルフに行けばサウナにも行く。瞑想もするし、ご先祖さまも大切にする。その結果として、見えない力を味方につけ、チャンスをものにできるシステムが構築されているわけです。
外見や健康も重視します。お腹はへこませ、姿勢は美しく。肌も爪も手入れを欠かさない。歯は鏡のように輝かしい白さを誇り、体臭はバラよりもかぐわしい。服はもちろん気を遣い、ハンカチは常に2枚持ち、靴は誰よりも重視します。綺麗に磨くし、揃えて置いたりもする。体調は常に注視していますから、風邪知らずの毎日です。その一環として食事や睡眠にこだわり、男性ならば精力は当たり前のように旺盛です。
教養を深めるため、学問や芸術には日常的に触れ続けています。歴史や哲学はマストと言っていい。国や地域を問わずアートの鑑賞も必須です。何より重視しているのが落語、それから即興コメディもかじります。
これが一流エリートの姿です。本当にそうなんでしょうか。自分でやっておきながら、分からなくなってきました。何なら、こんな人類が地球上に存在しているのかどうかも自信が持てません。
ちなみに、ちょっと異なった視点から一流エリートについて語った題名がふたつございます。
「世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ」
一流エリートはミネルバ大学に入りたがっているようなんです。ミネルバ大学は特定のキャンパスを持っておらず、学生は4年間で世界7都市に移り住みながらオンラインで授業を受けるシステムになっているようです。
ウィキペディアでは凄さがイマイチ分かりませんが、何しろ一流エリートが入りたい大学なんです。きっといろんなアカデミックがハイパーなことになってるんでしょう。
最後に気になる題名をひとつ。
「劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか」
これだけいろいろやって、三流に牛耳られる。それが一流エリートの姿だというのでしょうか。そんな立場を世のビジネスマンは目指しているんでしょうか。
いや、そんなことはありません。何しろ、一流エリートです。タフの中のタフであり、いい仕事をするためにあらゆる習慣をこだわり、外見も健康も向上し続け、知識も教養も取り入れ続ける。そんな一流エリートが負けるはずがありません。是非とも牛耳る三流を打ち破り、逆に三流を牛耳るようになってほしいです。
よく分からないうちに一流エリートの肩を持ったところで、今回は以上となります。こんな感想文で大変恐縮ではございますが、お楽しみいただけたのならば幸いです。
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