この広告のレースをデザインした人は…(後編)
「このレースをデザインした人の名前を私は知っている」と書いたところできのうは終わりました。
なぜ知ってるかというと、これの編図を持っているからです。そこに名前が書いてあったんです。
上のような広告の隅には、決まってこんなことが印刷してあります。
本によっては「年齢・職業を明記の上」と書いてあるのもありました。これは一種の市場調査を兼ねていたようです。この頃はまだ、個人情報の取り扱いが今ほどやかましくなかったんですね。
これに申し込んだら、ちゃんと編図が送られてきました(オリムパスさん、ありがとうございます)。この記事を書くために探し出したら、こんなものがいっしょに出てきました。
こんなものを取っておいたなんて、自分でも忘れていました。日付を見ると「平成16年」。あらまあ、20年も前じゃありませんか。
私はこの編図をもらった最後の一人だったかもしれません。でも申し込みの期限は書かれてないから、ひょっとしたら今でももらえるのかな?
編図そのものはこちら。
エミーグランデの100g巻を5玉も。レース針の2号(細めですね)で編んで、出来上がりは直径130cmですって! すると外回りは4m以上ですね。1段編むのにどれくらいかかることやら……。
この作品、全部で何段あると思いますか? 編図の最後のほうもごらんください。
ごらんのとおり89段。一度も糸を切ることなく編まれています。難しい編み方は使われていません。最終段ではこの小さな扇のような模様が、96回繰り返されます。ドイリーを編んだことのある方ならおわかりでしょうが、「あと少しでこの段が終わる」というときに、前段の編み間違いを発見したりするとショックなんですよね……。編み方は簡単でも、大きくなればなるほど、細心の注意を払って編む必要があります。
このように規模の大きなものは、誰にでもデザインできるというわけではありませんね。経験豊かで、何より才能ある人にしかできないと思います。
この佐藤真弓というお名前も、昭和のレース編みの本ではしばしばお目にかかります。次のような単独での著書も出しておられます。
レース編みの本としてはきわめて珍しいハードカバーで、技法書と作品集を兼ねたような充実した本です。ここに載っている著者の略歴をごらんください。
昭和17年という大変な時代に学校を卒業されたんですね。家庭を守りながらデザイナーとしても活躍されています。まさに昭和の編物文化を築いてこられた方々のお一人です。
佐藤先生ありがとうございます!!
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