あの頃に戻りたい?

学生時代を振り返って、ふと思う。

あの頃はただ混乱して、行くあても帰る場所もなく、

やみくもに走っては傷つき、混沌とした毎日を送っていた。

短くはなくなってきた人生の時々で、

「戻れるとしたらどの時代に戻りたい?」

などと聞かれることが幾度かあったが、いつも答えは同じだった。

「人生で多分、今が一番幸せだと感じるから、どこにも戻りたくはない。」


少ないけれど友達もいるし、望んだ仕事にも就いた。

自分には到底できないであろうと思っていた、

誰かと暮らすという事も実現しているし、

それをしてもいいと思えるという事はもちろん、

私にはもったいないような素晴らしい人と出会えた。

そばにいる時は元より、離れていても、思い出すだけで心が温まるような、

愛に満ちた人である。

心の平穏が一番の望みだったあの頃の私の夢は、

ようやく完璧に近い形で叶えられたようにさえ思える。

でも。

学生時代を振り返って、ふと思った。

知恵や経験や、出会い、より多くのものを得た今、

直面することこそ少なくなったけれど、

確実に彼らはそこにいる。

あの頃とらわれていたのと同じ漠然とした不安と孤独を、

私は上手に整理して、たまに開いては懐かしんだりして、

一生一緒に生きていく。



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