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志望者の顔ぶれが変わった。ミスコミュニケーションを起こさない採用ブランディング。

「最近の若者は、3年で辞めるよね」
採用界隈での常識ともとれるくらい、よく話題に上がるこの会話。実は正しくないことをご存知ですか?

「入社3年で3割離職の数字は、30年前から変わっていないんです。『最近は』という括り方だと、1年未満の超短期離職が増えていることが、厚生省によるデータからも課題となっています」

 そう語るのは、山田コンサルティンググループ株式会社 人事・総務部の増田さんです。
せっかく採用した学生が1年以内に辞めてしまう事態は、企業としては最も避けたいもの。この状況は、採用活動における企業と学生のミスコミュニケーションが1つの原因なのではないかと、増田さんは話します。

このミスコミュニケーションは、双方に大きなダメージを与えます。企業にとっては採用コストをかけても人が辞めてしまう、活躍できる人材に育てることができず、サステナブルな経営が危ぶまれる事態に。
一方学生にとっては、貴重な新卒というファーストキャリアにつまづくことはその後のキャリア形成に影響を及ぼしてしまいます。
企業はどのように採用活動をしたら、この事態を避けられるのでしょうか?

2024年卒より大きく採用ブランディングを変えた山田コンサルティンググループの事例をもとに、ミスコミュニケーションを起こさない採用ブランディングを紐解いていきます。




プロジェクト概要

山田コンサルティンググループ採用ブランディング
採用におけるコンセプト策定、コピーライティング、キービジュアルの制作、WEBサイト制作、映像制作を実施。
https://www.yamada-cg.co.jp/careers/new-recruit

山田コンサルティンググループとは
国内外の中小企業から上場・大企業まで様々な規模・業種のお客様に寄り添い、経営課題の解決をシームレスに支援する総合コンサルティング会社。
https://www.yamada-cg.co.jp

話し手:増田祥人さん
山田コンサルティンググループ株式会社 管理本部 人事・総務部 副部長

明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科でMBAを習得。楽天株式会社を経て、山田コンサルティンググループ株式会社に入社。事業再生を中心に、流通・小売、製造業等のクライアントに役務提供。その後、人事部に異動、現在に至るまで採用、制度、研修等当社の人事業務全般を担当している。

聞き手星野 皓太
OVERA株式会社 代表取締役

株式会社ADKホールディングスを経て、2014年にOVERA株式会社を創立。ブランドの成長戦略の立案から総合コミュニケーションに至るまでを一気通貫で担い、多様なクリエイティブを掛け合わせた最適な情報伝達のプロデュースを強みとする。OVERAで手がけたプロジェクトは、Red dot design awardでbest of the best、webby awardでwinnerを受賞するなど、そのクリエイティブ性に多方面から評価を受けている。



1. コンサル人気にあやかった“人の大量消費”に「待った!」

採用サイトリニューアルの経緯とは?

星野皓太(以下、星野):はじめに、山田コンサルティンググループ株式会社が新卒・中途採用情報サイトを大きくリニューアルした経緯について、お伺いできますか?

増田祥人さん(以下、増田さん):はい。そこに繋がる話として、まず私自身が課題意識を抱いているコンサル業界全体の採用傾向について、お話ししても良いですか?

星野:お願いします。コンサルティング業界といえば、新卒・中途ともに人気ですよね。憧れる求職者も多いかと。

増田さん:そうですね、ありがたくも人気がある業界です。ロジカルでスマートな印象を抱かれる求職者も多く、もちろんそういう面もあるのですが、一方ではビジネススキルや知見を高め「自分自身が商品になる」厳しい業界でもあります。
実際、想像以上にきつかったと離職率も低くありません。そういった背景から、特に新卒採用においては、辞めることを前提として数百名単位での採用を行うコンサルティングファームが多いです。
私はそこに強い課題意識を持っていまして、人材の大量消費のような構造は絶対にしてはいけないと思うんです。そういった経緯から、当社は手取り足取り教育ができ、1人前のコンサルタントに育てられる人数に絞って採用をしています。

話し手の増田さんは採用、制度、研修等当社の人事業務全般を担当している

星野:採用人数を絞り込むとなると、採用ブランディングの重要性が増しますよね。

増田さん:そうなんです。そこが今回のリニューアルのきっかけでして、当社の姿勢や文化を理解した上でエントリーしてくれる学生を集めたいという狙いがありました。
我々が求めている人材はベンチャーマインドや積極性を持った能動的な学生ですから、「どこかの総合コンサルファームで働きたい」「上場企業で安定して働きたい」といった学生には合わないんですよね。
就職活動は、企業と学生のマッチングであって、それはあくまで「合う・合わない」の話。我々がきちんと会社のカラーや文化を伝えないと、お互いにとってよくないと思いました。

星野:完成した採用クリエイティブは、これまでとは大きく変化した内容になりましたが、効果はいかがですか?

増田さん:明らかに、志望者の顔ぶれが変わってきました!以前は、軒並み総合ファームを受けた中での1社として当社を志望する人が多かったのですが、今は「山田だけです!」と志望してくださる方が増え、まさにコンセプト通りに人が集まってきた印象です。
採用でのコミュニケーションによってこんなに顔ぶれが変わるなんて、正直驚いています。



2. 外資系コンサルティングファーム採用サイトの二番煎じからの脱却

制作会社にOVERAを選んだ理由

星野:このプロジェクトのパートナーに、なぜOVERAを選んでくださったのでしょう?

増田さん:最初のコンセプト提案の際に、OVERAさんが競合他社サイトの比較を元にお話ししてくださったのですが、その中で「日系コンサルファームの採用サイトは、外資系コンサルファームの二番煎じ」って言っていたんです。覚えていますか?(笑)

星野:あ、はい、あの、綺麗なデザインの採用サイトだな、と(笑)。

増田さん:今振り返るとまさにで、当時は単なる「総合コンサルファーム」のサイトだったんです。
その背景には、2017年を皮切りに大きな組織統合があり、国内独立系の総合ファームになったことで外資系コンサルとも肩を並べる存在になったことを示したいという意図もありました。しかし、今のフェーズを考えると、「山田コンサルティングらしさ」が見えてこないことが課題だと感じました。
実はOVERAさんにお願いする前に他社にも話を聞いてみたのですが、今回は特に「自社からのメッセージ」が大事だと考えていたので、PRにも特化したOVERAさんの提案を選びました。

星野:「競合他社がこう作っているからこうしましょう」という目線ではなく、「自社にどういう学生を求めるのか」と「その学生たちは働く先に何を求めるのか」という両面が交わるところにフォーカスしましたね。

増田さん:「自分たちが何者であるか」を企業がしっかり示す、大事なことですよね。当社は事業再生に携わる機会が多いので、元来は黒子だと思って事業をしてきました。
時にはクライアント企業の経営に関わる重大な場面にも数多く立ち会ってきた中で、事業の危機を救ってほしいと考える企業が、煌びやかなコンサルティング会社に気持ちよく相談はできないのではと考えていました。だから、過度な露出を控えていたという過去があります。
一方で、その姿勢を採用サイトにまで持ち込んでしまうと、個性が伝わらずに、先述したような求職者とのミスマッチが生まれてしまう。じゃあ「山田コンサルティンググループとは?」を示すために、我々にとっての財産である「人」にフォーカスしようという大枠が決まったんですよね。

山田グループの「人」にフォーカスし、実際の社員の言葉で描いたキービジュアル



3. 「きみが山田だ。」に込められた強烈な企業文化

軸をブラさずやり抜く制作過程

星野:今回のリニューアルでは、御社の企業文化をストレートに伝えるコンセプト設計が肝になりました。前述の通り、採用こそ会社の財産を見極める経営活動の一環であるからこそと思いますが、御社内で30名程度の採用プロジェクトチームが編成されており、最初は驚きました(笑)。
チームの皆さまへのアンケートやインタビューを実施し、その内容をもとにコンセプトを立案しましたが、多くの声がある中で社内を取りまとめていくのはご苦労が多かったのではないですか?

社内アンケートやインタビュー、業界リサーチなどのコンセプト設計に関わる提案資料

増田さん:確かにさまざまな声が出ましたが、ご提案いただいたコンセプトは代表を含めチームメンバー全員が「そうそう、これが山田だよね!」と満場一致で納得できるものでした。
それはメンバーの声を丁寧に紡いでいただいたからだと思っていて、山田コンサルティンググループの社風を伝えるには、まったくギャップがなかったんです。
さらには、「きみが山田だ。」は「君が主役となってお客様をリードしていくんだから、君の主役たる信念やコンサルとしてのスタイルを尊重するよ」という意味合いで、「あなたの個性を見るよ」というメッセージになったんです。
最近面接などで言われるようになったのが、「学生一人ひとりを尊重してくれているように感じる」という言葉。コンセプトがあることによって、「総合コンサルファームのどこかに入りたい」ではなく、「山田コンサルティンググループに入社したい」と志望してくれる人が増えました。 

星野: これまでのメッセージと大きく変えた方向性でのご提案でしたが、御社内での混乱はなかったのですか?

増田さん:「きみが山田だ。」は、現役の社員たちにはちょっとくすぐったいですよね(笑)。だけど、それが本質だったのだと思います。
OVERAさんの提案は、言葉の提案もデザインの提案も、アウトプットだけを示さない。ディスカッションページにはいつも、提案の横に「こういう思いを込めています」と注釈があって、それが我々の認識とズレていないから納得感がありました。
御社のヒアリングは「傾聴」に近いと思っていて、表現一つとっても言葉の定義を深掘りしてくださる。例えば「悔しい」という表現を使うにしても、それぞれの悔しい定義は違うわけで、「何がどう悔しいんですか?」と表現の根源を示さないと言葉の定義って定まらないんですよね。
そこを丁寧にすり合わせてくれたことで、信頼できました。OVERAさんもまた、寄り添うレベルが深かったですね(笑)

社員インタビューの写真には一人一人の実直な言葉を添える

星野:僕らからすると、御社のメッセージがぶれなかったからこそ、強いクリエイティブに踏み出せたんですよね。数多ある企業の中で学生さんたちの印象に残るためには、シュリンクしていくわけにはいかない。
一方で大きな企業ですと、社内からの多様な意見もあるだろうと想像していて。すると、全員がダメ出ししないものは既視感あるものになりがちなんです。そういう意味では、増田さんが軸をブラさずに、この案を通してくださったのは、ありがたかったですね。

増田さん:多様な意見がありましたが、「ここまでいくといいよね!」とわざわざ感想を伝えてくれた社員も多かったですし、社内での反応は大きかったです。その後、クライアントの別企業からも、「山田さんの採用サイト尖っているよね!うちもあれくらいいきたい!」なんて言葉もいただいています。
会社を代表する採用サイトを作る上で、僕ら担当者の信念がなかったら進まないと思うんです。ましてや、自分たちに決定権がないと考えたらお終いで、「自分たちが決めるんだ」くらいでいかないと、うまくいくものもうまくいかない。
そういう意味では、僕ら自身も山田の社風に乗っ取って、突き抜けなければならないと思えたプロジェクトでした。



4. 尖り突き抜けた結果、本質に共感した人材が集まる

採用ブランディングの結果

星野:今回の採用ブランディングを振り返ると、企業と求職者とのミスコミュニケーションを減らすためには、「山田コンサルティンググループは何を伝えたいか?」ときちんと向き合うことが必須でしたね。

増田さん:求職者の個性を尋ねる前に、「まず自分たちが何者なのか」「何を求めているのか」「何を言いたいのか」を発信しないとならないですよね。
本当は、「この会社は何者なんだろう?」を求職者みんな知りたいはずです。でもどこかみんな、上辺の表面的なコミュニケーションになってしまう。

星野:「企業のコア」を徹底的に掘り下げたことで、共感してくれる人材が集まった。結果的には、外資系総合ファームとの差別化はもちろん、競合他社とは一線を画す特徴的なコミュニケーションになりました。

増田さん:競合他社との差別化ポイントや学生受けを考えてしまいがちですが、「山田コンサルティンググループは何を伝えたいんですか?」に意識を向かわせるだけで、こんなにも共感採用を実現できるのだと驚きました。

星野:企業のコアに対して「こういう学生ならそう動いてくれるんじゃないか」の人物像をイメージして、そこから逆算して、その人たちに響くメッセージを、多角的に表現していく。
サイトデザイン、コンセプト、そして動画に至るまでコンセプトを強烈に表現できた、ブランドデザインを得意とするOVERAの強みが活きたプロジェクトだったなと思います。この度はありがとうございました!

増田さん:この採用サイトをきっかけに、当社の本質を体現する社員が増え、活躍してくれることが楽しみです!



まとめ

課題
✔️就活人気業種ならでは、大量エントリーから企業文化にマッチしたエントリーを集めたい

期待
✔️エントリー時から企業文化をしっかりと伝え、入社後の離職率を減らしたい

結果
✔️企業のコアを徹底的に深掘りし発信することで、共感人材を集めることに成功した



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