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DESIGN : Rems [Re material system]

近年、環境問題への取り組みやリユースへの関心が高まっていますが、その中で新しいプロジェクトが始まります。

企業の残渣を使い、新たな「紙」へ

石黒 :  様々な企業がいろんなモノを製造している中で生まれる残渣(食品や飲料の残りかすなど)を紙に混ぜ、新しい紙を作るシステム・Remsがスタートします。Remsっていうのは、Re material systemの略称。
ダイオーペーパープロダクツさん、竹尾さんからお声がけいただいて、新たなプロジェクト「Rems」のロゴデザインやWEB、映像など多岐にわたってディレクション・デザインをしました。

Rems

石黒 : 今回最初に作った紙「Remsスタンダード」は全農さんに協力してもらい、お米を生産する際に出る籾殻(もみがら)を使用しました。籾殻を捨てるにも今は税金がかかってしまうみたいで、それをリサイクルに回したほうがいいんじゃないかって話もあって。籾殻を粉砕したものをパルプと混ぜ、Remsの基準となる紙が生まれました。

ー 紙の中には何%くらい配合されているんでしょうか?

石黒 : 今回のRemsスタンダードの残渣は全体の1%くらいなんですが、最低ロットが4トンなので1%だとしてもかなりの量になります。
なので最初は比較的大きな企業に限られてしまうかもしれませんが、これからはRemsプロジェクトとして様々な企業と一緒に取り組み、資源を循環していくことを考えていけたらいいなと思います。

ー 4トンってなかなかすぐ想像がつかない量ですね…

石黒 : 4トンのイメージで言うと、A4用紙500枚入り、みたいな会社でよく使うものがあるじゃないですか?それがいくつか段ボールに入ったものが500箱くらいって言ってたかな。そう言われると結構な量に感じるかもしれませんが、大手の会社だったら意外とすぐ使い切ってしまう量なのかもしれないですね。

石黒 : 他に思い浮かぶ例で言うと、コーヒーの会社でコーヒーの残りかすが大量に余ってますっていう話があれば、その残りかすを混ぜて「Remsのコーヒー紙」を作ることができる。その紙をコーヒー豆のパッケージに使ったり、社内の広報誌に使うとか、自分たちのゴミを再利用して使っていくことができるんじゃないかなと思います。そういう循環のシステムが「Rems」です。

ー「Rems」という名前はどこから生まれたんですか?

石黒 : この名前自体はダイオーペーパープロダクツと竹尾の方が作ったもので、自分たちは「Rems」というプロジェクトをやろうと思いますって話から、ロゴマークの開発、このプロジェクトをどうやって伝えたらいいかっていうところでWEBや映像、パンフレットなどのツールを考えていきました。実際に製紙工場の見学をさせてもらって、写真や映像も撮影しました。

中村 : 静岡の富士市にある工場に行ったんですが、紙の誕生の瞬間に立ち会えたのは嬉しかったですね。

石黒 : Remsスタンダードを初めて作った日にちょうど行けたんだよね。事前に検証はしていたんだけど大型の機械で作るのはその日が初めてで、見ていて感極まるものがありました。今までも紙の現場に行くことはあったんですが、その紙自身の誕生日に立ち会えるっていうのは初めてでドキドキしました!
Remsスタンダードは「Rems」っていうものを伝えるために全農さんに協力してもらい作った紙。これをRemsのサンプルとして、今後いろんな企業さんに見せられたらと思います。

汎用性があり、特質を表すロゴデザイン

石黒 : デザインはロゴマークを作るところから始まって、その後WEBを作り、最後に紙モノのツールを作りました。

中村 : ロゴも最初は色々なパターンを作って、最終的に4つくらいに絞りました。循環するって部分と、分かりやすさを意識しながらパターンを出して。

石黒 : 作る時の課題点としては、RemsはFSCマーク(森林認証のマーク)とはまた別なんですよね。原料となるパルプ自体はFSCだと思うので、それでいてRemsの紙ってなったらロゴマークが併記されることになる。なのでFSCとの差別化っていうのが1つありました。かつ、Remsが環境に良いものではあるけれど、自然を意識するというよりも循環していくという部分の方が大きい。なので、エコとか森林ってものに寄りすぎないほうが良いなと思いました。

※FSCマーク… FSC認証は、森林の生物多様性を守り、地域社会や先住民族、労働者の権利を守りながら適切に生産された製品を消費者に届けるためのマーク。
引用元 : https://jp.fsc.org/jp-ja/About_FSC

中村 : そうなんですよね。最初は植物をモチーフに作っていたんですけど、意外とそうじゃないのかもって話になって。

ー 直接的に森林を守るというよりも、資源を循環させていくってことがこのシステムの意味として大きいんですね。

石黒 : そうそう。なので紙をモチーフに考えていく方にシフトチェンジしました。

中村 : 循環のイメージで丸を入れたりとか、Rの文字を少し変化させてみたり。最終的に選ばれたロゴは、木と紙をシンプルにデザインして、矢印の部分で循環していくってことを表したマークです。

最終的に選ばれたロゴマーク

石黒 : 紙から循環していくこと、紙が他のものと合わさって新しいものになる、新たに芽生えるって部分が表現されている。それでいて明確で分かりやすいので、このデザインに決まりました。

中村 : ロゴマークは色々と考えて、石黒さんともお話しして… たくさん検証を繰り返しました。紙の形も最初は普通の四角形だったんですが、紙の折り目の部分をより綺麗に見せるために菱形に変えました。循環を表している円を立たせるっていう部分でも、少し変形させた方が形に合いました。
あとは分かりやすさって部分でどんどん削ぎ落としてシンプルにしていって… ラベルになった時にはサイズもかなり小さくなるので、シンプルにしないと見えないんですよね。

ー シンプルにしていくと何かに似そうな気がして、それも難しそうです。

中村 : そうなんです。なので他に似たものがないか、環境系のマークは色々調べて、同じようになっていないかチェックしました。

石黒 : 結構頭抱えてたよね(笑)。こっちから見てても、中村さんのいいアウトプットになってた気がする。テイスト的にも新しい扉が開けそうな感じがした。ロゴを作るミニマムなデザインから、最後はできるだけ広い視野で見るっていうディレクションが必要な案件だったよね。

中村 : とても勉強になりました。ロゴからまた広げていくところで、どういう風に見せていくかって考えたり。

ー ロゴの色はカーキのような、ゴールドにも見える色。この色にしたのはなぜですか?

中村 : 最初から色のイメージはあって、こういう系の色がいいなって。緑すぎるとエコっぽい感じが強くなるので、それよりももうちょっと黄色味がかかった色で柔らかさを出したいなと思いました。

石黒 : 緑だとFSCマークともかぶるし、自然って印象が強すぎるんじゃないかなと。今回の一番の意味は「循環」・「混抄」ってことだから、ちょっと濁った色にはしたいなと思いました。茶色ってなると少し重いし、赤だと逆にエコ感がなさすぎる。

中村 : 色々考えたら必然的におさまっていった感じですね。パキッという色よりも、混ざっている感じ。

ー 文字にしたときも可読性があっていいですね。洗練された印象もありながらナチュラルさも感じます。フォントはどうやって決めましたか?

中村 : 最初はDINなどで組んでたんですけど、最終的にOptimaがベースになりました。

※ DINはドイツのマンホールなどにも使われている、シンプルなゴシック書体。Optimaは分類が難しいとされるサンセリフ書体で、エレガントなイメージがあるもの。女性的で化粧品などに使われていることが多い。

石黒 : 混抄紙でこの色のロゴってなったら、混ざっている感じだったり、先進的なイメージを出したいなと思ったんです。FSCの文字がボールドで強いものなので、そことの差別化っていうのも重要に考えました。
アイコンがカチッとグリッドの効いた強いものになったから、そこにDINみたいな強いフォントが来るとフラットな印象になりやすい。少し繊細な印象が出る方が差別化にもなって、アイコンも立つと思ってOptimaをセレクトしました。

視覚的に理解できるツール作り

石黒 : この4列のデザインは中村さんがアイデア出ししてくれたものなんですが、見るだけでRemsの意味を理解できて、色々と展開もしやすい。秀逸だなって思います。

中村 : パルプに他の素材が混ざって最終的にRemsになるってことを表現したくてデザインしました。ビジュアルの写真は実際に工場で撮ったもので、籾殻が粉砕されて紙と混ざって、パルプと合わさっていく過程を表現できたらいいなって思ってデザインしました。文字がRemsになったところで、最終的にビジュアルも紙になっています。

ー WEBページにもこのデザインが使われてるんですね。

中村 : WEBを作る際、各々の説明を分かりやすく見せないとシステムを難しく感じてしまうと思ったので、アイコンを入れたり一連の流れで見れるように構成を考えました。少しずつ話を進めていって最後に動画で確認、申し込みに進めるようになってます。

ー すごく分かりやすいです!

中村 : これから企業の方に向けてWEBページを見ながらプレゼンするって話もあったので、できるだけ分かりやすく、伝わりやすいというのを軸にして作りました。

石黒 : ロゴもWEBサイトも、Remsについて視覚的に説明できるようにって部分で考えてました。WEBに入ってるアイコンも分かりやすさのためだし、4列のグラフィックも言葉の説明なしで完全に説明できている。このプロジェクトはいろんな方に知ってもらい取り組んでもらうことで広がるので、そこを大事にしましたね。

RemsのWebサイト

ー 紙は混ざるものによって見た目や手触りが変わってくるんでしょうか。

石黒 : どうなんだろう、それはまだ未知ですね。今回で言うと元々の紙は真っ白で、籾殻がちょっと茶色くて。その色が少し影響して、黄みがある紙になっています。混ぜるものによって色々違いが出たら面白いなと思います。

ー 何か想像つかないものと混ぜてみたいですね。

石黒 : ここだけに留まらず、色々なものと混ざって作られた紙が見たいですね!色々な企業や会社がやってみることで意味があると思います。やるためにはお金がかかるしハードルも低くはないけれど、今の時代にやる意味はあると思います。Remsが広がっていけば、必ずしも1社で取り組むってことでもなく、1つの企業が旗揚げしてそれに賛同したお店とかが協力して、そこでできた紙を使った製品をそれぞれのお店にバックする、そんな数社協働などもできそう。

ー 「Rems」マークがいろんなところにつくのは楽しみですね。

中村 : 不意打ちで見たいですね。見つけたらすごい嬉しいと思うので、楽しみです!

石黒 : ふと街中で見たいね~。FSCマークほど多用されるものではないから、見たときの感動が大きそうです。

★ Rems 特設WEBサイトはコチラ >

CL : 
ダイオーペーパープロダクツ株式会社
株式会社 竹尾 / @takeopaper

AD+D : OUWN / @ouwn_0402
ATSUSHI ISHIGURO(OUWN) / @ai_ouwn
ERIKO NAKAMURA(OUWN) / @hello_eriko

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聞き手 ・ 執筆 : 星成美


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