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DESIGN : フォント座談会

いつもよりリラックスモードで、OUWNメンバーがフォント(書体)について話します。今回は事前に石黒が質問を用意し、それぞれが回答を持ち寄りました。

Q1. 自分がよく使う書体は?

石黒 : 
色々ある中であげるとしたら、AG Old Face
作ったのはドイツの人で、Gunter Gerhard Langeっていう方がデザインしたものです。Akzidenzっていう書体がデジタルになるときに今の形になったみたいなんだけど、AG Old Faceはなんだかんだよく使うな〜って思います。

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石黒 : 
すごいシンプルで強い、Helveticaとかにも似てるスタンダードなフォルムのフォントです。使いやすいし、字間を詰めるとボーイッシュな感じにもなるし、級数を小さくしても読めるし、色々汎用性があるんだよね。
日本語だと普段見出ゴ(MB31)とかをよく使うから、そことの相性が良いっていうのもありますね。
前の会社でもこの書体は良く使ってたから、その名残もあるかな。

ー どの案件で使っていますか?最近の仕事など…

石黒 : 
結構いろんな場所で使ってますね。DOT TRIPのとかもAG Old Faceです。至るところに使ってるかもしれない。

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ー その中でも使うウエイトは?

石黒 : 
ミディアム!ライトとかボールドはむしろ使わない。
ミディアムに線をつけたりもせず、そのままを使います。でもやっぱりこれは見出ゴとの合わせっていう部分が大きいかな。やっぱり日本語との組み合わせって重要なので、よく使う見出ゴとミディアムの相性が良いので、セレクトしてますね。

出井 : 私は圧倒的にHelvetica(Helvetica Neue)です。
理由は石黒さんも言ってたように、あまり癖がなくスタンダードで、ウエイトのバリエーションがめちゃめちゃ多い。平体かかっててつぶれたやつとか斜体とかもあり、色々なものに展開する時にも使いやすい。迷ったらHelveticaを一度使用してみるという感じです。

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ー それはOUWNに入る前からですか?

出井 : いえ、ぶっちゃけOUWNに入る前は全然使ってなかったですね。
好き嫌いがかなりはっきり分かれるフォントなので、環境にもよる気がします。OUWNで様々な案件をこなす中で、どんどん使用頻度も上がったと思います。国内外で頻繁に使われている書体なので、使用することで他のデザインと比較もしやすく、客観的に見えて作品のクオリティも上げられる気がします。

藤田 : 自分はWEBがメインなので、HelveticaNoto Sans。日本語だとヒラギノ。デフォルトでPCやスマホで見れて、WEBフォントで扱いやすいものです。WEBは今でこそ多いけれど、どこにも汎用性があるものというと難しいことも多いので、こういったラインナップになってきますね。

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fumi : 私も出井さんと同じHelveticaです。簡素で何にでも合うし、どんな場面でも使いやすく、とりあえずこの書体を使っていれば間違いない感じはあります。カルチャー系の書籍だったり、海外の普通の看板とかでも見かけることが多いので、外国人が日本の漢字をおしゃれだなと思うように、私もHelveticaをカルチャーっぽい目線で見てると思います。出井さんが話していたように「どこにでも使われている」を、あえて使うことも、今っぽくおしゃれだなと。
あと大学の時で言ったらこぶりなゴシックをよく使ってました。名前の通り、小ぶりでパラパラと可愛らしい印象が好きでした。

石黒:今っぽい考え方だね(笑)。実際、Helveticaは歴史もあり、最上級に秀逸な書体だからこそ、その立ち位置が築けてると思うよ。

ー日本語書体ではどうですか?

出井 : 最近はA1ゴシック。真面目っぽくてちゃんとしてるんだけど絶妙にクセがあるところが好きです。

石黒 : 
A1ゴシックはすごい優秀だよね。可愛いし、読みやすく、OUWNの作品とも相性は良いかなと思います。それにA1明朝もよく使うな。かっこいいし堅すぎなくて、ちょうど良いバランス。
A1はすごいね〜。昔は活版でしかなく、A1明朝がデジタルで出てきた時は興奮した書体NO.1です。そればっかり使いたくなったな。

A1ゴシック

A1ゴシック:丸みもありつつ、強さもあるフォント。

A1ゴシック02

Q2. 石黒と聞いて連想する書体は?

石黒 : 今後はいろんな人が質問を考えたりすると思うから、砕けた質問も入れておこうかなーと。「自分って例えたら、どんなフォントですか?」っていう。よくわからない質問いってみようかな(笑)。

出井 : うーん、 HelveticaAG Old Face!セリフ(文字のストロークの端にある小さな飾り)があるやつはパッと浮かんでこなくて、強めでインパクトがあるものっていうイメージですね。セリフがあるやつだとDidotかな。曲線少なめでパキッとしてる感じ。使用頻度は少ないかもですが、本人の印象として、セリフがあるものだとこれかと。笑

fumi : 私もAG Old Faceです。入社したときから会社の所々にあって、ファイルに貼ってあったりロッカーにあったり。安定感があってメンズっぽい印象です。あとは、角新行書です。これは、最近の作品で使ったから印象に残ってます。

藤田 : Gotham。理由はあまりないけど、MR_DESIGNのイメージかな。

ー ということですが、いかがでしょうか?

石黒 : 性格とかの話は一切出ずに、もう全員、普通に使ってる書体言ってきたね(笑)。一応強めのものが多かったのかな。一応……大黒柱だから。と受け取っておこうかな(笑)。
まぁ、その中で言うとDidotはあんまり使わないんだけどな〜。角新行書は最初にfumiとやった案件が三好のHANAで、そこで最初使ったんだよね。だからその印象が強いのかもしれない。最後にはその書体を、表紙からはドロップしちゃったんだけど…。あとはMATSUKAZE TEAの時も使ってたね。ちょうとfumiの入社時期だから、確かに印象付きそう。
筆文字だから使う場所はめちゃくちゃ限られるけど、たまたま時期的にそのとき多かった。筆文字だから癖はあるけど、綺麗にまとまってて使いやすいフォントです。特に漢字がかっこいい。

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石黒 : ちなみにティーチャー(石黒が藤田を呼ぶときのあだ名)が言ってたGothamは自分では全然使ってないです(笑)。
ただ、去年スクランブルスクエアの案件をやらせてもらったのですが、スクランブルスクエアではGothamをよく使ってて。なので去年は触れる機会が多かった。だからかな?リアルタイムにイメージに繋がるんですね(笑)。
Gothamはゴシックの中では、軽やかでやわらかいイメージですよね。スクランブルスクエアは風が通り抜けるようなイメージがあるから、書体もそういうイメージが合うんだと思います。

自分の制作物の場合は目が留まるとか、強い印象をつけたいから、最終的にはもう少し強めのフォントを選んでるかな。
ちなみにOUWNのプレゼンシートでは秀英体を使ってます。その中でも角丸のライト。案件では全く使わないんだけど、プレゼンシートではちょうどよくて。「少し強めのフォント」とは考え方が逆で、あまり真面目にもなりすぎず、仰仰しい感じにもならず、作品ともバッティングしなくて控えめで。ちょっと違う書体でバランスが良いです。そこはなんとなくこだわってます。

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石黒 : 逆に、避けがちな書体も聞いてみようかな。

Q3. 自分が避けがちな書体は?

fumi : 私は避けるまでもいってなくて、今は色々使おうと思ってる段階です…!ちょっと話は逸れますが、使ったことがないけど気になる存在なのが創英角ポップ体。「まいばすけっと」の書体です。Twitterで、この書体でいろんなものを打ってみた、みたいなツイートを見て、一周回ってなんかかっこいいのかな?みたいにも思って。よく分からないけどよく使われていて気になる。業界で使っている人をあんまり見たことがないので、この書体ですごくかっこいいものを作れたら気持ちいいだろうなって思います。

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石黒 : 自分が最近避けているものはDINFuturaかな。
この2つは使いやすいし、ここぞという時にハマるし、文句の言い所はないんだけど、DINはなんとなく今の気分ではなくて。スマートすぎて癖がなさすぎて、自分の今の作風とかテンションと比べるとちょっと弱く感じちゃう。
DINってドイツのマンホールについてたり、ドイツでは本当によくある書体で本当に素晴らしいんだけど、秀才すぎて最近は避けてる。ちょっと作品に個性出そうとしてるからかな(笑)。


Futuraも知的になるしかわいいんだけど、丸とか45度とか、学生とかでもそれを崩しやすいと思うんだよね。あまり技術がない人でも扱いやすい。なので、ちゃんと判断しないと素人っぽくなってしまう書体だなと思うんですよね。だからこれも差別化という意味で最近はちょっと避けてるかもしれないです。
余談だけど、
Futuraってナチス・ドイツで使用を禁止されてた時期もあるんだって。自分もすごく詳しいってことではないんだけど、そういう歴史も掘り下げてみると、デザインするときに深度が深くなるよね。

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出井 : 私もFutura避けてます。幾何学的なので、自分がやりがちなデザインと組み合わせると、変にバッティングしちゃって...相性が良くないんです。なので、すごい有機的な浮世絵とか、そういうグラフィックと組み合わせたら面白そうだなって思います。思想的にも逆だし。


あとは、ファミリー(ベースとなるフォントとそのバリエーション全てをまとめたグループ)の中で斜めになってるやつを使わないですね。元々あったとしても、自分から斜めにするようにしています。
何でだろうって考えたときに、角度が他のグラフィックとちょっと合わないってことが大きいかな。OUWNでは広告で斜体を使ってることが多くて、文章だけの場合は元々フォントに入ってる斜体でもいいと思うんですが、他との組み合わせがあるときは自分で斜めにした方が合わせやすいんです。

石黒さん的にはどうですか?

石黒 : 自分も元々入ってるのじゃなくて、シアーで斜めにしてることが多いです。他に使う日本語とも角度を合わせたいからね。あとは、そのままよりも斜めにした方が崩れるから、っていう理由もありますね。
自分はなんでも作るときに、ちょっと変にしたり崩したい、っていうところがあるので、入ってる斜体よりも自分で角度をつけたほうが良い意味で崩れたりもするので、デザインに合わせて角度調整していくかな。

ー 日本語書体で使わないもの、あまり使いたくないものはありますか?

出井 : あんまり歴史が分からないものは使いたくないかな……。思想が違うもの同士でくっつけちゃうと、フォントの文脈から見てクオリティが低くなったりして危ないなって思うので、ちょっと使うのが怖いです。

まだまだ続く、フォントトーク

ー 筆記体でよく使うフォントはありますか?

出井 : Learning Curveとかは、私がOUWNに入りたての時よく使ってました。でも最近はあまり使わないですね。

石黒 : 確かに…… 使いすぎて飽きたのかな?

出井 : かわいい系のデザインのときに、あしらいとかポイントでよく使ってましたよね。

ー 最近はもう少しシンプルだったり、削ぎ落としたデザインが気分、みたいなことですか?

出井 : そうかもしれないですね。でも、時代的にもそうなのかなって。装飾的なものが減った気がします。コテコテさせるなら、逆にもっと振り切っちゃうとか。

fumi : 出井さんが猫のポスターで使ってたやつは何でしたっけ?

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出井 : これはBenguiatです。一時期ファッション誌でよく見てた書体で、セリフがあって角がめちゃめちゃ尖ってる。癖があるフォントを自主制作で使いたいなって思ってたので、チャレンジしてみました。フォントは流行り廃りもあるし、一瞬で変わっていくから、そういうフォントは自主制作とかで使ったりします。

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石黒 : 流行り系の書体は、その場では使いたいけど長期戦だと難しくて。1年後に見ると合わなくなってたりもするし。

出井 : でもそういうのもベースに使って新しいディティールを模索していかないと、TDCとかではなかなか入らなかったりもするのかなって。書体に頼ることも必要なのかなと思ったり...難しいです。

ー 文字の使い方が好きだなと思うデザイナー、事務所などはありますか?

出井 : good design companyです。細かいところまで綺麗で、パッケージの表全面が文字で埋め尽くされているものも多くて、文字のイメージがありますね。

ー 今までの作品で、文字周りが好きなものは?

出井 : 自分はやっていないけど、三好のHANAは、表面もシールも裏面も全部がいいなって思います。三好のHANAは総合的にすごい良い。

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石黒 : HANAは結構書体をいっぱい使ったんだけど、使ってないように見せるっていうのをポイントにしてた。A1明朝がベースだけど、長体・平体かけたりとか、あえてフレキシブルにやっています。
筆っぽいのは角新行書、「ml」の部分も角新行書です。720はA1明朝。あとBodoniも使ってますね。「HANA」はTrajanこの日本酒自体が混合して作るお酒だったので、そのコンセプトに合わせて文字も混合させていきました。これは確かに自分も好きですね。
このときに色々フォントや文字のチャレンジができて、すごい平体かけても意外と読めるし良いなっていう発見になったり。それから作品作るときに、HANAきっかけでつぶした明朝で今色々作ってるところです。

ー それは今後の案件で見えてくる?

石黒 : そうですね。最近は平体かけてつぶして作ることや、読めないほどの長体かけることが多いので、今後の案件や作品で見れると思います。やりすぎてもダサいってなったりするし、バランスは大事にしながら。今後もチャレンジや検証をしながら、楽しんでいきたいですね。

Creative Studio OUWN
ATSUSHI ISHIGURO / @ai_ouwn
MUNECHIKA FUJITA
YUMI IDEI / @ideiyumi
FUMIKO ISHIKURA / @fumiko_ishikura

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聞き手 ・ 執筆 : 星成美

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