透明なカメレオン

読んだ本の感想と自分の中にあったもの

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夏へのトンネル、さよならの出口を観て

YouTubeやSNSで女子高生が教室でいじめっ子を殴りかかるシーンをよく見かけ、心が少しすっとした。 改めて何のアニメなんだろと調べてみたらすぐに見つかった。『夏へのトンネル、さよならの出口』 主人公カオルは、内気で少し影のある少年。彼の通う高校に東京から転校生のあんずが来た。その転校生は、周りとは一切打ち解けようとせず、クラスのリーダー格の女子に初日から目をつけられるも「喧嘩売ってんの」と顔面にグーパンをぶち込んだ。勝手に想像していた「いじめられっ子の下克上」とはだい

    • 『ルックバック』を観て。

      なぜだかずっとチェンソーマンは避けていた。 絵柄のせいなのか、母の強すぎた勧めのせいなのか。 褒められると「でも、まだ本気ではない」と素直に受け取れず、期待されると「実は誰にも言ってないけど…」と虚言を吐く。 藤野の痛々しい言動が、とてもリアルで心の底がソワソワする。 その過剰な自信は、小学校という"小さな世界"で完結してるからうまれる。「世界の中心は私だ」とか「主人公は私だ」といった具合に。 そんな藤野に半ば狂信的に憧れる京本は、皮肉なことにその憧れから生まれた熱意から

      • キビへ。

        令和6年6月26日17時頃、キビが息を引き取ったらしい。 12歳と10ヶ月。 長生きしたと思う。 だけど、まだ家に帰ればキビがちょっと嫌な顔しながら、「お前には負けない」と張り合ってくる気がする。 うちの庭に急に現れて、初めて家に入った時、薄汚れていて、痩せていて、サルのような顔をしていた。タンスの下に隠れてしまうくらい、とっても小さかったので、その時は「ミニ太」と呼んでいた。 けれども、とっても食欲旺盛であっという間に育ての親のチビ太の大きさを越してしまい、「ミニ太

        • 子供は子供

          「子供はお腹が空くから悪いことをする。」 ばっちゃんはそう言った。 事件をおこし、一年少年院にいた彼は決して悪人には見えなかった。 家族に暴力をふるって家に居られなくなった少女はとても寂しそうだった。 親から愛されない。 ご飯が食べられない。 辛い時、寂しい時、不安な時、お腹がすいた時、子供たちはばっちゃんを頼りにする。 ばっちゃんの愛は確かに届いている。 けど、子供は当たり前に幸せであって欲しい。 僕はちょっとでもいいからそんな世界の力になりたい。

        夏へのトンネル、さよならの出口を観て

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        • 映画感想
          15本
        • ヒトゴト日記
          17本
        • 私の中にあったもの
          11本
        • やりたいことの見つけ方
          1本
        • 読書日記
          5本
        • 「幸せになる勇気」を読んで
          4本

        記事

          男性の薬指には白い包帯が巻かれていた。 くるりと回しそれを外し、彼は言った。「結婚した時に妻がくれたんだ。」 ぎらっと光る似合わぬ金色は、とても美しかった。

          男性の薬指には白い包帯が巻かれていた。 くるりと回しそれを外し、彼は言った。「結婚した時に妻がくれたんだ。」 ぎらっと光る似合わぬ金色は、とても美しかった。

          ウマ娘-新時代の扉-を観て

          本当は今日行くかめちゃめちゃ迷った。 元々盛岡にTシャツを取りに行って、ついでに髪を切って、さらについでに映画を観ようと思ってた。けど、Tシャツ屋は定休日だし、美容院は上映開始の直前しか空いてない。うんうん迷った挙句、盛岡に行くのは諦めて、家の近くの美容院に行った後自転車で北上の映画館に行くと決めた。 そんな決断を褒めてくれたかのように、久しぶりに平日休みの日に綺麗に晴れた。さらに気温はそこまで上がらず、自転車で行くにはちょうど良かった。 ウマ娘は、たまたまニコニコ動画で

          ウマ娘-新時代の扉-を観て

          今は決めない

          「20代」とか「同世代のアイツ」とか適当に生きてると色んなプレッシャーが刺してくる。 3月に体調を崩して1ヶ月半仕事を休職した今を「チャンス」と無理やり思い込ませようとしていた。「きっとどこかにやりたい仕事がある。この私にしかできないことが。そして今がそれに出会うためのチャンスなんだ。」 一方で「こんな私を採ってくれる会社はあるの?」「その転職先が今よりキツくない保証があるの?」「そもそもやりたいこと分かんないよ」って本音はずっと苦しんでいた。 今日、大学時代一番好きだ

          檻の中のタカは幸せか

          動物園に来るといつも考えてしまう。 「ここにいるのと、自然で暮らすのはどちらが幸せか」 キリッとして木の上に立つタカの姿はタカとしてのプライドを感じる。彼には本来何百メートルも好きなだけ飛んでいける翼がある。でも檻の中では、その力が思う存分活かされる瞬間はない。 しかし、逆に言えばその「空を飛ぶ力」は獲物を狩るための手段で、ここにいる限り飢えることはなく、翼を持つ必要はないのかもしれない。 一方、すぐ近くでサルたちが檻の中を自由に駆け回っていた。まるで公園を走り回る子供

          檻の中のタカは幸せか

          4月26日

          「告白しよう」ってセリフとタイミングまで決めて会ったのに結局改札前で呼び止めて震えながら「付き合わない?」しか言えなかった。 彼女の反応は「少し考えさせて欲しい」 これはダメだ。脈ナシだ。帰りの電車の中で「変に抱え込まずスパッと返事してもらって大丈夫だよ!」なんて優しさぶった負け惜しみのメッセージを送った。 昨日「返事がしたいから明日電話できない?」と彼女から連絡があった。振られると分かりきっていると人は全くドキドキとしないのか。「わざわざ電話で返事くれる丁寧さに感謝です

          「コット」を観た

          コットが叔父の合図で駆け出した時涙がでた。 コットは、周りと少し変わっているから、家が大変だから、腫れ物扱いされていた。 夏休みに、そんなコットを厄介払いするように叔父と叔母の家に預けられた。叔母が一生懸命可愛がろうとしてもコットはそれの受け取り方を知らない。けれども、何度も何度もクシで髪をとかしてもらううちに、叔母への信頼が生まれていく。 一方で、叔父はコットとのかかわり方に迷っていた。なるべく距離を取ろうと避けていた。しかし、叔母が用事で仕方なく出かける間、自分の仕

          「コット」を観た

          トトコちゃん、がんばれ

          メールやSNSの返信が終わり、暇になったので新感線のポケットに入っている冊子を何となく手に取る。 柚月 裕子さん作の「トトコちゃん、がんばれ」という短い詩が載っていた。 トトコちゃんとは、庭先に来るすずめのこと。 ひょっこり立ち寄り、巣を作ったかと思ったら二ヶ月くらいで旅立っていく。そして、また翌年巣を求めて戻ってくる。 戻ってくると言っても、同じトトコちゃんとは限らない。すずめの寿命は半年から1年ほどしかないらしい。 生きるのが精一杯で、周りに助けてよって勝手に期待

          トトコちゃん、がんばれ

          最高の人生とは

          「みんないい顔してた!最高だった!!」 電話越しでもすごい嬉しそうな顔をしているのが見えた。それはお世辞とかが一切ない、本当のことばだった。そんなことばが言える日が私にも来るのかな。 それを聞いて嬉しいはずなのに、どこか寂しい気もした。 病気を乗り越え元気になったじーじが"満足"してしまった気がして。遠くへ行ってしまう気がして。 違う場所で、全然元気じゃなく、頑張れていない私が情けなくて。

          POOR THINGS-哀れなるものたち 感想

          まずは、本当に同じ人間がこのストーリーや登場人物を思いつくのかが信じられない。それくらい狂ってる。それこそ薬でもやってたのではって思うほど。 全ては実験のためと洗脳され育てられたマッドドクターゴッドが身ごもったまま投身自殺を測った女性を拾った。その女性の脳にお腹の中の赤ちゃんの脳みそを移植して… よく「今の記憶のまま子どもに戻りたい」って思うけどその逆で幼い頭脳で大人の身体を手に入れたベラ。好奇心と子どもには強すぎる本能=性欲に従い、その美しさ故周りの男たちも振り回される

          POOR THINGS-哀れなるものたち 感想

          SPY×FAMILY code white

          川徳の古着市のついでに映画館へ! (結局古着市は微妙で戦利品なし…) ジャンプ+で初めて読んだ時、アーニャの可愛さやサクサク読めるストーリーに「なんだこの完璧な漫画!?」って驚いた。しばらくしてアニメ化決まった時も「そりゃそうだろうな〜」ってなぜか鼻が高かった笑(流石に渋谷のスクリーンジャックとかは驚いたけど笑) 映画も安心してクスクス笑えて楽しかった。そしてアーニャが"ちち"と"はは"と一緒がいいと拗ねるシーンはちょっとグッときた。やっぱり家族っていいな。 子どもだっ

          Ghost Worldを観て

          父と二人、シネコヤへ。 美大生のあさいともこさんの書いた詩集を読んで、恋人と上手くいかない苦しさに憧れを感じた。 上映時間10分前になり入場が始まる。 短髪金髪彼氏と黒髪ショートのカップル、素朴そうな学生、コーヒーとメロンソーダを追加で注文する2人組。共通点なんてまるでなさそうな10人が小さなシアターの前に座る。 Ghost Worldの主人公イーニドは人を馬鹿にして、環境に毒を吐き、周りにある全てに棘を刺していく。その姿をみてムカつくよりも、過去の私のようで可哀想に思

          インフルと孤独とヨンボとの別れ

          「あっ多分体調悪いな」 何となくの嫌な予感がした夜、朝を待たずして寒さに目が覚めた。体温計を脇に挟むと37.8度の表示。直感で分かった、これはインフルかコロナと。 2日後には39度台まで熱が上がって、3mがハーフマラソンのように遥か彼方に感じた。去年コロナにかかったときは、実家にいたから父にご飯を用意してもらえたけど、一人暮らしだとそうもいかない。ましてやこの地に恋人や友人と呼べれる存在もいない。孤独は寂しいと思ったことはあったけど、危ない、死ぬかもしれないと感じたのは初め

          インフルと孤独とヨンボとの別れ