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王神愁位伝 第1章【太陽のコウモリ】 第5話

第5話 目覚め


ーー前回ーー

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ー真っ暗闇。
何処を見ても真っ暗であり、自分の身体さえ見えない。

(ここは・・・どこだろう。)
その問いかけに誰も答えることもなく、辺りはシーンと静まり返っている。
”無の空間”。その言葉が相応しく感じる。

”ジャラっ”
動こうとすれば、のようなもので拘束されており動けない。
(・・何が・・・どうなって・・・)

考えれば考えるほど分からなくなっていく。

(・・・・・っ)
実態のない姿。何を問えばいいのかも分からない。

(俺は・・・・俺?)

”ピカァァァァァァァァアアアアア”
(!?!)
すると、周囲がいきなり大きな光に包まれる。
あまりのまぶしさに目を背けたくなるほどだ。

(・・・目?)
光と同時に、自分の実態・・が見えてくる。

(・・・手?)
傷だらけの両手が見え、足が見え・・・
驚いているとー

『ーぎりぎりで成功・・したな。そろそろ起きてもいいんじゃないか?』
誰かが声をかける。

(・・・誰?)
声をかけてきた主は、クスクスと笑うだけで何も言わない。
『さぁ、目を覚ませ!』

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”パチ!!!”
「っは!!!」

目の前には天井が広がっている。クリーム色の天井。
小さな正方形がいくつも天井に並び、その正方形の中に弱い灯りがついている。しかし弱い灯りなど必要ないくらい、外から明るい日差し・・・・・・が差し込んでいる。

”チュン、チュン”
鳥のささやきが聞こえ、暖かい日差しと共に心を穏やかにさせる。
ーなんと長閑のどかなのだろう。



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!」
”ビクっ!”
そう思っていた矢先、物凄い叫び声・・・・・・がすぐ近くから聞こえてきた。思わず身体を硬直させる。

「痛い、痛い、ばっかり、なおらない!」
「なおらない!」
「なおら・・・」
「いや・・・分かってるよ!!?分かってるけど!え、それ本当に刺すの?!そのぶっとい注射針で?!え、それ本当に治療?!ねぇ、大丈夫なの?!!」
隣から悲鳴・・・なのか喚き声が聞こえてきた。
なにやら複数人いる様だ。様子を見ようと起き上がると・・・

”ズキっ!”
身体中から、張り裂けそうな痛み・・・・・・・・・を感じ身体のバランスを崩す。
「ーっう」

”ドスン!!”
バランスを崩し、何か・・から落ちてしまった。

「え・・・!な・・何の音?!またマダム!?もう嫌だ!!もう戦えない!!!休ませてーー!!」
同時に隣からもうるさい声が。そしてバタバタと誰かがこちらに走ってくる。

”シャ!!!”
目の前のクリーム色のカーテンが開く。
すると、そこには顔が全く同じ3人が、驚いた顔でこちらを見ている。
その3人は、どこかタマゴ・・・を連想させる。

ーどうも頭から盛大に落ちたようだ。
天井と床が上下反対に見え、どっちが床なのか天井なのかもよくわからなくなっていた。

「起きた!!起きた!!起きた!!」
「起きたーーー!」
「起きた!起きた!!メリー班長・・・・・に伝える!伝える!!」

まるでタマゴのような3人は、少しカタコトな喋り方で騒ぎ始める。
その様子は床でタマゴが跳ねている様だ。
3人は白衣・・をまとい、頭には四角い白い帽子をつけていた。
その帽子には、太陽の印・・・・がついている。
また、一人は赤・一人は緑・もう一人は青のズボンをはいており、3人の違いといえば、このズボンの色くらいに見えた。
人間なのか何なのか、彼らは一頭身しかない。

驚き落ちた体制のまま呆然としていると、もう一人・・・・、誰かが来た。
「ちょっと、重症の俺を放っておくってどういうことだよ!!痛い治療は嫌だけど、早く治して・・・」

頭に包帯を巻いた少年が騒ぐタマゴたちに、文句を言いにこちらに来た

何かしたのだろうか。その少年の身体は傷だらけであり、身に着けている深いオレンジと紫紺の頑丈そうは服もビリビリに破れている。
深い茶色と丸いフォルムの髪型が特徴的であり、右耳には、琥珀色の雫のイヤリング・・・・・・・・・・・がキラリと光っていた。
少年のクリっとした大きな茶色い瞳は、どこか人懐っこさを感じさせる。

その少年は、ベッドから転がり落ちるオレンジ髪の少年・・・・・・・・を見て、驚いた表情をした。

「え・・・誰?」
オレンジ髪の少年を見て驚き立ち止まる茶髪の少年をよそに、タマゴたちははしゃいでいた。



ーー次回ーー

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