「女性アイドル」産業の成れの果て NGT48の暴行事件に考える

▼朝6時台のテレビニュースを朝食を食べながら見ていたら、アイドルがファンの男2人に襲われて、襲われたことをファンに謝罪したという、わけのわからないニュース原稿をアナウンサーが淡々と読んでいて、思わず納豆の器を落としそうになった。

朝日新聞で〈「暴行被害者がなぜ謝罪」 NGT運営会社に批判集中〉という見出しの記事が載っていた。(小松隆次郎 記者、2019年1月11日19時04分)

〈新潟を拠点に活動するアイドルグループ「NGT48」のメンバー、山口真帆さん(23)の自宅に押しかけたなどとして男性2人が逮捕された事件への対応をめぐり、運営会社に対する批判が強まっている。事件の被害者である山口さんが、ファンの前で謝罪する事態になったためだ。

 「このたびは、たくさんお騒がせしてしまって、誠に申し訳ありません」。10日夜、新潟市にあるNGT48劇場。ステージで歌い終わった山口さんが、頭を下げた。

 客席から「そんなことないよー」と励ます声が飛び、山口さんは「私には守りたいことがあった。これがきっかけとなって、またNGT48が新しい方向に向かえるように努力したい」と続けた。

 NGT48はAKB48の姉妹グループ。青森県出身の山口さんは、その1期生として2015年8月にデビューし、「まほほん」の愛称で親しまれる人気メンバーだ。

 事件の発生は昨年12月8日夜。男性2人が山口さんの自宅に押しかけ、顔をつかむなどした暴行容疑で翌9日朝、新潟県警に逮捕された。県警は被害者を匿名にして発表。2人は同月28日、不起訴処分になり、釈放されたが、新潟地検は処分理由を明らかにしていない。

 事件が明るみに出たのは、今月8日深夜~9日早朝だ。動画配信サイトで、山口さんが「私は助かったから良かったけど、殺されてたらどうするんだろって思うし」「なんでこんな怖いめに遭わないといけないの」「(運営側が)対処してくれると言ったから、この1カ月怖かったけど、ずっと待ってた。だけど何もしてくれなかった」と涙ながらに訴えた。

 動画配信は突然途切れたが、山口さんは続いてツイッターで「帰宅時に男2人に襲われました」と告白。さらにグループの他のメンバーが帰宅時間や自宅の住所を漏らし、山口さんの部屋に行けとそそのかした、という趣旨の内容を次々とツイートした。〉

▼以下はサンスポの記事。もっとくわしく報じている。2019.1.9 15:26配信。

〈NGT山口真帆「男2人に襲われました」 自宅にファンが押しかける〉

〈アイドルグループ、NGT48の山口真帆(23)が9日、自身のツイッターでファンの男らから暴行を受けていたことを明らかにした。

 山口は8日夜、自身のライブ動画配信中、涙を流しながら、なんらかのトラブルにあったことを打ち明け、その途中で配信が終了。ファンの間で心配の声が挙がっていた。

 9日早朝、山口は自身のツイッターを更新。「私は先月公演終わり帰宅時に男2人に襲われました」と昨年12月に暴行被害に遭ったことを告白。「あるメンバーに公演の帰宅時間を教えられ、あるメンバーに家、部屋を教えられ、またあるメンバーは私の家に行けと犯人をそそのかしていました」と、男らはメンバーと関わりのある人物であることを匂わせた。

 別の投稿では、被害状況を克明に記録した画像メモを投稿。帰宅時に自宅玄関先で男らに襲われ押し倒されそうになったこと、家に閉じ込められる寸前のところで難を逃れたこと、さらに男のうち1人は同じマンション内に住んでいるメンバーの部屋から出てきたことも記述。その後、男らは通報して駆けつけた警察官に逮捕され、釈放されていることを報告した。

▼なぜ、襲われた山口氏が謝罪しなければならないのだろうか。ファンに迷惑をかけたのは誰なのだろうか。

彼女が泣きながら、手を震わせながら話した動画配信によると、彼女はNGT48支配人の今村悦朗氏が「悪いことしてる奴らだって解雇するって言ったくせに、何も対処してくれてなくて」と話している。

殺されるかもしれない恐怖を感じた彼女は、運営会社が対応してくれるのを信じて、襲われてからひと月も待ったが、何の対応もないので、他のメンバーが同じ目に遭わないために、動画配信を決断したそうだ。動画配信は途中で終わり、その後、彼女自身がファンの前で謝罪することになった。

▼アイドル産業が、古代ローマのような奴隷ビジネスで、奴隷が雇用主に「迷惑」をかけたから謝る、という論理なのだろうか。しかし、奴隷の雇用主は貴重な奴隷を守るものだ。山口氏は奴隷ですらなく、使い捨ての奴隷なのだろうか。

▼そもそも、秋元康氏がプロデュースするアイドルグループは、児童の性的搾取に寛容な日本社会だから成り立っている、という批判がある。他国の基準でみれば児童ポルノだという批判もあるが、肯定する人もいれば、否定する人もいるだろう。AKB48をはじめとするアイドルグループを児童ポルノとして楽しむかどうかは、金を払う客によって違うからだ。

NGT48では、2018年4月28日配信の「新潟日報」の記事によると、2018年に合格したNGT48の2期生の最年少は、13歳の中学2年生である。ということは、原理的には、13歳の女の子を、握手会などで気に入ったファンが、自宅まで押しかけて襲う、ということもありうるということだ。

〈NGT48の2期生19人が合格! 最年少は中学2年生

 本県を拠点に活動するアイドルグループ「NGT48」の2期生オーディションの最終審査が28日、新潟市中央区の市民芸術文化会館で開かれ、県内の8人を含む19人が合格した。名前や出身地などの詳細は、約1カ月後のデビュー時に明らかにする。

 書類選考の1次審査には全国から4100人の応募があった。2次審査を経て残った53人が最終審査に臨み、歌やダンスを披露した。合格者の最年少は13歳の中学2年生で、最年長は18歳の専門学校生と社会人。

 応募は47都道府県からあった。今村悦朗劇場支配人は「3年間でNGTが全国的に浸透してきていることを実感した」と強調。これまでのNGTメンバーにはいない県の出身者が加わるため、「より面白いチーム作りができそうだ」と期待した。

 地域密着を掲げるNGTは、今回のオーディションを新潟市と連携して行った。行政と連携したオーディションはAKBグループで初めて。市は合格者が出演する移住プロモーション動画の制作を予定している。審査員を務めた篠田昭市長は「発信力を生かして新潟の良さを全国にアピールしてほしい」と話した。2018/04/28〉

▼この新潟日報の記事を読んで驚いたのは、全国から4100人も応募があるという事実だ。

山口真帆氏が告発した今回の事件は、平成の世が終わろうとしている2019年の日本社会において、女性の立場が、男性の暴力によってどれほど踏みにじられ、軽んじられているのかが強烈に可視化された出来事だ。

(2019年1月11日)

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