「見出し」の効果 NGT48暴行事件から学ぶ

▼昨日紹介した朝日新聞デジタルの記事が、紙面に載るとどう変わったか、前後の違いをみると、どういう工夫がされているのか、考える材料になる。

▼まず、2019年1月12日付の紙面の見出しは

〈NGT48 暴行被害者が謝罪 波紋/運営会社の対応にファンらが批判/指原さん「謝罪する必要ない」ツイート〉

▼昨日の2019年1月11日配信のデジタル版の見出しは

〈「暴行被害者がなぜ謝罪」 NGT運営会社に批判集中〉

▼時間が経っている分、紙面のほうが、見出しを見るだけで全体像がつかめる。

デジタル版で一発目に出ている「暴行被害者がなぜ謝罪」という見出しは、紙面では消えている。わかりにくいからだろうか。

かわりに紙面では、記事の冒頭がこう始まる。

なぜ被害者が謝るのか――。AKB48の姉妹グループで新潟を拠点に活動する「NGT48」のメンバー、山口真帆さん(23)に対する暴行容疑で2人が逮捕された事件をめぐり、運営会社の対応への批判が強まっている。山口さんが謝罪する事態になったためだ。HKT48の指原莉乃さんらも謝罪の必要はない、などとツイート。11日と14日に予定されていた3公演が中止された。〉

▼いっぽうデジタル版の記事冒頭は

〈新潟を拠点に活動するアイドルグループ「NGT48」のメンバー、山口真帆さん(23)の自宅に押しかけたなどとして男性2人が逮捕された事件への対応をめぐり、運営会社に対する批判が強まっている。事件の被害者である山口さんが、ファンの前で謝罪する事態になったためだ。〉

見出しも記事冒頭も、紙面のほうが全体像がわかる内容になっている。

▼ちなみにデジタル版を紹介したのは昨日のこちら。

▼さて、紙面の記事を読み進めると、デジタル版よりも全体像が網羅されていることがよくわかる。

NGT48は作詞家の秋元康さんがプロデュース。運営会社はAKB48と同じ「AKS」(東京)だ。山口さんは、1期生として2015年8月にデビューした。「まほほん」の愛称で親しまれる人気メンバーだ。

 事件は昨年12月8日夜に発生。山口さんの自宅に押しかけるなどしたとして、男性2人が翌9日、新潟県警に暴行容疑で逮捕された。2人は同月28日、不起訴処分となり、釈放された。

 山口さんは今月9日早朝、ツイッターで「男2人に襲われました」と投稿。他のメンバーが自宅の住所や帰宅時間を漏らした、とし、「1カ月何も対処してくれない」などとAKSへの不満も明らかにした。

 これに対し、AKSは1日以上取材に対応せず、山口さんは10日夜、新潟市にあるNGT48劇場で歌い終わった後に、「このたびは、たくさんお騒がせしてしまって、誠に申し訳ありません」と謝罪した。

 AKSは公演終了後、公式サイトで暴行事件があったことを認め、関係した男3人を今後イベントに参加させないことや、他のメンバーが男らに山口さんの帰宅時間を伝えていたことなどを説明。今後、防犯ベルを支給するなどの対策を取る、とした。

 だが、ファンらから「なぜ被害者が謝らなければいけないのか」と批判が噴出。指原さんのほか、NGT48の前キャプテンの北原里英さんも10日夜、ツイッターで「あなたは謝るべきではありません!悪いことしてないです」などと投稿した。(小松隆次郎)〉

▼紙面版のほうが、事件の経緯と問題点がよくわかる。ただし、デジタル版に載っていた山口真帆氏の動画配信サイトでの発言などは削られている。デジタル版から紙面版になって、臨場感は薄くなっている。

▼読めば誰でも気づくのは、AKSという運営会社の対応の不思議さだ。〈他のメンバーが男らに山口さんの帰宅時間を伝えていたことなどを説明〉したというが、今後の対策は「防犯ベルの支給」だそうだ。

NGT48には13歳のメンバーもいることは、昨日の新潟日報記事で紹介した。メンバーが殺されていたかもしれない事件があったのに、防犯ベル。このニュースを読んで最初に浮かんだ「女性アイドル産業の成れの果て」という印象を、今のところ取り消す必要はないと思う。

(2019年1月12日)

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