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17歳の藤井聡太氏がいきなり二冠になるかもしれない件

▼将棋棋士の藤井聡太氏が、棋聖戦に続き、王位戦でも挑戦者に名乗りを上げた。

〈将棋の藤井七段が王位戦リーグ最終戦に勝利 挑戦者決定戦へ進出〉(東京新聞2020年6月14日 07時09分)

〈将棋の第六十一期王位戦(東京新聞主催)の紅白リーグ最終戦が十三日、東京都渋谷区の将棋会館で六局一斉に指され、白組は藤井聡太七段(17)=写真(右)=が、紅組は永瀬拓矢二冠(27)=同(左)、叡王・王座=がいずれも五戦全勝で優勝した。両者は二十三日の挑戦者決定戦に進出し、その勝者が木村一基王位(46)との七番勝負に出場する。〉

▼棋聖戦の第5局は7月21日。王位戦の第7局は9月28・29日。

早ければ2カ月後には、ひょっとしたら「藤井聡太二冠」が誕生しているかもしれない。

▼藤井氏の快進撃は、必然なのだが、個人的に面白いのは、藤井氏の活躍がマスメディアで報道されるたびに、小誌の「将棋のトッププロに見えている残酷な現実の件」のアクセスが急上昇することだ。

▼なぜこのメモがよく読まれるのか、まとめた本人には理由がわからない。

▼先日、レーティングではすでに藤井聡太氏が全棋士のなかで1位になっていることに触れたが、最新のレーティングでは、藤井氏が頭一つ抜け出している。

17歳が、全棋士の頂点に立つ。これは、5年前には、まったく想像もできなかった光景だ。おなじみの2種類のレーティングを並べてみよう。2020年6月25日現在。

▼左から順に、(順位、名前、段、レーティング、年齢、順位戦のクラス)

1 藤井聡太 七段 1969 17 B2
2 豊島将之 竜王名人 1935 30 名人
3 渡辺明 三冠 1929 36 A
4 永瀬拓矢 二冠 1904 27 B1
5 羽生善治 九段 1849 49 A
6 千田翔太 七段 1838 26 B1
7 菅井竜也 八段 1817 28 A
8 斎藤慎太郎 八段 1805 27 A
9 佐々木大地 五段 1802 25 C2
10 木村一基 王位 1792 47 B1

▼もう一つのレーティング。

1 藤井聡太七段 1976 
2 豊島将之竜名 1947 
3 渡辺明三冠 1941 
4 永瀬拓矢二冠 1914 
5 羽生善治九段 1860 
6 千田翔太七段 1848 
7 菅井竜也八段 1827 
8 斎藤慎太郎八段 1818 
9 佐々木大地五段 1811 
10 木村一基王位 1809  

▼藤井氏と豊島、渡辺、永瀬の3氏が現在最強の4人で、少し離れて羽生氏が続いている。藤井氏の戦いっぷり、そのソツのなさから推測するに、向こう30年、レーティング1位に君臨し続けても誰も不思議に思わないだろう。

具体的には、藤井氏の棋譜を、他のプロ棋士がよってたかってソフトを使って研究して、その研究を藤井氏がしのぐ、という展開が続くのではなかろうか。

▼棋聖戦は、レーティング1位の挑戦者が、レーティング3位の棋聖に挑んでいる。現在、藤井氏が1勝。3勝したほうが棋聖になる。

王位戦は、レーティング1位の挑戦者が、レーティング10位の王位に挑む。先に4勝したほうが王位になる。

レーティングの数字だけを見れば結果は「藤井二冠」の誕生だが、数字どおりにいかないのが勝負の面白いところだ。

▼とくに王位戦は、47歳の木村一基氏と17歳の藤井聡太氏という、年の差30歳の対決であり、かつ、藤井氏にとって初めての「2日制」の対局である。木村氏は史上最年長で初タイトルを獲得した人で、「千駄ヶ谷の受け師」と言われている。話題豊富だ。

▼ちなみに、木村氏が10年前に監修した将棋入門が、他の類書10冊ほどと読み比べたことがあるが、最もわかりやすかった。『はじめてでもたのしめるかんたんマスター将棋』。オススメ。

▼新型コロナの影響で対局日程が詰まっているから、1ヵ月の密度が濃い。この夏は、藤井聡太氏が勝っても負けても、将棋界の経験したことのない、羽生7冠フィーバー以来の大盛り上がりがやってくるだろう。

▼次号は、将棋好きの人の多くが使っているであろうアプリを紹介しよう。

(2020年6月26日)

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