「食糧が最大のワクチンである」件

▼ノーベル平和賞は人々に「考える」きっかけを与える。今年のテーマは「食」だった。NHKニュースから。

ノーベル平和賞にWFP 国際社会からの支援拡大に期待の声も 2020年10月10日 4時41分〉

〈ことしのノーベル平和賞に、世界各地で食糧支援を行っている国連機関、WFP=世界食糧計画が選ばれたことについて中東の紛争地などで食糧支援を必要としている人たちからは受賞をきっかけに国際社会からの支援が広がることに期待の声が聞かれました。

ノルウェーのオスロにある選考委員会は9日、ことしのノーベル平和賞に国連のWFP=世界食糧計画を選んだと発表し、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で世界で飢えに苦しむ人々が増える中、活動を強化していることなどを評価しました。

このうち、5年以上にわたって内戦が続く中東のイエメンでは、国民の3人に1人にあたる1000万人近くが深刻な食糧不足の状態に陥っていて、WFPの食糧支援が人々の命をつなぐ大きな役割を果たしています。〉

▼このWFPの受賞を受けた、日本経済新聞2020年10月10日付のコラム春秋。

〈日本の家庭やスーパー、コンビニなどが廃棄する食品の量は、年間600万トンに及ぶという。どれほどの規模なのか。毎日10トントラックで1700台分が捨てられている勘定らしい。飽食の時代と言われて久しい。「食品ロス大国」の汚名をぜひとも返上したいものだ。〉

という冒頭で、読ませる。いい記事だ。日経の春秋は、現在の全国紙のコラムのなかでは頭一つ抜けている印象。

▼同コラムでは〈スーパーなどで見切り品を購入した様子をSNSで投稿すれば、飢えに苦しむ世界の子どもの給食支援ができます〉というWFPの関連事業も紹介し、参加を呼びかけた。期間は2020年10月中。

▼日経コラムは、「新型コロナウイルスにより飢餓の被害は急速に拡大している。食糧は最大のワクチンである」というノーベル平和賞の選考責任者の声を紹介している。

▼このコメントのもう少し詳しい内容が、各紙に載っていた。(ここでは東京新聞2020年10月09日 20時29分配信記事から)

〈(ノーベル賞委員会の委員長である)レイスアンデルセン氏は、中東やアフリカの紛争地ではコロナ禍が重なって飢餓に陥りそうな人々が急増しているとして、WFPの言葉を引用し「医療的ワクチンを得る日まで、食べ物が混沌に対する最良のワクチンだ」と強調。飢餓に苦しむ人々に目を向け、結束して支援するよう呼び掛けた。〉

食糧が最大最良のワクチンである、という現実は、その地域では人間の尊厳が侵されている、ということだ。

と同時に、「飢え」を武器として使う「人でなし」が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)するのが国際社会の現実だ、という恥ずべき証明でもある。イエメンでも、シリアでも、イラクでも、パレスチナでも。

▼コロナウイルスは、人間の生活圏は国境を超えていることを改めて「見える化」してくれた。

もう一歩考えを進めると、人間の「衣食住」のあり方も、じつは国境を超えて影響し、依存しあっていることがわかる。

そして、日本社会に住んでいる人の大半は、地球上で「奪う側」にいる。

この現実に気づく人、そして動く人がどれだけ増えるか。

これは、これまでも大問題であり続けているのだが、「2020年代」に人間らしく生きようとする人にとって、大きな課題の一つになると思う。

(2020年10月10日)

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