_心の痛み止め_ってナニ_実は_簡単に手に入れられます_

「心の痛み止め」ってナニ?実は、簡単に手に入れられます。

💡心の痛みが、手軽に止められたらいいのに。

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ちょっと仕事をしすぎたり、運動をしすぎたとき、私たちは肩や首、腰などに痛みを感じます。そんなときは、痛み止めを飲めばツラい痛みはいつの間にか軽くなります。

「ロキソニン」「バファリン」「イブ」といった痛み止めは、日本人なら誰でも知っているような痛み止めです。頭痛や肩こりなど、たくさんの身体の痛みに使われます。

人類は、肉体的な痛みのほとんどを除去する痛み止め「モルヒネ」の精製にも成功しています。もはや、人間は”肉体的”な痛みのほとんどを克服しているのです。


しかし、心の痛みはどうでしょうか?

・大好きな人からの拒絶
・大切なヒトの死
・社会グループからの孤立
・人間関係のあらゆる痛み

これらの”心の痛み”に対して、抵抗する方法を知っていますか?

ある人は、瞑想をマスターしているかもしれません。
ある人は、感情コントロールの名手かもしれません。

でも、訓練せずにこれらのスキルをマスターしている人はあまりにも少ないですよね。「心の痛み止め」があったらいいのに。

リサーチをしていると、「心の痛み止め」はどうやら実在することが明らかになってきました。


💊心の痛み止めは、存在する

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心の痛み止めは実在します。

「アセトアミノフェン」という薬は、心の痛みを感じる脳の部位(前帯状皮質)の働きを抑えることで、心の痛みを減らします。

2010年にケンタッキー大学で行われた興味深い研究をご紹介します。

実験

①:62人の参加者を2つのグループに分けます
②:Aグループにはアセトアミノフェン(痛み止め)を飲んでもらいます
③:Bグループには薬効のないプラセボを飲んでもらいます
④:参加者は毎晩、心の痛みを測る質問に答えます
  (ex:他の人に何か言われて傷つきますか?などの質問)
⑤:3週間、測定を継続します

すると、アセトアミノフェンを飲んだAグループは、Bグループよりも「心の痛みが軽くなっていく」ことが示されました。

3週間にわたって、徐々に心の痛みが軽くなっていったのです。

この実験の面白いところは、単なる体の痛み止めだと思っていた「アセトアミノフェン」が「心の痛み」にも有効であることを示したところです。

なぜ、「心の痛み」にアセトアミノフェンは有効なのでしょうか。


🔑こころの痛みと体の痛みを感じる部位は一緒?

なぜ、アセトアミノフェンには心の痛みを抑える効果があるのか。それは、Nature Reviews Neuroscienceに掲載された2012年の論文が上手く説明してくれます。

この論文では、心の痛みと、体の痛みを感じる脳の部位が同じであることを示しています。

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*2 Figure1.より引用

痛みを感じると、脳の後部前帯状皮質(dACC)および前部島(AI)と呼ばれる部位が活性化します。これは体の痛みだけでなく、心の痛みでも同様で、どちらも同じ部位で処理されるのです。

アセトアミノフェンは、まさにこの部位の活動を抑え、心の痛みを軽くしてくれるのです。

さて、世の中にはたくさんの痛み止めがあります。しかし、アセトアミノフェンだけが心の痛みを軽くできる特別な薬なのでしょうか?


🔎アセトアミノフェンだけが特別な薬なの?

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現在流通している、「ロキソニン」「イブプロフェン」などはNSAIDsと呼ばれるグループに属している薬で、強い炎症作用を持っています。

痛みが発生した部位で、起こっている炎症を抑え、痛みを抑えます。
さらに、脳に1~2%しか移動しない特徴を持っています。

一方、「アセトアミノフェン」には抗炎症作用はなく、脳に移動して直接作用し、下行性抑制系といった回路を介して痛みを抑えます。


要するにアセトアミノフェンという薬は、他の薬と比べて異端的存在で、効き方も他の薬とは全く異なるということです。

こういった事実を並べると、「アセトアミノフェン」は特別な薬だから、心の痛みに効く。そう思えてしまいます。

しかし、最近の研究では、他の痛み止めにも心の痛みを減らす効果がありそうだということが分かってきました。


📖痛み止めのほとんどに、心の痛みを抑える効果があるかもしれない

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アセトアミノフェンだけが特別な効き方をする事実とは裏腹に、普通の痛み止めにも心の痛みをとる効果があるかもしれません。

2014年にJAMA Psychiatryに掲載された論文では、過去に行われた研究をあつめ、一般的な痛み止めに「うつ病」や「うつ症状」を軽くする効果があるかどうかが調べられました。

参加者は6262人、使用された研究データは二重盲検比較試験と質の高いものでした。

その結果、普通の痛み止めによって、「うつ病」や「うつ症状」が軽減することが示されたのです。

この研究では基本的に、「抗うつ薬+プラセボ」VS「抗うつ薬+痛み止め」を比較しているため、痛み止め単体で心の痛みを改善するとは言い切れず、文句の付け所がないワケではありません。さらに、ほかの研究では、普通の痛み止めにはうつ症状を改善するような効果がないと主張しているものもあり、結果は様々です。

しかし、一流の学術雑誌に掲載され、475件の論文に引用され、研究デザインも妥当なこの研究結果は決して無視していいものではありません。

つまり、基本的に痛み止めは体の痛みだけでなく、心の痛みにも効くと考えることは不自然なことではありません。今後のさらなる研究に期待して、希望をもって見守っていきたいですね。


⚠️注意

アセトアミノフェンは普通に市販されていますが、酒と一緒に飲んだり、長期間の服用は肝機能を悪化させる可能性があります。

知識はうまく使ってくださいね。

☝️まとめ

・心の痛み止めは存在する。それはアセトアミノフェン
・心の痛みと体の痛みを感じる場所は同じ
・アセトアミノフェン以外の痛み止めにも、心の痛み止め効果があるかも?



おしまい

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引用

1.DeWall, C. Nathan, et al. "Acetaminophen reduces social pain: Behavioral and neural evidence." Psychological science 21.7 (2010): 931-937.

2.Eisenberger, Naomi I. "The pain of social disconnection: examining the shared neural underpinnings of physical and social pain." Nature Reviews Neuroscience 13.6 (2012): 421-434.

3.Köhler, Ole, et al. "Effect of anti-inflammatory treatment on depression, depressive symptoms, and adverse effects: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials." JAMA psychiatry 71.12 (2014): 1381-1391.

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