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深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

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散文詩/自由詩まとめ。
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2019年11月の記事一覧

きっとふたごのはずだったんだ

 
夜を走るバス、頬の横で窓ガラスはうすく曇っていたけれど、きみの名前を書けなかった、ので、わたしはまた消してしまうことも形良く残しておくこともできないまま、終点の駅に向かう、暮らしへ向かう。きみの知っているわたしをぬるま湯でみんな洗い流してころしてねむっては、怨念の夢を見てうなされるのだ、わたし、自分以外にはきみのこともだれのことも、恨んでなどいないのに。

うつくしい絵を飾らない家に住むこと

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みずのこどもはいのちのように

 
いつだってからからに喉が乾いて
皮膚はざらついて
ぼくは水に気づけないので
ぼくの中の水に気づけないので
海をゆめに見る
蛇口をひねり
流れていく水をひとすくい、飲むと
ぼくはうるおい
かれらの村に呼ばれた気になって
円環
(ぼくごときのからだで)
水がはねるのは
祭壇をとりかこみ踊るためだと
きみに教えてやりたくなった
円環
(ぼくごときのからだで)
海が枯れぬのは
順番に手をつなぎ踊るから

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かすれて読めない駅名標

 
切りすぎた前髪をなんとかなだめて家を出る、明日なんかどうでもいいし来なくたって構わないって歌いながら、伸びた前髪も伸びた爪も整えるし、安売りのトマトをえらぶ、コートやマフラーを買って、来月を待つ、凡庸で、したたかな、休日。
現在が過去になって未来が現在になる日のこと、こんなに不確かなのに、ほんとうは永遠とおなじくらい信用している。
甘えてるから、嫌い、って言ったりするの、かわいげのない、おんな

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きみはただのひと、光るだけのひと

 

青いドアに鍵もかけずに
きらきらしたことばかり言って
わたしを困らせるあのひとのこと
おんなのこだと思っていたら
だいきらいだったでしょうね
おとこのこだと分かっていたから
まざりあってみたかったの

ドラッグストアで買えるちいさなビンに
沈んだホログラムみたいに
わたしの部屋の中に閉じ込めて
ちかちかと瞬くだけの
くだらないひとになってほしい
誰も知らなくたって
あたらしい宝石には

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氷柱心中未遂事件

 

やさしい拒絶、やさしい否定、そのやわらかさがひとをゆっくりころしていくんだって、知らないでいられたきみたちのこと、うらやましくてしかたがないけど、おなじくらい同情している、カシミアのマフラーでくびをしめられる前でよかった、染みついた不健康なブルーベリーのにおい、地獄でさがしつづけてしまわないように。

復讐したいって思えればうまれかわれたのかもしれない、輪の中にはじょうずに入れません

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きみはきみのまま愛の夢を見る

 

ぼくというひとをねむらせて
もいちどうまれる夢をみるなら
たとえばのらねこになって
きみにときおりなでられる
ひとときを舐めていきてみたい
たとえばきみのこどもになって
だめよとときおりしかられる
ひとときで泣いていきてみたい
たとえばみしらぬひとになって
きみとときおりすれちがう
ひとときを知らずいきてみたい
たとえばきみのたばこになって
ふぅとときおりくちづけられる
ひとときで絶えずい

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