今だからこそ考えよう「働く」ということ
人を死に追いやりながらも、働き続けることをやめない構造を持つ「資本主義」。
こんなに技術が発展しているのに
こんなに社会も進歩しているのに
なぜこんなに働き続けるのか。
なぜ過労死がなくならないのか。
人は、なぜ過重労働から逃れられないのか。
マルクス「資本主義」(Eテレ100分で名著)がとても面白いので、書き記しておきたいと思います。
ちょっと難しいテーマかもしれませんが、すごく大切なことだなと思いますので、ぜひ読んでみていただけると嬉しいです。
資本とは?
今回は労働についてでした。(マルクス「資本論」第2回1月11日放送)
資本とは何か。
マルクスは、資本とは、個人や会社が持つ財産のことではないといいます。
資本とは「価値増殖の運動」であるというのです。
え?資本が運動??(意味がわかりません)
一体どういうこと?
資本を”運動”と捉える意味は、多分こんな感じ。
Geld(お金)ーWare(商品)ーGeld(お金)
をくり返し続けること。
これを繰り返すことで、どんどんお金が増えていくというのです。
例えば、パン工場の場合、まずは工場を作るためのお金を用意します。
工場を建てたらパンを作ります。
パンをたくさん売ることで、最初のお金よりも多いお金が手に入るようになります。(儲けが出る)
つまり、最初のお金のことを”資本”といいます。
この運動を永遠に続けることが、資本主義なのです。(わお!エンドレス!)
逆に、資本主義の前の時代はどうだったかと言うと…
Ware(商品)ーGeld(お金)ーWare(商品)
これでは、価値は増えません。
例えば、靴職人が自分の靴を作りお金に変えたいと思い、靴を売ります。
靴を売ったお金で、生きていくために必要なパンを買います。
パンは生きるために食べてしまうので、価値は増えずにそこで終わります。
こうして比べてみるとわかりますが、資本主義とは、まさに膨張し続けるしか道がないもので、もはや止めることはできないのです。
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「使う」ことより「売る」ことを重視
つまり、資本主義とは「ものを使うよりも売ることを重視する」もの。
そのために、資本になるものをお金を使って、買い漁る必要があります。
例えば、工場を資本と考えた場合。
資本を増やしたい!
つまり、工場をたくさん作りたい!
そのためには、お金をかき集め、土地を買い漁り、人を働かせて、お金を生み続けるサイクルをいくつも作り、維持し続けることが課せられます。
「価値が増える運動」には、際限ない(終わりはない)のです。
ずっと、永遠に膨張し続けるしかないのです。
AmazonのCEO(ジェフ・ベドス)は自己資産2000億ドル(約20兆円)と言われています。
個人が持つ資産が20兆円!
それなのに、世界を飲み込む勢いで増殖を辞めないのはなぜか。
それは、このような資本主義の、ずーっと膨張し続けるしかない「内在的衝動」を抱えているからだといいます。
過重労働を強いる理由
では、労働者を働かせ過ぎるのは、なぜなのでしょう?
これも、マルクスはこんな風に教えてくれます。
例えば、1人の労働者がいたとします。
この人に。1日8時間働いてもらい、1日10000円の賃金を支払ったとします。
ところが、1日8時間で16000円の価値を生み出したとします。
この場合、6000円を剰余価値と呼びます。
価値をもっと増やすためには、条件は同じで、もっと長時間働いてもらうことです。
例えば、1日10時間働かせることで、20000円の価値を生む。
つまり10000円の余剰価値を作ることができるのです。
こうやって過重労働を止めない、まるで吸血鬼と化すのです。
精神疾患が急増する背景
その結果、日本では、精神疾患申請者がここ10年で10倍に急増。
申請者だけでなく、認定される人も急増しています。
体力的に無理!ということは、法的にクリアされてきています。
ところが、メンタル面については、無法地帯だということ。
つまり、1日の労働時間は○時間だとか、○時には退社しなくてはいけないとか。いろんな制限は作っていますが、精神的な制限はないので、パワハラが横行してしまうのです。
「労働時間内でこの仕事を200やってくれ」
「え?そんなの無理!」
というような中で生まれる”精神的ストレス”には制限がないのです。
「早く帰れ!」
「残業はするな!」
「休日は休め!」
とはいうものの
「休めるわけないじゃん!」
「だったら人を増やしてよ!」
「仕事の負担を減らしてよ!」
と思いながら、働かざるを得ないのが現状なのです。
もしも体調を崩したら
「言ったよね?」
「残業するなって言ったよね?」
と責めてくる。
まさにブラック企業。
労働者が壊れれば、結局のところ経営できなくなるので、経営者も負を背負うことになるのに・・・。
ところが、マルクスはこうも言っています。
経営者のマインドセットについてマルクスは
「大洪水よ我が亡き後に来れ」なんだと。
つまり、労働者が壊れるというのなら、自分が金儲けできた後にしてくれ!あとはどうなっても構わないから、ということなんだと。
要は、労働者がバタバタ死んでも構わない。
自分さえ儲かればいいんだ、ということらしいのです。
これってどう思います?
こんな経営者がいたら、私は許せません!
従業員をなんだと思っているんだと抗議します。
労働者はどうして逃げないの?
では、なぜ労働者は、過酷な労働から逃げたり辞めたりしないのでしょうか?
それは、二つの自由があるからだとマルクスはいっています。
自由1:かつての奴隷のような強制労働からの自由を手にしたから。
つまり「自分の労働力を誰に売るかを自発的に決められる」という自由を手にしたことが原因の一つだというのです。
奴隷時代を思い出せば、この自由は手放したくない!というのは当たり前です。
(つまり、いつでも辞められる自由があると思っているからなんですね)
自由2:生産手段からの自由、つまり生産手段がないということ。
これは、生きていくための生産手段を持っていないということを意味します。
生きていくためには、個人では何かを作り出す生産手段を持っていないので、自分のからだ(労働力)を売り、賃金を得なければならないという意味です。
(どこかに就職して賃金をもらうしかないということなのです)
奴隷と自由な労働者との比較
マルクスは、更に奴隷と自由労働者をこんな風に比較しています。
奴隷とは、ただ外的な恐怖に駆られて労働するだけで、生活のために労働するのではない、といいます。
(つまり、暴力を受ける恐怖、逃げれば殺されるという恐怖などでしょうか…)
ところが、自由な労働者には、そんな恐怖はありません。
それにもかかわらず、自らの必要に駆られて労働するのです。
それはなぜか。
「仕事を失ったら生きていけない」という恐怖によって、自ら自発的に選ばせているというのです。
更には「責任感」をチクチクと突く。
「職責を全うしなければならない」という責任感を抱かせることで、労働に縛り付けるというのです。(なるほど!!ものすごく納得!)
「好きで選んだんだろう?」
「自分で決めたんだろう?」
「強制したことは一度もないだろう?」
そういいながら、資本を増やすために、労働者を働かせやすくする方法が、見事に仕組まれているというのです。
もうびっくりしました!
この見事なからくり。
みんなに教えてあげたい。
命と引き換えに、働いて、責任を背負って、神経をすり減らしても、誰も守ってくれないのです。
だから、職場はちゃんと選ばなければいけません。
「お前の職責はどうするつもりだ!」
と言われたら
「同じ言葉をそっくりそのままお返します!」
といいましょう。
相手の職責を問えばいいのです。
まさに、マインドコントロールやマニピュレーターの犠牲にならないことです。
仕事とは、夢をかけるものであっても、決して命をかけるものではありません。
当然ですが、職責を押し付けて、辞めさせないようにして働かせるものでもありません。
仕事に夢があり、一緒に成し遂げたいというロマンを持ち、共に苦労を背負い、お互いに切磋琢磨し、心底信頼でつながる関係の中で、推進させていく。
理想かもしれませんが、最初は皆、理想を追いかけることから始まるのです。
理想も描けない仕事にしてはいけません。(ファイト!)
鶯千恭子(おうち きょうこ)
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