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「チャージ」という姿勢 〜リモートラストサムライ編〜

この試練を乗り越えた先に一体何があるのか。

僕が働いている会社は、僕が入社した丁度その年から、フル在宅ワーク形式へと移行した。この場ではあまり大きい声で言えないが、中国発祥のとあるウイルスによる影響だ。

大学最後の春休みが終わったにも関わらず、僕の平日は基本的にこの部屋で完結する。社会へと羽ばたいている感覚はまるでない。

9時2分前にベッドを出て、災いの箱(パソコンのカッコいい言い換え)の前に座る。そこからおよそ10時間が過ぎたあたりで退勤処理を行い、地域のパトロール(散歩のかっこいい言い換え)に向かう。通勤の概念がない代わりに、人とのリアルなコミュニケーションもない。なんとも謎の環境である。

「自宅と職場の往復を繰りかえすだけの生活なんて俺はまっぴらゴメンだぜ?」がまさかこんな形で実現するとは思っていなかった。

僕の仕事の主な業務内容は、デジタル広告の運用だ。毎日パソコンの電源を入れ、この広告はどれくらい表示されたのかとか、その内何人がこの画像をクリックしたのかとか、色々な指標を色々と見て色々と調整し、パソコンの電源を消すという仕事に従事している。

加えて、月次のタイミングで「報告会議」なるものが開催される。その月の広告実績をクライアントに直接報告するミーティングだ。今月はどんな所に気をつけていたのか、次月はどんな所に気をつけていくのか、この辺をプレゼン形式で発表する時間なのだが、ここに魔物が棲んでいる。

例えばその月の広告効果が悪かったりした場合、次月に向けてどう改善していくかみたいな部分はどうしてもシビアになってくる。向こうもそれなりのお金を払っているので、人によっては厳しく追求される。こうなった時が中々に難しい。

どういうわけか、上半身だけの人間に自分の部屋で詰められる世界線に辿り着いたのだ。

もはや、詰められるためにパソコンの電源を入れるみたいな日すらある。どういうことやねん。小学生の頃、練習しなさすぎるが故に、実質怒られるために通っていたヤマハ音楽教室のことなどが思い出される。

そんなこんなで、入社してから約2年で、気づけば同期は僕1人。3〜4個上くらいまでの先輩達も、最初は10人以上いたはずが全員いなくなった。いわゆる若手アイアムアレジェンド状態だ。

リモート環境に戸惑いやめる人、業務内容が合わずにやめる人、より好条件を求めてやめる人、人がやめるからやめる人、理由はそれぞれあるのだろう。休み時間のドッヂボールで、気づいたら内野が自分1人になっていた時の感覚に近い。モトガイがいるなら帰ってきて欲しい。

これといったキャリアプランも無い僕は転職活動には意味を見出せなかった。目の前の試練に替えは効かない。厄介なもので、僕の中ではもうとっくに耐久レースの火蓋が切られていたのだ。やめたい=やめたくない。例によって選択の余地はほとんどなく、僕は今も、チャージという姿勢の只中にいるらしい。

「あなたにとって仕事とはなんですか?」

「はい。私にとって仕事とは、チャージです。」

「はあ、そうですか。…次の方どうぞ。」

チャージとは、きつい状態をあえてちょっと長めに耐えてみることで、その後の解放感を倍増させるという高等テクだ。スマブラのサムスで言えば、Bを長押ししている状態である。

トイレ我慢帰宅、持久走、毎食カップ焼きそば、18きっぷ本州縦断。こいつを耐えれば、どんな未来が待っているのだろう。想像することで、目の前の苦行に対して不思議と張り合いが生まれてくる。…そんなことない?あそうですか。

挑んだ覚えのない負けられない戦いは終わらない。






俺たちの冒険は、まだまだこれからだッ!
(松尾先生の次回作にご期待ください!)




















今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

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