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最前線、ガナッシュの作り方のレパートリー

ガナッシュ

チョコレートと生クリーム、もしくは他水分を加えた混合物、ガナッシュ。


ガナッシュとはフランス語で
「のろま」を意味します。

語源は、チョコレートに見習いパティシエがうっかり
生クリームをこぼしてしまった「失敗作」であることから、
こんな名称に。


こちらの投稿が継続して多く閲覧されていますので、
いま一度、整理して、補足させていただきたいと思います。


ガナッシュの用途とそれを達成する製法

ちょっと小難しい小見出しになりましたが、
ガナッシュとは様々な使用用途があります。
例えば、

マカロンに挟むもの
こちらは冷蔵状態でマカロンの生地と
ベストのテクスチャーでなければならないですし、
絞り作業の際にボディ感が必要になります。
ショコラショー
こちらは飲み物です。
液体です。

この2つでも用途(目的)が全く違う訳で、
製法も変わって良いということです。

また、この2つでは乳化状態も全く違います。
というのは、
マカロンに挟むもの
は、油脂の中に水分が分散している状態、
「油中水滴型」の乳化状態。
ショコラショー
は、多くの場合、水分の中に油脂が分散している
「水中油滴型」の乳化状態です。


また、キーワードとして、
「日持ちをさせたいのか」
「すぐ食べるのか」
でも変わってきます。

「乳化力が強く、安定したガナッシュ」なのか、
「口溶けを優先したガナッシュ」なのか。


分離乳化法

クリオロのサントス・アントワーヌシェフが提唱した乳化法。
あえて、一度分離させてから、
乳化を行うことで、分子レベルで乳化力が強くなる、というメソッドです。

製法はチョコレートに対して任意の水分配合量を
一度に加えてしまわず、
あえて最初に少量を加える事で分離を促す。
そこにさらに配合量の水分を少しずつ加え混ぜ合わせ、
乳化臨界点へ到達した所で乳化、
後は残りの水分を加え混ぜ合わせ完成です。


5型結晶残存法ガナッシュ

これは名前もないほど新しい考え方です。
「5型結晶残存法ガナッシュ」は僕がネーミングしました。

チョコレートのテンパリングとは、
チョコレートの5型結晶を獲得する作業です。
端的に言うと、
5型結晶がチョコレートの一番美味しい結晶状態だという事です。
(詳細は別項で)

タブレットのチョコレートは
5型結晶が配列した状態です。
チョコレートは34℃を超えると、
この配列が崩れ、45℃以上で完全に分解されます。

通常のガナッシュの製法では、
チョコレートの5型結晶の配列の欠如は無視されるので、
それを残存させ、チョコレート本来の、
自然な口溶けをガナッシュにも用いよう、という考え方です。

チョコレートと水分が合わさり、
乳化状態を作る作業を34℃以内で行えば、
実質、チョコレートのテンパリング・5型結晶の配列が
残存したガナッシュが実現します。

チョコレートの割合比率が多いガナッシュに有効です。


バターの加え方

ガナッシュにはバターを配合するレシピも多く存在します。
配合する理由は様々ですが、
例えばボンボンショコラ。

ボンボンショコラにバターを配合する理由の一つに、
「口溶け」の表現があります。

チョコレートと近い融点のバターですが、
それぞれ性質は違います。
バターを配合することでチョコレートだけでは表現できない、
なめらかな口溶けを実現させます。

バターには可塑性といって、
チョコレートと同じように結晶が良い状態で配列している場合、
粘土のように自在に形を変えられる性質があります。

一度液状に溶かしてしまったバターを固めた場合、
元の固形のバターの状態には戻らずにボロボロとした組織になります。

以上を踏まえて、
ガナッシュにバターを配合する際に、
可塑性を失わないよう、
バターが溶けない温度にガナッシュの温度を下げ、
ブレンダーなどでバターを分散させていく製法があります。



逆に「乳化」に重きを置いた製法として、
液体を温める際に、液体と一緒に溶かし温度をつけてしまうという方法。

ガナッシュの製法の中で、一番、高温に達するのが、
「液体の加熱」。
加熱は乳化を促進させるので、
このタイミングに加えてしまって、強固な乳化を獲得する、
という比較的新しい製法です。


目的

偏に「ガナッシュ」といっても、
・どんな目的のガナッシュなのか
・何を表現したいのか
・優先順位はどこなのか

で、常に正解である製法は変わってきます。

これはガナッシュに限らず全ての製法に言える事だと思います。

素材の性質を理解し、
製法の意味が多角的に理解できると、
目的に達する方法は幾重にも広がるのではないでしょうか。


POINT


人間は自分が習った事、やってきたこと、
それに対し保守的になる性質があります。
自分の世界でそれが成立してきたから、「これが正解」とし、
それを基準に別のもの、新しいものを斜に見る事が多いのではないでしょうか。

そのやってきた年数が長ければ長いほどそれは強く出る性質があります。

これは非常に弱い事ですし生命の短い事だと自分は考えています。
竹は強いが強風に折れ、
柳は弱いが強風になびきます。

謙虚に素直に感謝を持って不良に柔軟、自分はこれが一番だと考えます。

ガナッシュについて、
さらに新しい考え方があればコメントで教えてください!


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