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さぶすクラシック日誌。2022年版...

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毎日、1タイトル、スポティファイでクラシックの新譜を聴いてみた。
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#現代音楽

12月17日、脱西洋の魔法使い、パーチの日本とアフリカ... 『怒りの妄想―夢と妄想の祭典』。

ドイツ、気鋭の現代音楽アンサンブル、ムジークファブリークの演奏と歌で、アメリカ、実験音楽の旗手、ハリー・パーチのシアター・ピース『怒りの妄想―夢と妄想の祭典』。 WERGO/WER6871 1966年に完成された、ハリー・パーチ(1901-74)のシアター・ピース『怒りの妄想―夢と妄想の祭典』(初演は1969年、ロサンゼルス、UCLAプレイハウスにて... )。序と2幕からなり、1幕は、能、『敦盛』をベースに、2幕は、エチオピアの民話『正義』をベースとする奇作。奇作だけれど

12月16日、ピアノの素直な響きを重ねて、放たれる輝き... 惹き込まれた... コーニッシュの"SIERRA"。

ニューヨークのヒップな現代音楽専門集団、BANG ON A CANのメンバー、カナダのピアニスト、ヴィッキー・チョウによる、イギリス出身、ニューヨークを拠点とする作曲家、ジェーン・アントニア・コーニッシュのピアノ作品集、"SIERRA"。 cantaloupe music/CA21174 ロンドンの生れで、ケント州(ロンドンの東隣... )で育ち、早くから音楽に触れ、マンチェスターの英国王立ノーザン音楽大学で学び、ロンドンの英国王音楽大学の修士課程で研鑽を積み、映画音楽で活

12月15日、エレキ・ギターから生み出されるやさしさ!アウトサイドから癒す、シベ、"Lost & Found"。

イギリス、注目のギタリスト、ショーン・シベが、エレキ・ギターで、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンから、20世紀、アメリカのマルチなアウトサイダーたち、同世代のイギリスの作曲家たち、さらに、ビル・エヴァンス、チック・コリア、までを弾いてしまう、"Lost & Found"。 PENTATONE/PTC5186988 気になる次世代ギタリスト、ショーン・シベ(b.1992)... スコットランド、エディンバラで生まれ(お母さんが日本人!)、スコットランド王立音楽院で学び、イタリア

12月14日、"アラスカのアダムズ"が創り出す、大自然、大気... 圧倒的な音響の波に、意識は研ぎ澄まされてゆく。

ドナルド・ナリーの指揮、ミシガン大学のパーカッション・アンサンブルと室内楽科の面々、そして、ジャック四重奏団、クロシングのコーラスによる、ジョン・ルーサー・アダムズの『シラ、世界の息吹』。 cantaloupe music/CA21177 イヌイットの人々は、天候、そして、世界、さらに、意識までをも一括りに"シラ"と呼ぶのだとか... 物質世界にどっぷり浸かっている我々にとって、それはなかなか捉え難い感覚だけれど、精神性を孕んだ大気?そんな認識だろうか... イヌイットの人

12月13日、現代音楽というフレームを越えてしまう!ロミテッリのヴィデオ・オペラ『金属の索引』。

フィオナ・モンベの指揮、アンサンブル・ミロワール・エタンデュの演奏、リンダ・オラー(ソプラノ)の歌で、ロミテッリのヴィデオ・オペラ『金属の索引』。 b record/LBM043 フランス国立音響音楽研究所、IRCAMで研鑽を積んだ、イタリア、現代音楽、夭折の鬼才、ファウスト・ロミテッリ(1963-2004)。その死の前年にあたる、2003年の作品、ソプラノ、アンサンブル、複数のプロジェクションとエレクトロニクスによる、ヴィデオ・オペラ『金属の索引』。 IRCAM仕込み、

12月12日、西洋と東洋が嫌味なく調和するマジック... イサン・ユン、晩年の境地の魅力!

オスモ・ヴァンスカ率いるソウル・フィルの演奏で、韓国出身、ドイツで活動した20世紀の作曲家、イサン・ユンのオーケストラ作品、「新羅」、3番のヴァイオリン協奏曲、1番の室内交響曲... BIS/BISSA2642 韓国出身で、コミュニストで、軍事政権により国外追放となり、ドイツを拠点に活動したイサン・ユン(1917-95)。その、1992年の作品、管弦楽のための伝説「新羅」と、3番のヴァイオリン協奏曲、1987年の作品、1番の室内交響曲という、作曲家、晩年の3作品... かつ

12月9日、ドヴォルザーク、マルタン、マンスリアン、民謡がもたらすケミストリー!

オランダの気鋭のアンサンブル、デルタ・ピアノ・トリオの演奏で、ドヴォルザークの4番のピアノ三重奏曲、「ドゥムキー」など、民謡を素材とした3作品... "Origin"。 CHALLENGE CLASSICS/CC72901 スイス(フランス語圏... )の作曲家、マルタン(1890-1974)が、アメリカのアイルランド系の支援者から委嘱された、アイルランド民謡による三重奏曲(1925)に、現代、アルメニアを代表する作曲家、マンスリアン(b.1939)の5つのバガテル(198

11月11日、ラトヴィア、新旧世代による、シンプルさ、瑞々しい響き、惹き込まれます。

ギドン・クレーメル率いるクレメラータ・バルティカ、創立25周年記念盤、プラキディス、ペレーツィス、ペーテルソンズ、新旧ラトヴィアの作曲家、3人の"p"の作品を集めた、"ppp"。 ペトリス・プラキディス(1947-2017)の、2つのヴァイオリンのための小協奏曲、ゲオルクス・ペレーツィス(b.1947)の、フィオーリ・ムジカーリ、ソヴィエト時代に学んだ、ラトヴィアの巨匠の作品に、ラトヴィアの次世代、クリスタプス・ペーテルソンズ(b.1982)の、グラウンドに、"π=3.14

11月10日、21世紀の不穏、晴らすかのような、モモテンコ、21世紀の聖歌の透明感、クリアさ...

シグヴァルズ・クラーヴァ率いる、ラトヴィア放送合唱団が歌う、ウクライナ出身の作曲家、モモテンコの、聖歌を中心としたア・カペラ合唱作品集、"CREATOR OF ANGELS"。 アルフレード・モモテンコ(b.1970)。 ソヴィエト時代のウクライナ、リヴィウにて、芸術家一家に生まれたモモテンコ。幼くしてソチ芸術大学でシロフォンを学び、やがてモスクワ文化芸術大学でパーカッションを学ぶも、1990年、終焉を迎えるソヴィエトの混乱を避け、オランダへ移り、ブラバント音楽院で指揮とパ

11月9日、ロシアの軛から脱しようと市民が動いた、ウクライナのマイダン革命を、やさしく深い歌声で包んでの、感動...

ミコラ・ゴブディッチ率いるキーウ室内合唱団が歌う、現代、ウクライナを代表する作曲家、シルヴェストロフの合唱曲集、『2014年、マイダン』。 キーウに生れ、キーウで学び、ソヴィエト支配の抑圧下も、ウクライナ独立後の混乱も、キーウを拠点に活動してきたシルヴェストロフ(b.1937)が、今年、2月に始まるロシアによる軍事侵攻を受け、今、ベルリンに避難している。そういう状況から見つめる、シルヴェストロフの音楽... この戦争の起点とも言える、2014年、ウクライナの親ロシア政権を崩

9月19日、20世紀のミサ、現代の教会音楽、原点に立ち返る祈りの音楽に感慨...

リカルド・リンドベリ・カールソン率いるスウェーデンの合唱団、スンドビューベリ・ヴォーカルアンサンブルが、ヴォーン・ウィリアムズのミサと、スウェーデンの現代の作曲家による教会音楽を歌う、"Et in terra... "。 20世紀、イギリスを代表する作曲家のひとり、ヴォーン・ウィリアムズ(1872-1958)のミサ(1920-21)に、シェル・ペルデル(b.1954)、スタファン・イースベク(b.1955)、パウラ・アフ・マルムボリ・ウォード(b.1962)、ダーヴィド・オ

8月29日、ショパン、ドビュッシー、ハンガリーの現代音楽、19世紀のピアノが織り成す、ケミストリーに幻惑...

ベルギーのピアニスト、ヤン・ミヒールスが、19世紀のアンティークのピアノを弾き、ドビュッシー、ショパンの前奏曲、リゲティの練習曲、クルターグの"遊び"で織り成す、不思議な2枚組、"PRÉLUDES INTERLUDES POSTLUDES"。 1894年製、エラールのピアノで、ショパンの前奏曲集(1839)、ドビュッシーの前奏曲集、第1巻(1910)、第2巻(1913)を、1876年製、スタインウェイのピアノで、リゲティの練習曲集、第1巻(1985)から2曲、第2巻(198

8月28日、ヴァイオリン/ヴィオラで辿る、ハンガリー近現代音楽の歩み... 揺さぶられます。

イスラエルのヴァイオリニスト、ヌリト・スタークが、時にヴィオラに持ち替えて、20世紀、ハンガリー音楽の歩みを辿る... バルトーク、リゲティ、ヴェレシュ、エトヴェシュの、無伴奏ヴァイオリン/ヴィオラ作品集。 近代ハンガリー音楽の礎、バルトーク(1881-1945)の無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(1944)に始まり、戦後「前衛」世代、リゲティ(1923-2006)の無伴奏"ヴィオラ"・ソナタ(1991-94)、近代と現代を結ぶ、ヴェレシュ(1907-92)の無伴奏ヴァイオリン・

8月27日、遅咲きクルターグ... 遅咲きが生んだマジックによるカフカ・ワールドが最高だった!

古楽から現代まで歌いこなすソプラノ、アンナ・プロハスカと、ピリオドもモダンもいけてしまうヴァイオリニスト、イザベル・ファウストによる、ハンガリー現代音楽界の人間国宝、クルターグの『カフカ断章』。 クルターグ・ジェルジュ(b.1926)。 ルーマニア、トランシルヴァニア地方(第一次大戦終戦まではハンガリー領... )、ルゴジュのハンガリー系の家に生れ、トランシルヴァニア地方の中心都市、ティミショアラで音楽を学び始める。第二次大戦後、ブダペストに移り、フランツ・リスト音楽院に入