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生まれてからも、これからも、ずっと島前で。


島前地域で暮らす若者にスポットライトをあて、離島で暮らすことのリアルに迫る若者特集。記念すべき第1回目は、海士町で暮らす増谷実香さんにお話を伺いました。

増谷さんは、生まれてからずっと、人生の100%を海士町で過ごしています。選択肢が増えてもなお、島を選ぶ。増谷さんから見える島のかたちをお届けします。

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島ってすることがいっぱいある

ー島の好きなところはどこですか。

みんなでイベントを盛り上げる、人のつながりの深さが好きです。
住んでいる菱浦地区の青年部の活動に参加することが楽しいんですよ!行事やイベントを菱浦地区のみんなでワイワイ楽しむことが好きで、よく参加しています。

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増谷 実香:1995年生まれ。海士町出身。
0歳から26年間(更新中)ずっと海士町で暮らす。
中1からはじめた神楽の虜に。

青年部には20人以上いるのですが、青年部と言っても今は40代の方もいらっしゃいます(笑)
海士町の行事は盛りだくさんあり、4月は綱引き大会、6月にはソフトボール大会、7月には各地区の大祭り(菱浦は2年に1度)があり、8月にはキンニャモニャ祭り、合間に地区清掃と毎月大忙しです。

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キンニャモニャ祭りの様子
隠岐郡海士町オフィシャルサイトより)

綱引き大会や、ソフトボール大会は練習もしなければならないので、平日休日問わずよく集まっています。


ー友達に海士町を紹介するとしたら、どのような島と紹介しますか。

忙しい島かな。人との関わり方次第なんですが、することがいっぱいあるんです。行事もたくさんあるのに加えて、平日にスポーツサークル(卓球やバレーなど)にも参加しているので、予定が詰まっています。自分で顔を出してつながりを作っていくと、なんでもやることはあると思います。

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ー平日の夜も忙しそうですよね。

そう、意外にも忙しくて、私の場合は家にいることが少ないんですよ。菱浦地区に綱引きの女子チームを作りたいと思っていたので(今はできました!)海士町内で優勝経験もある強豪の女子チームに遠征して学ばせてもらっています(笑)

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「海士セレ・ブス」チームのみなさん。
(隠岐郡海士町オフィシャルサイトより)

こういうご時世もあって、今は時間が空いているので、家でゲームをしていることが多いですが、これまでは、仕事とバイトを掛け持ちしていたので、青年部での活動を合わせるとなかなか忙しい日々でした。

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海士町で育ったわたしって?

ー子どものころはどういう子でしたか

小さいころは活発で、リーダーなど率先してするタイプでした。今は、引っ張っていくというよりは、周りの意見を聞きながら支えるタイプなのかな…?

中学ではバレー部のキャプテンをしていて、その時は自分とよく向き合う時間だったなと思います。私はプレーで失敗すると顔に出るタイプで、イライラを出してしまうことが多かったのですが、やっぱり周りから見るとキャプテンとしてよくない態度だったと思います。

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そういうことをきっかけに、メンバーと話し合い、自分のダメな所を直すように意識し始めました。

今も意識していて、ちゃんと話し合って、気持ちを伝え合うことが大切だと思っています。相手にも考えていることがあるので、その行動の裏に隠された気持ちをできるだけ汲み取ろうとするようになりました。


ー自分の好きなところ、認められるようになったところはありますか。

うーん、義理堅いところ…?多分親の影響を受けているのかなと思います。私の母は、何かをしてもらったときに、3回も4回も感謝の言葉を伝えたり、お返しを忘れない人で、その姿を見てきて、私も大事にしたいなと思うようになりました。

ー私も忘れないようにしたいです。今は実家暮らしだとお聞きしましたが、もし一人暮らしするのであればどの地区に住みたいですか。

やっぱり菱浦地区かな。ずっと住んでいるので、これからも住み続けたいです。菱浦地区にある商店の横に藤の花が咲くのですが、そこを見るのが好きなんです。

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本土の観光地では、藤の花が綺麗に並んで咲いているところもあると思うのですが、商店横の藤の花は、草もツルもそのままで、ただ咲くがままの姿がむしろいいなと思って、見るのを楽しみにしています。

また、菱浦地区で開催される、2年に1度の祭りが1番好きです。神輿が出たり、先払い舞や獅子舞をしながら菱浦中を練り歩く道中神楽を行っていて、みんなで練習をしている段階から楽しいです。やっぱり菱浦地区から出ることはできないですね(笑)

ー神楽はいつからされているんですか。

中学1年生から神楽をしています。
小さいころから地区のお祭りで神楽をみていて、神楽の楽士の一部である手拍子(てびし)に惹かれました。かっこよくて私もしたいと、地域の方にお願いをし続け、島前神楽の練習場に連れていってもらってからずっと続けています。

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島に残って神楽がしたい

ー高校卒業後も、神楽を続けたいという思いから島に残る選択をしたとお聞きしました。

本当にその理由です。中学生のころから、島に残って神楽を続けるという意思が固まっていたので、迷わなかったです。中学3年生の時に隠岐郡弁論大会に出場し、「神楽を続けたい。だから海士町に残りたい。」ということを宣言していました。

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右の女性が持っているものが手拍子。
見づらくてすみません…
隠岐島前神楽菱浦同好会Facebookより)

実は、神楽全体に興味を持っていたわけではなくて、手拍子しか見ていなかったんですよ。だけど、島前神楽の一部である巫女舞もやりなさいと言われ、嫌々ながら練習をしていました。中学2年生の時、松江での公演が決まり、私もそこでデビューすることになっていたんですが、その講演日がテスト週間とかぶってしまい、デビュー舞台を断念しました。すごく悔しくて、泣いたんです。

その時に自分は手拍子だけをしたかったのではなく、神楽そのものが好きになっていたことに気づいたんです。そこから、海士町に残る意思が固まっていました。

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ー島に残って就職することで、周りからの反応はどうでしたか

母は好きなようにしなさいって言ってくれたんですが、周りのみなさんから、1回は島から出てみたほうがいい、大学に行ったほうがいいという声も正直聞こえていました。

私も経験を積んだり、海士町を外から見てみるという面では、島を出たほうがいいとは思っていますが、島から出る人はほかにもいっぱいいる。みんな一度出て行ってしまったら、海士町にそもそもある文化って誰が守っていくのかなと思ったんです。

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高校生のころ、進路について本格的に決める時に、風の人・土の人って必要だよねという話を聞きました。風の人はよそに出ていろいろなものを新しく持ってくる人で、土の人はその場にとどまってそこにあるものを大切に守っておくと聞き、

私は土の人として海士町に残るという気持ちでいることにしっくりきました。その話のおかげで、まわりの声にもめげない気持ちができたと思います。

ー揺るがない気持ちがあったのですね。私も神楽を体験してみたいのですが、神楽を習える場所はありますか。

各島に島前神楽の同好会があり、海士町では、菱浦同好会という名で活動しています。最近では、Facebookに練習日やイベント情報を載せています。

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最近ではこどもたちもたくさん来てくれていて、みなさんも気軽に見に来てくださるとうれしいです。活動してることを広めて、興味を持ってもらい、気軽に参加してほしいなと思います。そして、それが島前神楽を継承するきっかけになればと思っています。

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島前神楽の練習風景

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島の生活も捉え方次第で変わる

ー島に住んでいて、生活がしづらいと思ったところは?

例えば、情報が筒抜けであることとか(笑) まぁ仕方ないですよね。合わないなと思うところもあるんですが、結局、「慣れ」れば大丈夫です。やっぱりそうなるよね、と認めるしかないです。

ー島前地域に住んでみたいと興味を持ってくださっている方に一言お願いします。

島でなくても、どこでも当てはまることだと思うのですが、地域にはいいところも、悪いところもあります。それをどう捉えるのかが移住する上で大切になってくるのではないかと思っています。

島前は、自分が目指したい姿や目標を応援してくれるところです。「やっぱり島前が好きだから島に戻って仕事がしたい」、「島の暮らしに興味がある」、「島前のこの取り組みに自分も関わりたい」など、

自分が島に求めることがハッキリしていると暮らしやすいのかもしれません。逆に、自分の気持ちと行動にギャップが生まれてしまうと、息苦しさを感じてしまうこともあると思います。

特別な目標があってもなくても、島で暮らし、人との関わりを大切にして、持ちつ持たれつの大事な関係を築いてほしいですね。

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朝方の海士町、菱浦地区。

数年前にIターンで来た同世代の人が半年ほどで地元に帰ってしまったことがあり、その時に話を聞いてあげられず力になれなかったことが悔しかったんですよね。

ストレス発散や、話をたくさんする機会の場を作りたいですし、移住の不安を少しでも減らせるようにしたいと思っています。移住することは不安が多いと思いますが、少しでも手助けできるようにしたいです。

私は、島の良さは人とのつながりが深いところだと思っています。いろいろな方と関わっていく中で島前の良さを見つけていただけるとうれしいです。ぜひ、一度、島前に来てみてください。

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菱浦地区の朝焼け。
(海士町で撮った一番すきな写真をいただきました!)


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