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二人のためのレシピ|3.エスカルゴ風ベビーホタテ

今ではご存知の方も多くなってきた「エスカルゴ」。なかでも有名なエスカルゴ料理、エスカルゴ・ア・ラ・ブルギニョン(エスカルゴのブルゴーニュ風)の一番のご馳走は、何と言ってもあの緑色のバターの贅沢な味わい、たっぷりのパセリとにんにくを使った「ブルギニョン・バター」のおいしさだと思っています。

本場フランスでも高級食材であるエスカルゴを日本で手に入れるのはなかなか難しいことですが、味付けに使う緑の合わせバターの材料は日常使いのスーパーで買えますし、エスカルゴ以外と組み合わせてもとてもおいしく愉しむことができます。

家で気軽にその気分を愉しむなら、私がおすすめしたい食材は「ベビーホタテ」。帆立貝を大きく養殖する過程で間引かれる稚貝であるベビーホタテは、まだ小さく一口でヒモの部分も一緒に食べられるので、貝らしい弾むような歯ごたえと適度な甘さがあり、香り高い合わせバターとのバランスが絶妙。値段も手頃でボイル済みで売られているところも使い勝手が抜群です。

身近な材料を使って、フランス料理の雰囲気を気楽に試してみてください。

今、心にいるその人とご一緒に、ぜひどうぞ。

エスカルゴ風ベビーホタテ

【材料】2人分
・バター…50g
・パセリ…20g
・玉ねぎ…30g(みじん切り、大さじ2目安)
・おろしにんにく…15g
・アンチョビ…5g(1〜2枚)
・こしょう…適宜

・ベビーホタテ…8〜10個
・白ワイン…お好みで適宜

「ブルギニョン」はワインの銘醸地で知られる「ブルゴーニュ風」という意味。合わせバターはフードプロセッサーを使うと早くて便利ですが、機械だと一度に量をたくさん作る必要がある点が悩みどころ。そこで今日はすり鉢を使ったコンパクトな作り方をご紹介します。パセリを一度冷凍するのが意外なコツです。


1・水をたっぷり張ったボウルに、パセリを15分ほど葉を下にして浸けておきます。しばらくすると葉っぱが見る見る元気になり、葉に付いていた汚れは自然と水の底に落ちていきます。葉が大きく膨らんで茎がシャキッとしてきたら、水を替えながら仕上げにジャブジャブとよく振り洗いして、水をざっと切ります。

ザルを用意して、そこへ葉の部分だけを摘みながら入れていきます。パセリの束はたった数本でも一度に料理に使う分量からするとかなり多め。使う当てがあれば枝のままで残しておきますが、すぐに使わない分はこうして新鮮なうちに葉を詰んで冷凍しておくと、日持ちがして料理に色味が欲しい時に重宝します。

葉を摘んだらさらにキッチンペーパーで水気をしっかり押さえて、フリーザーバッグやビニール袋に入れて冷凍庫へ。今日のブルギニョン・バターではあえて凍らせたパセリを使いますので、そのまま一晩凍らせてください。(生葉のままでも作れます)

葉を摘んだあとに残る茎は硬くて食べるのには不向きですが、洋風の煮込み料理の鍋に入れて煮るととても良い香りが出ます。西洋料理のレシピで香り付けとして「ブーケ・ガルニ」というハーブの束が登場することがありますが、パセリの茎はその材料の一つ。パセリの茎だけでも十分に素敵な香りが出ますから、ポトフやトマト煮込みなどを作る際にぜひ無駄なく生かしてみてください。(茎は食べる前に取り除きます)

2・一晩冷凍したパセリを使ってブルギニョン・バターを作っていきます。バターは作業を始める前に早めに冷蔵庫から出して室温になじませておき、玉ねぎは細かいみじん切りに。

みじん切りや材料を練り合わせる時にフードプロセッサーは強力な助っ人ですが、機械で攪拌するためにはやはりある程度の量を一度に作る必要が出てきます。そこでおすすめしたいのが「すり鉢」です。小振りのものを一つ持っておくと、少しだけすりゴマが欲しい時や、味噌、酒粕といったペースト状の調味料をすり混ぜるなどの小さな作業に大活躍してくれます。

とはいえ、当然フードプロセッサーの方が優れている点もあります。今日の料理では機械の力強い攪拌によってパセリの緑色が強くきれいに出ること。手作業ではどうしても色が出にくいのです。

そこで今日のすり鉢レシピでは、あえてパセリを一度冷凍してから作ります。生の野菜は凍らせると繊維が壊れて水気が出やすくなるので、そこが狙いです。凍ったパセリをすり鉢に入れて、すり粉木でザクザク砕いてからすり混ぜていくと、パセリ自体の水気が出て緑色のペーストができてきます。

3・パセリがある程度すれたらアンチョビを加えて潰します。アンチョビの使用はお好みですが、くっきりとした塩気と魚由来の旨味が加わり、より深みのある味わいになります。

そこからはゴムベラで、おろしにんにく、常温に戻したバター、こしょう(あればホワイトペッパー)を加えてよく混ぜ合わせます。最後に玉ねぎのみじん切りを加え、行き渡る程度に練り合わせたら、ブルギニョン・バターの出来上がりです。

すり鉢をお持ちでなければ、緑色は薄めになりますが、パセリ、アンチョビを包丁でみじん切りにしてからボウルでバターとしっかり混ぜても作ることができます。

合わせバターは色々使えて冷凍もできますので、一度に多めに作ってストックしておくのも手です。ただ、保存が利くからと一度に作り過ぎると、そのストックがいつも気がかりでかなりの頻度で消費しなければならないといったことが起りがち。私はとりあえずパセリだけで冷凍しておいて色々な料理に使いながら、この味が食べたくなった時に作るようにしています。

今日の分量で大体2回分程使える量が出来上がります。冷蔵では日持ちがしないので、残った分は冷凍庫で保存してください。

4・合わせバターができたら、食材と合わせて料理に仕上げていきましょう。このブルギニョン・バターを使うフランス名物料理が「エスカルゴのブルゴーニュ風(エスカルゴ・ア・ラ・ブルギニョン)」。今日はボイルの「ベビーホタテ」を使ってその雰囲気を愉しみます。

フライパンに少量のバターを中火で溶かし、ベビーホタテを並べて片面ずつ軽く焼きます。

お好みで白ワイン(大さじ1目安)を振り、湯気が上がったらベビーホタテを先にお皿に盛りつけておきます。ボイル済みなら、ソテーの香ばしさとワインの香りを加えながら軽く温める程度で十分です。

5・同じフライパンにブルギニョン・バター(出来上がりの半量目安)を入れて弱めの中火で溶かします。1〜2分ほど加熱すると玉ねぎに火が通り、徐々に水っぽさがなくなってきます。

バターがとろみを帯びてきたら、盛り付けておいたベビーホタテの上からかけて出来上がりです。

もう一手間かけて、その上にパン粉を振り、オーブンかトースターでパン粉に軽く焼き色がつくまで5〜6分焼くと、一層本格的な雰囲気が加わります。その場合は必ず耐熱皿を使用してください。

エスカルゴ風ベビーホタテの愉しみ方

パンを添えて、お皿に落ちたバターまで余すところなく召し上がってください。脇に小さなサラダがあれば、もう最高の食卓。

加熱によってバターのコクにパセリの柔らかな芳香、香味野菜の旨味のある香りが溶け合い、ベビーホタテ の甘さによく絡みます。白ワインとの相性はもう言うまでもありませんね。

具材は他にもツブ貝、牡蠣など貝類や、タコ、イカ、もっと手軽にシーフードミックス、鶏肉ときのこ、じゃがいもの組み合わせや、ステーキのソースとしてもよく合います。バゲットにブルギニョン・バターをのせて焼いたガーリックトーストだけでも、贅沢な味わいがして手軽で気の利いた感じのするおつまみになります。

古物店で出会った石をくりぬいて作られたエスカルゴ用のお皿。普段はボタンやアクセサリーなど細々とした小物を入れて部屋に置いています。

食材としてのエスカルゴの歴史はとても古く、古代ローマの時代から養殖されていたと言われています。使い込まれた古い道具からも、ヨーロッパでエスカルゴが食文化として根付いてきた長い歴史を感じることができます。

それでは今日はこのへんで。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

お読み頂きありがとうございます。 これからもおいしいお料理とおいしいお酒をたくさんお届けします。