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視覚に囁く『小ご絵』

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いつも大きくて立派な扉ばかり見せられてきたように思う。 深く考えることなく、大きくて立派な扉ばかり追いかけてきたように思う。 だけどいつもうまく開けられるわけじゃない。 ある… もっと読む
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2023年10月の記事一覧

空回り。

 天体が、星を散りばめたプラネタリウム・シート全体を動かすみたいにして移動するのを見て「…

夢庫。

 目を閉じると瞼の裏の暗闇に扉がひとつ付いていて、重なるみたいにして焦点が合えば、取手に…

東京の問題は濃度だったんだ。

 地方都市には、中央にない濃さがある。  裏を返せば、中央は先進諸国の伸び代に媚びている…

お上りさん。

 夕暮れ間近、まだ夜は薄く、頭上の紺色に移りゆく青空に、まん丸の月浮かぶ。あんまり丸いの…

猫の手は女の手?

「猫の手も刈りたいって言うから貸してやったのに、まさか猫に手を挙げられるとは思わなかった…

大人味のトマト味パスタが食べたい!

 家で大人なトマト味パスタが食べたくなることがある。トマト味は簡単だからトマトケチャップ…

何かを変える人。

 何かを変えることができる人間がいるとすれば、その人は大事なものを捨てることができる人だ、と彼アルミンは言った。ジャンヌ・ダルクにしろクララ・バートンにしろ、安泰な日々を捨て去ったからこそ荊の道を切り開き、後続に新たな流れを残した。戦いの世に生きているならば、アルミンの言ったことにも説得力が出てくる。  だが現代は平和な日常期、何かを変えられる人物は自分を変えない意志を持つ人でなければならない。  時代の波は気温上昇とともに激しさを増し、一昨日の善き閃きも、今日になれば無価

本日の「あまりものでご飯」。

 食べたい料理の食材を買ってきても、どうしても使い切らず余ってしまうことがある。もらいも…

秋の行楽にもれなくついてくる怖いこと。

 伊豆にツキノワグマ出てニュースになった。鹿の捕獲用罠に引っかかったことで山に返されたと…

老働力の尽きる日。

 65歳以上一斉抹消のような気もする。老働力確保の施策とも思える。どちらなのだろう。迷いは…

あなた、本心語りすぎ。

 人は自分の言葉で自らを暴露する。 「私、口が達者なもので」  髪を切られながら美容師さ…

つきあい続けられる人は自己完結できる人だったんだなあ。

 話を乱暴に振ってくる人っている。「残務、処理しといてね」と言われても、残務という2文字…

栗を拾う。

 毎年この時期になると、公園のひときわ踏みしめられる場所。見上げれば、紅葉しかかった葉々…

次は僕の番。

 広げる翼に庇護されていた幼少時代、母は見上げる存在だった。それが今や片手で抱き上げられるほど小さい。あれでは手が届かない。  棚の上に乗せられた半分ほど残るロールのビニール袋に手を伸ばし、一巻きを取り出してホルダーの横にひそかに添える。母の手はもうトイレットペーパーを乗せた棚に背伸びをしても届かない。  バトンは僕に渡されたのだと思った。前走者から引き継ぐものの手応えを、後方に構えた左の手のひらがとらえている。次は僕の番。受け取ったバトンを右手に持ち替えて、走り切らなけれ