夢
夏目漱石で何が好き?と聞かれたときには、「夢十夜」と答えることに決めています。
(↑「文學ト云フ事」より。宝生舞さんの美しさは必見。)
文豪ならではの卓越した文章はもちろん、「夢」そのものが好きだから、というのも理由の一つ。
夢のことは、よく思い返したりします。
夢にしか出てこない街について考えて、「本当にあったらいいな」とか、「もしかしたら実際その場所に行くことがあるかもしれないから、その時のために道順を覚えておこう!」とか、思ったりします。
まさに、夢見がち。
睡眠中に見る「夢」と、これから先の希望という意味の「夢」が同じ言葉なのも良い。
なぜ同じなのかは知らないけれど、儚さや、思いが強ければなんでもあり得るはず!なところが共通している感じ。
夢に関する動物、漠も不思議だし、なんだかやっぱり特別な感じがします。
自分は確かに見て、体験しているのに、ほかの人からはわからず、存在すら確かめることができない。
それどころか唯一の体験者の自分ですら、忘れてしまうほどの儚さ。
不思議。
表現者が夢について興味を持つというのは、ごく自然なことなのかもしれません。
「夢十夜」のほかに、夢に関わる作品で特に素晴らしいと思うのは、ドビュッシーの「夢」。
夢の景色の色々を、ピアノという楽器一つであんなにも表現できるとは。
ドビュッシーにしかできないことだな。すごいなあ!と、心から思います。
この曲を弾くと、夢の世界に入ったような、その中でふわふわと漂っているような気が、本当に、してくるのです。
蒼井優の「4つの嘘 カムフラージュ」という作品の中の、「人生って嘘みたい」も印象的。
亡くなった恋人に夢の中だけで会える。
そのために、睡眠薬を飲みながら眠り続ける主人公。
音楽も優しくて悲しくて、夢と現実の境目って、案外こんなものなのかもしれないなーと、思ったりします。
ほんと、「夢うつつ」とは、よく言ったものです。
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