アイヌの霊の世界 (小学館創造選書 56)
アイヌ民族の精神世界について、解説した本です。信仰や、霊魂というものに対する考えなどですね。
二〇一三年現在、アイヌ民族について、一般向けに解説した本は、いくつも出ています。
けれども、本書が出た一九八二年には、そんな本は、皆無に等しい状態でした(^^;
本書が出た当時、アイヌ民族の文化を知りたいと思っていた方々には、干天【かんてん】の慈雨【じう】のようなものだったでしょう。
二〇一三年現在でも、本書の価値は、失われていません。
アイヌ民族の精神性に、深く分け入った解説書は、少ないからです。
本書は、三部構成になっています。
第一部では、著者の藤村久和【ふじむら ひさかず】さんが、「アイヌの霊の世界」を、やさしく解説して下さっています。
第二部は、アイヌ民族に関するシンポジウムの内容を、文字に起こしたものです。
第三部は、藤村さんと、アイヌ民族の当事者である成田得平【なりた とくへい】さんと、哲学者の梅原猛【うめはら たけし】さんとの鼎談【ていだん】です。
どこの文章も、丁寧で、わかりやすく、読みやすいです。
アイヌ民族について、何の知識もない方でも、入りやすいと思います。
知識のある方でも、本書には、目を開かれるところがあるでしょう。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
アイヌの霊の世界
おくれている信仰の研究
霊の世界
霊を意味する十一のアイヌ語
少ないアイヌについての記録
霊の種類
憑【つ】き神の正体
不思議なアイヌの超能力
非常時の霊――木幣【もくへい】の意味
動物相を反映する祖先神
祖先神と婚姻
養子縁組
神がえと神の召人
集落を守護する神々
家系と家紋
”木原のおばば”の物語
伝染病への対応――幣棚【ぬさだな】と木幣
幣棚を統率する女神
イナウ――神への伝令者
ひげべらと祈願の言葉
《シンポジウム》アイヌ・霊・古代日本
複雑なアイヌの神
神と人を媒介するもの
夢をだいじにするアイヌ
うたで家系をおぼえる
アイヌの神話
アイヌは農耕を営んでいた
深い祖先への認識
墓と死者への供養
古代日本とアイヌ
《鼎談【ていだん】》アイヌ――日本文化の基層
アイヌへの開眼――藤村論文のショック
心豊かな道東のアイヌ
栃木政吉さんとの出会い
四宅ヤエさんにユーカラを学ぶ
心をひらいたアイヌの古老たち
「不思議なアイヌ研究者」
アイヌ語と日本語
アイヌ語は原日本語
共通語としてのユーカラ
アイヌ語――自己意識と自己反省の言語
アイヌは異人種ではない
ユーカラは外国文学か
日本文化の基底をなすアイヌの神観念
アイヌ――日本の母文化
あとがき
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